昨年11月末、コパ・スダメリカーナ決勝に出場するための遠征中に起きた飛行機墜落事故で、選手、コーチングスタッフ、クラブ役員のほとんどを失ったブラジルの中堅クラブ、シャペコエンセが、いまピッチ内外で苦境に立たされている。

 今年初めのサンタカタリーナ州選手権で、2年連続6度目の優勝を達成したところまではよかった。また、南米クラブ王者を争うコパ・リベルタドーレスでも奮闘し、第5節で昨年のアルゼンチン王者ラヌースを敵地で撃破。1次リーグ突破に向けて、大きく前進した。

 ところがその後、以前の試合で退場処分を受けて3試合の出場停止処分を科されていたCBが、1試合欠場しただけでラヌース戦に出場していたことが判明。勝利を取り消されて1次リーグ敗退が決まった(ただし、最終節で勝ってグループ3位となり、コパ・スダメリカーナに回った)。


コパ・スダメリカーナでデフェンサ・イ・フスティシアに敗れ肩を落とすシャペコエンセの選手たち

 当初、クラブ側はこの失態について「南米サッカー連盟からしかるべき連絡を受けていなかった」と主張していたが、実際にはクラブの担当者が連盟からのメールを見落としたか、勘違いをしていたらしい(クラブは何が起きたかを明らかにしていないため、真相は藪の中)。地元メディアとサポーターから、「せっかくの選手たちの頑張りが、フロントのミスで水の泡になった」と痛烈に批判された。

 5月中旬に始まった全国リーグでは、第4節まで3勝1分の快進撃で、クラブ創立以来初めて首位に立った。ところが、その後の7試合で1勝1分5敗と成績が急降下。第11節終了時点で、15位(20チーム中)まで順位を落としている。7月4日にはヴァグネル・マンシーニ監督が解任された。後任にはヴィニシウス・エウトロピオ(51)を招聘。エウトロピオは2000年から指導者の道に入り、2015年にシャペコエンセを率いたこともある。すでにシャペコ入りして練習を指揮しており、9日の試合から采配を振るうことになる。

 昨年、強豪を次々に倒して決勝まで勝ち上がり、飛行機事故のため決勝は中止されたが相手チームからの要請もあって優勝チームに認定されたコパ・スダメリカーナには、第2ステージ(ベスト32)から登場した。

 6月28日に行なわれたデフェンサ・イ・フスティシア(アルゼンチン)との第1レグ(アウェー)では、後半開始早々、ボランチが退場処分を受けて10人になり、その後は防戦一方。相手の猛攻を必死に耐え忍んでいたが、あろうことか残り1秒で失点して0-1で敗れた。ただし、決して勝てない相手ではなく、7月25日にホームで行なわれる第2レグで勝ち上がるチャンスは残っている。

 今季序盤に比べて成績が下降している最大の理由は、対戦相手から戦い方を徹底的に研究されているせいだろう。マンシーニ監督は今季、主として4-3-3のフォーメーションを採用してきた。中盤の守備を重視してボランチ3枚を並べるのだが、局面を打開できるプレーメーカーがおらず、攻撃がサイドに偏っている。

 サイドではSBとウイングが連携して縦へ突破しようとするのだが、相手に数的優位を作られてクロスを入れる前にボールを奪われ、SBの裏へボールを通されて再三、決定的なピンチを招いている。また、クロスを入れても中にいるのはCFだけで、2人がかり、3人がかりでマークされると点を取るのは難しい。攻守両面でオプションが少なく、手詰まりになっている。

 状況を変えるには、フォーメーションを4-2-3-1か4-1-4-1に変更し、攻守に貢献できる選手を中盤に並べ、傑出した個人能力を備えた選手がいない弱点を組織力でカバーするしかなさそうだ。

 シャペコエンセを悩ませているのは、ピッチ内の問題だけではない。クラブにとっては、昨年の飛行機事故で死亡した選手らの遺族への補償問題が頭痛の種となっている。

 ブラジルサッカー連盟とクラブは選手に生命保険を掛けており、亡くなった選手それぞれにすでに40カ月分の給料が支払われている。だが一部の遺族が給料の中に肖像権や勝利給などを含めることを求めて訴訟を起こし、クラブはその対応に追われている。

 また、墜落したチャーター機を所有していたボリビアの航空会社が法律で加入を義務付けられている保険が、保険料の未払いなどで事故時点で失効していたとされ、事故後7カ月が過ぎてもこちらの保険金は支払われていない。遺族からは、この航空会社を選んだクラブ側の責任を指摘する声もあがっている。

 地元メディアは、「もし遺族側の言い分を全面的に認める判決が出たら、クラブは倒産する」と報じている。いずれにせよ、遺族への補償問題を完全に解決するには相当な時間がかかるはず。クラブとしては、根気よく誠実に対応するしかないだろう。

 このようにピッチ内外で厳しい状況が続くが、プリニオ・ダビ・デ・ネス・フィーリョ会長は「クラブのために命を落とした人々の尊厳と名誉を守るためにも、我々は死に物狂いで働き続ける」と宣言。「全国リーグで10位以内に入り、コパ・スダメリカーナでも昨年の快進撃の再現を目指す」と前を向いた。それは、このクラブを心から愛し、何があろうと熱烈にサポートする21万シャペコ市民の共通の願いでもある。

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