川崎に大敗して引き上げる浦和の選手たち。容赦ないブーイングが飛んでいた。写真:サッカーダイジェスト写真部

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[J1リーグ13節順延]川崎フロンターレ 4-1 浦和レッズ/7月5日/等々力陸上競技場

【川崎4-1浦和 PHOTO】小林、阿部、長谷川が躍動、4得点を奪い快勝!

 鳥栖戦(●1-2)のあと、広島戦(〇4-3)では遠藤のボランチ起用、川崎戦(●1-4)では4バックの採用と、これまでの戦い方に変化をつけた。しかし2試合で7失点。ことごとく裏目に出て、目的であるはずの守備の安定化は図れず、むしろ悪化してしまった。
 
「従来の3-4-2-1に戻したほうが、上手くいった」という声が川崎戦のあと、ペトロヴィッチ監督や選手たちから聞かれた。とは言っても、後半に2失点を喫している。
 
「サイドに相手を追い込んだりする意図はあったが、結局、一番大切なボールを奪うところまで行けていなかった」
 
 PKを与えてレッドカードを受けた遠藤はそのように振り返っていたが、どのように修正していいものか分からず、完全に混乱に陥っているようだった。4バックよりもまだ良かったに過ぎず、従来の3-4-2-1でさえ機能しているとは言い難い状況だ。
 
 では、現状を打破するためにはどうすればいいか?
 
 この2試合、指揮官は目先の変化をつけたに過ぎなかった。先発メンバーは変わらず、交代策も一緒。手術をも要する危機なのに、過去にも処方してきた風邪薬(を多少強めにして)で様子を見ようとした。しかしその間に、症状は急速に悪化してしまった。

 ボールを奪いに行けず、どんなにミスを繰り返して失点を与えても、DF陣は変わらない。センターラインを固めるコアメンバーは不動のままだ。
 
 もちろんその固い信頼関係があるからこそ、特殊なミシャ(ペトロヴィッチ監督の愛称)スタイルは成熟度を高めてきた。キャンプから観ていても、新戦力がすぐにフィットするのは容易でないことが分かる。中心選手をベースに、今季もまた、時間をかければ自然とその戦術の成熟度は一段と強まるはずだと信じていた。
 
 しかし競争原理が働かず、安泰のポジションはむしろ増えるだけ。それではチームは進化していけないという現実を突き付けられた。

 最近は完敗が続く。磐田(●2-4)、鳥栖、川崎と、残念ながら、相手チームのほうが断然、魅力的なサッカーを展開していた。浦和は球際で負け、走り負け、根負けしていた。
 
 主力の多くが30代を迎えたためか、躍動感の差は明らかだった。「自分たちのサッカー」に捉われている間に、気付けば周りは目まぐるしく変化を遂げ、前進している。浦和も「敵陣で試合を進める。より攻撃的なスタイルにする」(ペトロヴィッチ監督)と新たなチャレンジには取り組んでいるが……根本的なスタンスは変わらぬまま、いつのまにか閉鎖的になり、そんなJリーグを取り巻く時代の潮流に気付けずにいたように感じる。
 
 また、選手に覇気が感じられないことも気になる。
 
  川崎戦後、「今は勝てる気がしない」と本音を漏らした選手がいたが、心の折れたボクサーがリングに立っている状況だ。しかも、周囲からのあらゆるプレッシャーがプラスに作用しているとは言えず、もっとも肝心な選手たちが意気消沈し奮い立てずにいる。
 
 とはいえ、特に最近……試合中の選手たちの姿に、ガッカリさせられることもあったのは事実だ。競り合って負けたあとに相手よりも痛がったり、不平不満を主審にぶつけたり、負けているのにバックパスを連発したり……。あらゆる「仕事」に共通して言えそうだが、プロが現場で弱気を見せて得をすることは一切ない。現場には常に駆け引きがある。ただ、今はすべてが加速度的にネガティブに向かっている。
 
 ペトロヴィッチ監督は、基本的に全ポジションで、高いテクニックを要求する。まず優先すべきが、センスとテクニック、続いてバランス。欧州のように頭抜けた強さや高さを備えているわけではない日本人選手の特性を生かせる、ガラパゴスとも言われるが、日本にあった戦術なのは確か。その方針にもとづくメンバーが選ばれ、ある意味、指揮官のメンバー選考の基準は6年間ブレずにいると言える。
 
 ただ、浦和が今、もっとも欲しているのは、より巧い選手ではなく、闘える選手ではないだろうか。2014年、リーグ優勝まであと1勝という状況から、残り3試合一度も勝てず、最後にタイトルを逃した。最終節の名古屋戦(●1-2で逆転負け)のあと、「浦和には男がいない」と闘莉王に指摘されたが、それ以来、結局、「男」が現われずにいる気がする。確かに関根や武藤らはファイティングスピリットを見せるものの、ポジションが確約されてきたコアメンバーにそういった牽引する存在が見当たらないままだ。
 
 15年も、16年も、勝負どころで相手を叩きのめせず、大一番で敗れてきた。「ファミリー」の絆を重視してきた優しさや甘えが、この期に及んでも抜け切れず、そのツケが現在に至っている気がする。
 
 9日のホームで迎える新潟戦は、危険地帯で唯一ボールの奪いどころとなっていた遠藤が出場停止となる。テコ入れすべきDF陣は、結局、森脇、那須、槙野という、これまでの序列どおりの顔触れになるのだろうか……。

 この状況を変えられるのは、指揮官の決断と、それに応える新鮮な戦力、そして勇を鼓して立ち向かう「男」たち……。それはないものねだりなのだろうか。いや、浦和にはまだ底力があるはずだと信じたい。ただ、それらが揃い、闘う集団になれなければ、現状を打開できない気がする。浦和が踏み込んだ夏のトンネル。暗闇からの突破口を見出すことはできるだろうか。
 
取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)