ヒアリの驚異の生命力 この時期、日本が特に注意しなければならない理由

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 強毒のヒアリが兵庫、愛知、大阪で相次いで発見されている。環境省は大阪南港の一部の個体を女王アリと断定し、日本でも繁殖・定着の初期段階に入っている可能性があると発表した。家畜や人間を死に至らしめるこの種は世界中に勢力を広げており、海外のマスコミも警戒を呼びかける。

◆水害を味方にする高い生命力 日本では要注意シーズンが続く
 ヒアリは非常に強い生命力を持つ。その生態はワシントン・ポスト紙が詳しく解説しており、巣が洪水に見舞われた後も生存することができるとのことだ。濁流が迫ると、個体同士が体を絡ませてボール状の「イカダ」を形成し、コロニー全体で水面に浮き、安全な土地まで移動する。災害を機に生息範囲を広めるしぶとさだ。

 USAトゥデイも同様の行動を紹介しており、こちらによると2分以下でイカダを完成させる。こうして移動した群は洪水後に家屋の中でも発見されるとして、同紙は注意を呼びかける。

 生存力の強さのほか、強力な毒性にも注意が必要だ。スミソニアン協会の記事によると、アナフィラキシーショックを引き起こす毒を有し、特に夏場は多量の毒液を体内に蓄えているという。

 日本では当面、梅雨・夏場・台風シーズンと、ヒアリの広まりやすい条件や毒素の強くなる時期が続く。まだ日本で完全に定着したわけではないとはいえ、巣に近づかないよう、国内の報道に注意を払いたい。

◆欧米でも広がる被害 食器用洗剤で対抗?
 定住の進んだ国では、ヒアリによる深刻な被害が出ている。ヒアリの生息域が南部全域に広がっているアメリカでは6月22日に熱帯低気圧「シンディ」がルイジアナ州に上陸した。ワシントン・ポスト紙は、水害が起きてもヒアリが死ぬわけではないと警告する。特にコロニーの卵や幼虫は上述の「イカダ」に強い浮力を与え、乾いた土地に流れ着くまで最大で12日間ほど浮き続けるとのことだ。

 被害はオーストラリアでも出ている。オーストラリア放送協会の伝えるところでは、同国で2001年に初めて発見されて以来、すでに定着が進んでいる。発見地点を中心に「バイオセキュリティゾーン」を設定して一定区域内に封じ込めようとしているが、先月27日にはこの区域外から70キロも離れた地点で大発生が確認されるなど、対処は容易でない。オーストラリア政府は新たに3.8億豪ドル(約326億円)を対策に投じるなど、行政への負担も甚大となっている。

 アラバマ州政府職員は、「希釈した生分解性の食器用洗剤が(ヒアリの)活動力を奪って溺死させるのに役立つかもしれません」(ワシントン・ポスト紙)とアドバイスする。見つけても近づかないのが一番だが、身近な道具でできる駆除の方法として覚えておくと良さそうだ。

◆世界的な流行の背景に人間の影響も
 アメリカとオーストラリア以外にも世界的に広まるヒアリだが、この厄介な状況は人間の活動が招いたとの見方もある。「イカダ」の漂流は最大12日前後であるほか、海水にも弱い(『エクステンション』)といわれており、自然に海を渡ったとは考えにくい。では、何が原因で広まったのだろうか?

 スミソニアン協会は、人間による貿易活動が主な原因と分析する。歴史を遡ると、南米原産のこの種は、16世紀にスペインの貿易船がアメリカ、台湾、オーストラリアなどに運んだ経緯があるようだ。事実、日本の4件も全てコンテナまたはコンテナヤードで発見されている。生活を豊かにするはずの貿易が災害をも運んでくるとは悩ましい。

 世界を悩ませるヒアリ問題だが、夏場や台風シーズンを控える日本でも継続的な注意が必要だ。