「Thinkstock」より

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 ジーンズなど衣料品を販売するライトオンが危機に立たされている。ライトオンは6月27日、2016年9月〜17年5月期の売上高は前年比7.6%減の620億円、営業損益は6億円の赤字(前年同期は45億円の黒字)と発表した。

 3月28日に通期の業績予想について修正を発表し、営業損益が20億円の赤字になる見通しを示している。1995年の株式公開から初となる通期での営業赤字に陥る可能性が高まっている。

 ライトオンは今回発表した決算における業績低迷の理由について「前年に余った商品が売れず、新鮮味に欠ける売り場になったことが影響した」ことを挙げている。これは、ある程度はその通りだといえる。ただ、商品が余っているのであれば、粗利益率を落としてはしまうがセールで売り抜けばいいだけの話だ。売り場の鮮度はディスプレイの見せ方を工夫するなどしてある程度カバーできる。

 ライトオンの業績悪化の原因は「商品が余った」という理由以外に求めるべきだろう。また、一時的な問題というよりも、永続的な問題ではないだろうか。筆者は商品力に問題があると考えている。「ヒット商品がない」「ファッション性に乏しい」という問題が長らく横たわっているのではないか。商品力がないがために、一時的ではなく、長きにわたって業績が低迷していると考えられる。

 ライトオンは1995年に店頭公開し、95年8月期から2007年8月期までは12期連続で増収を達成するなど好調だった。しかし、その後はサブプライムローン問題やリーマンショックの影響による消費低迷、ネット通販の台頭などにより業績は下降していった。

 07年8月期の売上高は1066億円あったが、その後は右肩下がりで減少していき、15年8月期には782億円まで落ち込んだ。16年8月期は864億円にまで回復したものの抜本的な回復には至らず、17年8月期は前年比6.3%減となる810億円を予想している。

●ユニクロ、しまむらとの差

 ライトオンは近年こそ都市部の駅ビルやファッションビルに新業態店などを出店しているが、大半は郊外のロードサイドやショッピングセンターでの出店だ。ファッション感度が高い人の取り込みは遅れていたといえる。また、モータリゼーションが一巡し、ロードサイドから進む人口減少という問題に直面した。そのため、ある程度の規模になった段階で成長が止まってしまった側面がある。

 競合のユニクロはライトオンと同じく郊外のロードサイドを中心に成長してきたが、ユニクロは銀座に大型店を出店するなどブランド力を高め、ベーシックな中にも適度なファッション性を取り込むことで、ファッション感度の高い人をも取り込むことに成功した。都市部にも積極的に出店していった。昔は「ユニクロはダサい」という評価が少なくなかったが、近年はそういった声はあまり聞こえてこない。

 しまむらも同じく郊外のロードサイドから成長した企業だが、バイヤーがパリ、ニューヨーク、ロンドン、原宿、渋谷といったファッションの最先端の街を定点観測した上で流行に沿った商品を選定し、ファッション性のある商品を仕入れることができている。近年は都市部のショッピングモールやファッションビルにも出店し、ブランド力を高めている。

 ユニクロやしまむらと、ライトオンの明暗が分かれたのは、商品力とブランドイメージにあるといえる。ライトオンはファッション感度が高い人から支持を得ているとはいえないだろう。郊外のロードサイドから育ったアパレル企業で、それ以上でもそれ以下でもないというイメージから脱却できていない。「オシャレに目覚める前の中高生が好むブランド」といった声も聞かれる。

 誰もが思い浮かぶヒット商品が見当たらないことも商品力の欠如を示している。ユニクロであれば「ヒートテック」や「フリース」などがすぐに思い浮かぶ。有名デザイナーを起用し、お洒落な洋服も手がけている。例えば「ルメール」とのコラボが話題になるなど、ファッション性のある商品も取り揃えて充実してきている。

 しまむらであれば「裏地あったかパンツ」が15年に110万本を売る大ヒット商品となった。また、他のブランドや団体とのコラボ商品が有名だ。例えばディズニーやスヌーピー、初音ミク、新日本プロレスなど、挙げればきりがないほどのブランドや団体とのコラボ商品を販売してきた。しまむらで掘り出し商品を探すこと意味する「しまパト」、しまむらの商品を愛用する「しまラー」といった言葉が広まっていることからもわかるように、しまむらには熱心なファンがいる。

 一方、ライトオンではそういった熱心なファンやヒット商品は少ない。もちろん、ヒット商品がまったくないというわけではない。16年8月期の売上高は前年比10.5%と大きく伸長したが、それに貢献したのが「モコモコジーンズ」だった。裏地が起毛素材で保温性があり、ファッション性にもこだわったジーンズとしてヒットした。このようにヒット商品があれば業績は向上する。

 ただ、残念ながら「モコモコジーンズ」も、そこまで認知度が高いわけではない。しまむらの「裏地あったかパンツ」と似たようなパンツだが、両者を比べると認知度では「裏地あったかパンツ」に軍配があがるだろう。「裏地が起毛の温かいパンツといえば?」と聞かれて「モコモコジーンズ」を挙げる人は、そう多くはないのではないか。ライトオンのイメージを覆すには至っていないといえるだろう。

 ライトオンはヒット商品を生み出し、イメージを刷新していく必要がある。3月に東京・原宿にジーンズのスペシャリティストアをオープンしたり、都市部を中心に一流のクリエイターを起用して設計した店舗をオープンするなど、イメージ刷新に取り組んでいる。商品開発ももちろん進めているだろう。3月から展開している、アメリカ西海岸をイメージしたサーフカジュアルを中心とした品揃えの新業態「ノーティードッグ」も試金石になる。

 こうした取り組みが成功するかどうかが、今後のライトオンの業績を左右しそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)