フリーペーパーは、非常に自由度が高いメディアです。それゆえに、作る人の思想や熱意が誌面に色濃く反映されます。

そんな個性豊かなフリーペーパーを作っている人はどんな人なんだろう?

フリーペーパー専門店「ONLY FREE PAPER」スタッフが、数ある作品の中から特に気になるものを選出し、作者にお話を伺う新連載「フリーペーパー学」。

第1回目は、フリーペーパー『BEYOND』の編集長であり、NPO法人東京レインボープライド共同代表理事でもある山縣真矢さん!

BEYONDとは?

「らしく、たのしく、ほこらしく」をモットーに、性的指向および性自認(SOGI=Sexual Orientation, Gender Identity)のいかんにかかわらず、すべての人が、より自分らしく誇りをもって、前向きに楽しく生きていくことができる社会の実現を目指し活動する、特定非営利活動法人東京レインボープライドの機関誌として、2016年4月に創刊。

春と秋、年2回のペースで発行され、現在の最新号は2017年4月に発行された第3号。

左から順に『BEYOND』1号、2号、3号

--特定非営利活動法人東京レインボープライドの機関誌と伺っていますが、団体の活動についてお伺いできますでしょうか。

毎年春に「東京レインボープライド」を開催しています。

「東京レインボープライド」とは、LGBTをはじめとするセクシュアルマイノリティの可視化、差別や偏見への訴えをコアにしたイベントです。

東京では、1994年からこのようなイベントが不定期で開催され始め、主催団体やパレード名の変更など形を変えて受け継がれてきました。

そして、2011年5月に東京レインボープライドという団体を設立し、翌年4月に第1回目のイベント「東京レインボープライド2012」を実施。そこからは毎年開催しています。

--2015年にNPO法人化して、いよいよ翌年に機関誌である『BEYOND』の創刊ですね。こちらを創刊した経緯についてお聞かせください。

もともと第1回目の開催時から、「TRPオフィシャルガイド」というガイドブックのようなタブロイド判の冊子を毎年作っていました。

だんだん広告枠に大企業なども入るようになり誌面の棲み分けが必要になってきたので、法人化を機に“団体の機関誌”として『BEYOND』を作ることになりました。

『BEYOND』という名前は、創刊の年に開催した「東京レインボープライド2016」のテーマ“Beyond the rainbow”からとっています。

--インターネットの方が広く早く情報を拡散できると思うのですが、あえて機関誌という“紙でつくる、紙で渡す”ことを選んだ点にはこだわりがありますか?

もちろんこだわりはあります。紙ならではの力は、webとは違うと感じています。

webは情報がどんどん消費されていきますが、紙は形として手元に置いておけて、何度も繰り返して読むことができます。

話題の人や現況を特集することで、バックナンバーを欲しがる方も多くいらっしゃいます。

人から人へ渡っていくという意味では作り手の思いが伝わる部分も大きいですし。

日本という国におけるLGBTの問題

表にもあるようにG7諸国の中においても突出して人権の問題や同性カップルの問題などに対して法整備が遅れている日本。

--日本がこのような問題に対して大きく遅れをとっているのは、なぜだと思いますか?

LGBTのことだけでなく、日本は人権とか差別に関する包括的な法律が無いんです。部落差別や障がい者差別など、個別のものに対する法律はいくつかあるんですけど。

同性パートナーに関して言うと、いわゆる「伝統的家族観」とか儒教的な家族観とか、あとは戸籍制度ですね。「家」を中心とした戸籍制度は、同性パートナー制度や同性婚の実現にとってすごく大きな障害になります。そういった点が他の国とは違うところだと思います。

その一方で、日本は宗教的な縛りが少ないというところもまたあると思います。韓国は保守的なキリスト教の団体が反対勢力としてあって、露骨な嫌がらせや妨害など、結構すごいのがあるんです。

近年、徐々に開かれた国へと向かっている日本ですが、ガラパゴス的にそしてある種ご都合主義的に独自の時を刻んできた伝統や文化・思想が、LGBTやSOGIのみならず人権そのものの問題を簡単にさせない土台を作り上げてしまったことに圧倒されてしまいました。

性の問題を含むマイノリティたちのための「場」であり続けること、そして声を上げ続けることの重要性

年1度のイベントを通じて、性に悩む全ての人に対して旗を振り続ける東京レインボープライド。

その終着点はどこにあるのか、伺ってみました。

--LGBTの活動を続け、最終的にはどうなっていけば良いと考えていますか?山縣さん個人としてのゴールはありますか?

ゴールは無いと思っています。

性のことってマイノリティ以外でも悩むじゃないですか。「性」ってやっぱり生きることの根源にも繋がってくるので、年に1回のイベントは、ストレートであろうがゲイであろうがレズビアンであろうが、自分の生きることや性のことについて、みんなでお祝いするような場として、ずっとあり続けていいんじゃないかなと僕は思っています。

その中でセクシュアリティによる差別がなくなっていったらいいですよね。

他にも、LGBTの運動的に言うと具体的に法律ができることですかね。ゲイブームと言われた90年代前半のころは、もっとふわっとしていた部分もあったと思うんですけど、今は条例や法律、差別解消法とか同性婚とか、具体的なものが課題として上がってきています。それは少し歴史が前に進んだってことなんじゃないかなと思っています。

けれども、そこを越えていくのはまた大変で。今の日本の社会状況とか政治状況だと結構難しいところもあるのですが、具体的な課題に向かって行く運動のひとつとして、東京レインボープライドも貢献できればいいなと考えています。

そもそも「SOGI(性的指向/性自認)」というのは、あらゆる人に関わる属性です。なので、SOGIに関してマジョリティな人たちにも、自身の「生」にとって重要な「性」について考えるキーワードとしてSOGIを捉えてもらい、そこを出発点に、SOGIに関してマイノリティ性を抱える人たちに想いを馳せてほしいかな、と思っています。多様な「性」に寛容な社会は、豊かなんじゃないでしょうか、カルチャーの面にとっても。

聞けば聞くほど他人事ではないセクシュアルマイノリティのこと。お互いの性や生を尊重し合うというのは自分の性(=生)を大事にすることから始まるのだな。

これほんと、誰も無関係でない大事な話なのだと思います。

なお、こちらのインタビューのフルバージョンはONLY FREE PAPER HPにて公開中です!

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