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読者の皆さん、この連載は皆さんの投資に少しはお役に立ったでしょうか? 今回が連載の最終回ですので、改めて皆さんの投資について一緒に考えてみようと思います。

○30代は投資の分岐点かも

ここから4つの質問にご自身のことについて答えてください。そして、他の20代、30代の行動と比較してみて下さい。

『あなたは投資をしていますか? 』

フィデリティ退職・投資教育研究所が2016年に行ったサラリーマン1万人アンケートでは、この質問に「はい」と答えた人の比率は20代の方で23.5%、30代の方で33.4%、40代で33.5%、50代で34.2%でした。20代で4人に1人が投資をしている、30代になると3人に1人になる、というわけです。20代から30代に比率が大きく上昇し、その後はほとんど変わらないのですから、「30代が投資の始めどき」となっているように思われます。

『何のために投資をしていますか? 』

投資の目的は様々でしょうが、全体では「老後の資産形成」と答える方が圧倒的です。特に40代、50代では4割以上の方がそう答えています。しかし、20代では24.3%、30代で29.4%と、まだそこまで至っていません。その代わり相対的に比率の高いのが、「資産を増やすには運用しか方法がない」と考えている人(20代26.1%、30代22.2%)と「おこづかいが欲しい」という人(20代14.8%、30代11.3%)です。

『何に投資していますか? 』

投資をしている人の投資対象を聞いてみると、年代にかかわらず6割以上の方が「日本株」と答えています。最近注目されている株主優待を求めての投資行動もあるのかもしれません。ただ、「日本株に投資する投資信託」もすべての年代で2割以上ありますので、日本株自身に親しみやすさがあるように思います。20代、30代の特徴は「FX派」の多さで、それぞれ15%くらいの方がやっています。「FXは資産形成には向かない」と思いますが。

『投資をしない理由はなんですか? 』

投資をしている人向けの質問が続きましたが、最後は投資をしていない人の、「その理由」です。「資金が減るのが嫌だから」との回答がすべての世代で3分の1に達して一番多い理由になっています(20代35.0%、30代36.7%)。20代、30代のそのほかの特徴は「いろいろ勉強しなければならないから」(20代28.1%、30代25.5%)、「何をすればいいのかわからない」(20代30.5%、30代25.3%)の2つが高いことです。

皆さんは30代になって投資を始めたという人ですか、それとも「資金が減るのが嫌だから」、「もっと準備が必要だから」と思ってまだ投資を始めていない人でしょうか?

○「投資はリスクがある」、でもコントロールできる

「投資にはリスクがある」というのはその通りなのですが、20代、30代では、投資という言葉を「リスク」とつなげている人の比率は40代、50代よりも少なく、その分「前向き」、「明るい」、「楽しい」、「儲け」といったポジティブなイメージを持っている人が多くなっているのが特徴です。

もちろん投資にリスクがあることを忘れるわけにはいきませんが、投資のリスクというのは、「長期投資」、「資産分散」、「時間分散」の3つを組み合わせることで、かなりコントロールできることも知られています。その3つの対策が「有効」だと回答した人の比率も、すべて30代が最も高い数値となりました。

「資金が減るのが嫌だ」と投資をしない人も、この3つを少し理解すると投資にポジティブになれるかもしれません。

○投資をしないリスクはコントロールできないリスク

ところで、30代と40代の投資で大きく違うのは、その目的だということを紹介しました。40代になって投資の理由が急速に「老後の生活のため」にシフトするのですが、30代でももう少しその目的を保ち続けてもいいように思います。そうするとさらに長期で投資ができますし、その分、時間の分散もしやすくなります。

それに「投資をしないリスク」も理解できるようになります。いまさらですが、日本は65歳以上の総人口に占める比率、いわゆる高齢化率は26%を超えた超高齢社会です。また、現在の30代が70代になる40年後を想定すると、この比率は38%に達すると推計されています。5人に2人が65歳以上という時代です。ただ、この時代の特徴は高齢者が増えるのではなく、現役世代が大幅に減ることでもたらされる比率の上昇です。ちなみに、2015年から2055年への変化をみると、65歳以上人口は3387万人から3704万人に微増し、20-64歳人口は7123万人からなんと4645万人に減っています。

65歳以上人口1人を何人の20-64歳の人で支えるかを計算すると、2.10人から1.25人へと大きく減少します。30代の皆さんは自身の老後を支えてくれる人が相当少なくなっていることがわかるはずです。年金、健康保険など多くの社会システムに軋みが生まれる可能性が高く、これは超高齢社会のリスクといえます。しかも、出生率と死亡率で予測する将来人口推計は、かなり確度の高い予測として知られていますから、このリスクもかなり「確度の高い」リスクといえます。

このリスクを少しでも避けるためには、自分で何とかする、いわゆる自助努力しかないように思います。資産運用をすることは、この自助努力にほかなりませんから、投資をしないリスクとは「投資をしないままに、資産を積み上げておかないままに2050年代を迎えること」といえます。

最後に、このグラフを紹介して、この5回にわたる連載を締めたいと思います。退職金を受け取っている60-65歳に聞いた「現役時代にやっておけばよかったと思うこと」は、金銭面で不安があると感じている4714人のうち3分の2が、「資産形成をしておけばよかった」と反省しています。そうならないことがいかに大切か。改めて考えてほしいと思います。

○執筆者プロフィール : 野尻 哲史(のじり さとし)

フィデリティ退職・投資教育研究所 所長国内外の証券会社調査部を経て、2006年フィデリティ投信株式会社に入社、2007年より現職。アンケート調査をもとに個人投資家の資産運用に関するアドバイスや、投資教育に関する行動経済学の観点からの意見を多く発表している。日本証券アナリスト協会検定会員、証券経済学会・生活経済学会・日本FP学会・行動経済学会会員。著書には、『老後難民』、『日本人の4割が老後準備資金0円』(講談社+α新書)や『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』(明治書院)などがある。調査分析などは専用のHP、資産運用NAVIを参照