北朝鮮が発射したICBM(提供:KRT/AP/アフロ)

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 朝鮮中央通信など北朝鮮の国営メディアは、4日に行われた大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」の発射実験に成功したと伝えた。また、米政府のティラーソン国務長官も同日、発射されたミサイルがICBMだったと認めている。

 いうまでもなく、北朝鮮のICBM開発の狙いは核兵器による米本土攻撃だ。これまで数々のミサイル発射実験や核実験を繰り返してきた北朝鮮の最高指導者、金正恩朝鮮労働党委員長は4日が米国の独立記念日であることに言及したうえで、米国は「非常に不快だったろう」と述べるとともに、「これからもたびたび大小の贈り物を送ってやろう」として、今後もミサイル発射などを続ける意思を示したという。

 今後の焦点はトランプ米政権の出方だ。トランプ大統領は北朝鮮がICBM開発および実戦配備という「レッドライン」を越えたことで、より強硬な手段に訴えることが考えられる。なぜならば、これまで中国に圧力をかけて対北経済制裁などを強化してきたが、実効性がないことが明らかになるなど、これまでの経緯から選択肢は極めて狭められているからだ。

 このまま手をこまねいていれば、北朝鮮は早晩、核弾道を積んだICBMを実戦配備することは間違いないだけに、いずれ米軍による北朝鮮攻撃が現実化する可能性は高い。その時期は、トランプ大統領の怒りがいつ爆発するかにかかっているといえそうだ。

●第6回目の核実験は不可避

 北朝鮮の国営メディアによると、4日の「火星14」の発射実験では弾頭が大気圏へ再突入した際、耐熱性を維持し、正常に起動できることが証明された。実験では、再突入時に弾頭が数千度の高温や過酷な負荷、振動にさらされた状態でも内部温度は25〜45度に安定して維持され、爆発制御(起爆)装置は正常に作動し、目標水域に正確に着弾したという。

 さらに、ミサイルの1段目のエンジンと、新たに開発された2段目のエンジンの始動に成功したほか、1段目と2段目の切り離しもスムーズに運んだという。弾頭を再突入の際に発生する高温や振動から守るには、高度の技術が求められるが、今回の実験ではそれらの課題をすべてクリアしたことになる。
 
 今後はICBMに核弾頭を搭載できる核軽量化が実現できるかどうかだ。北朝鮮は昨年9月に実施した第5回目の核実験で、「標準化、規格化された核弾頭の構造と動作特性を確認した」と発表しており、核小型化技術はまだ確立されていないとの見方が一般的だ。核小型化技術を確立するためには、第6回目の核実験は不可避だ。

 しかし、北朝鮮は今年3月から金委員長が命令すれば、すぐにでも実験ができる状態になっているにもかかわらず、いまだに核実験に踏み切っていない。これは、核実験を強行すれば、米国が北朝鮮をミサイル攻撃するかもしれないとの不安を抱えているからにほかならない。あるいは、米軍による金委員長暗殺を狙った「斬首作戦」を恐れているとの観測も出ている。

 これを裏付けるように、今年1月1日から6月15日までの間、金委員長の公開活動は51回と前年同期比で32%も減少している。そのうち、軍事訓練など軍関係の活動が21回で、とくにミサイル発射実験は10回と同じ項目では最多。このうち9回が午前3時から午前7時台と早朝に集中しており、1回だけは夕方の午後5時ごろだった。金委員長は狙われる確率が低いとみられる軍の活動を優先し、その活動時間も早朝に集中している。

 さらに、地方視察の移動手段では金委員長の専用車両や専用列車、あるいは専用機を用いず、地方幹部の車に同乗するなど徹底した隠密行動をとっていることがわかった。その際には、トヨタのレクサスが多く使われているという。いずれにしても、金委員長が斬首作戦を意識して、行動を控えているのは明らかだ。
 
●チキンゲーム状態

 しかし、ICBMに積載する核の小型化に成功しなければ、北朝鮮による米本土攻撃は画餅に帰すだけに、いずれ金委員長は核実験実施の決断を下さざるを得ない。核実験を行えば、北朝鮮による米本土への核攻撃も時間の問題となるだけに、一方のトランプ大統領も強硬手段に訴えざるを得ないだろう。まさに、金委員長とトランプ大統領による“チキンゲーム”状態だ。

 トランプ大統領は4日、ツイッターに「恐らく中国が北朝鮮に強く迫り、こんなばかげたことをきっぱりと終わらせるだろう」と書き込んだ。しかし、それ以前に米政権は対北制裁の抜け穴となっているとして、中国の丹東銀行など2社などに制裁を課しており、一縷の望みをかけていた中国による対北圧力は現段階では機能していないようだ。

 習近平国家主席は4日、モスクワでプーチン露大統領と会談。中露両国は朝鮮半島問題に関する共同声明を発表し、北朝鮮が核・ミサイル開発を凍結するのと引き換えにアメリカと韓国が大規模な合同軍事演習を停止するべきだとして、今週ドイツで開かれるG20サミットを前に、アメリカのトランプ政権と一線を画す姿勢を明確にした。

 それだけに、トランプ大統領にとって、中露両国は当てにならないことは明白であり、トランプ大統領自身が決断するときは意外と早く訪れるかもしれない。
 
 その際に最も警戒すべきは、自暴自棄になった金委員長が沖縄駐留米軍基地など日本への攻撃を命令することであり、日本列島に北朝鮮のミサイルが多数襲来することもあながち非現実的とはいえないだろう。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)