<ガソリンを中心に回っていた世界に、新たなスタンダートが誕生する。その原動力は中国?>

スウェーデンのボルボは、生産する全ての車種を電気自動車(EV)に切り替える、初の大手自動車メーカーとなった。他社が続けば、たとえ一部であっても、気候変動対策、石油の需要やエネルギー地政学に大きな影響を与える可能性がある。

ボルボは7月5日、1972年の創業から手掛けてきたガソリン車の生産を段階的に廃止し、2019年以降に発売するすべての車種をEVやハイブリッド車(HV)にすると発表した。

それも、「安全性は高いが退屈」という従来型のボルボ車ばかりではない。「ポールスター」のブランド名で、アメリカのEVメーカー、テスラのスタイリッシュな電気自動車と競争できる車を開発するという。ボルボは脱ガソリン、脱ディーゼルを宣言する初の大手自動車メーカーになる。

ボルボのホーカン・サムエルソンCEOは、「EVの需要はどんどん高まっている」と言う。「今日の発表は、内燃機関だけに頼る自動車の終わりの始まりだ」

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EV開発に懸ける意義

ヨーロッパの自動車メーカーにとって、EVに移行する意味は単に顧客の要望を満たすだけにとどまらない。温室効果ガスの削減を目指すEUは近年、排ガス規制を厳しくしており、自動車メーカーはよりクリーンなエンジンの開発を急いでいる。ガソリンエンジンに代わるのはディーゼルエンジンと思われた時期もあったが、2015年に独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス規制逃れが発覚し、業界の未来には暗雲が立ち込めている。

今は排ガスが少ないか排ガスゼロのHVやEVの開発競争に弾みがついている。バッテリーの値段も下がってきて、ガソリン車に対するHVやEVのコスト競争力も上がってきた。

ボルボが2010年以降、中国の自動車メーカー、浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)の傘下にあるのも今回の決断と無縁ではない。中国はHVとEVの世界最大のマーケットで、昨年の販売数は約35万台。ヨーロッパの22万台、アメリカの15万9000台をはるかにしのぐ。

中国がEVに懸ける夢は、アメリカやヨーロッパよりはるかに野心的だ。石炭火力発電所と排ガスで致命的と言ってもいいほど大気汚染が深刻な中国では、クリーンな自動車の価値はそれだけ高い。中国政府が減税や補助金、充電ステーションの整備などでEVの普及を促進しているのもそのためだ。

中国には他にも考慮すべきことがある。中国はアメリカと並ぶ最大の石油輸入大国。輸入石油への依存は戦略的な弱点だ。国内でHVとEVをどんどん普及させるのは、環境汚染の問題を抜きにしても道理にかなっているのだ。

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キース・ジョンソン