<アメリカの対ロ政策に頼れなくなり独り立ちを迫られるヨーロッパで、大統領選をロシアに妨害されてその実像を肌身で感じた変革者マクロンが、外交の新機軸を打ち出した

フランスのエマニュエル・マクロン大統領はエリゼ宮(大統領府)に入居する前から、ロシアへの強硬姿勢で幅広い支持を得ていた。

今年のフランス大統領選で、マクロン陣営はロシアに選挙戦を妨害された。個人攻撃を含む組織的中傷を受けたのだ。

マクロン陣営によれば、それがマクロンの転機になって、従来は実利主義的だったロシアに対する見方が硬化した。

マクロンが5月29日にパリ郊外のベルサイユ宮殿でロシアのウラジーミル・プーチン大統領と行った共同記者会見でもそれは顕著だった。ロシアの政府系メディア「ロシア・トゥデイ(RT)」と「スプートニク」の2社を名指しして、自分の選挙戦の扱いも含め、報道機関というよりプロパガンダマシンだったと批判した。

ウクライナ紛争に関する立場も、誤解の余地がないほど明確だ。マクロンはロシアがクリミア半島を併合したのは違法だと繰り返し非難してきた。ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領とも会談し、ウクライナ東部での停戦を定めた「ミンスク合意」を履行させることで紛争地に良い変化をもたらすのが目標だ。

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マクロンの対ロ政策は、フランソワ・オランド前仏大統領の流れをいくらか継承し、ドイツ政府とも見方を共有している。だがその後、ロシアに対するマクロンの現実主義がリアルポリティーク(現実政治)に変容する兆しが出てきた。大きな変化だ。

メルケルとも違う

先月26日にパリで行ったポロシェンコとの首脳会談後の共同記者会見で、マクロンが質問に回答するとき、あらかじめ用意された原稿を注意深く読み上げていたのは印象的だった。

マクロンはクリミア併合を断固非難したが、ロシアが支援しているウクライナ東部の分離独立派に話が及ぶともっと微妙な言い回しになった。マクロンはロシアを黒幕として名指しせず、紛争解決には両当事者の努力が必要だと言った。両者が情報を共有し、非難合戦を止めることから始めるべきだと言ったのだ。

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ウクライナ紛争に関するマクロンの言葉は、その響きも中身もミンスク合意を主導したドイツのアンゲラ・メルケル首相の言葉とは異なる。メルケルもすべての関係国に和平を呼びかけたが、最初に行動すべきなのはロシアだと強調するのを忘れなかった。

実際、ウクライナ東部の治安状況が目に見えて改善しない限り、政治的な解決はあり得ない。治安が改善するかどうかはウクライナ東部の国境を支配するロシア次第だ。

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メルケルとマクロンの微妙な姿勢の違いは、マクロンが今後の外交政策の大枠を示したときに表面化した。先月22〜23日のEU首脳会議の前、マクロンがヨーロッパを代表する新聞社8社の質問に答えたときだ。

ファブリス・ポシェル(米大西洋評議会ブレント・スコウクロフト国際安全保障研究センターの上級研究員)