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アルピーヌA110 アルミニウム製を選んだ理由

秋に開催される国際試乗会を前に、ダン・プレッサー記者が、アルピーヌA110の同乗試乗を許された。ルノーのテクニカルセンター(フランス北部、オーブヴォワ)からレポートをお届けしよう。

チーフエンジニアに訊く、A110

固定式でリクライニングもできないバケットシート。そのパッセンジャーシートに身をかがめて入り込もうとすると、あの二人から耳にした言葉が頭をよぎった。

・エリック・レイマン(商品企画ディレクター)
「A110の開発にあたって、まず最初にはじめたのはカスタマーからのヒアリングです。2012年のことでした。まずポルシェ、ケータハム、ロータスのオーナーを集めてクリニックを開き、それから参加者の間口を広げていったのです」

「すると、日々を快適に過ごせるスポーツカーを望む声が多かったのです。ただし、“サーキットでも楽しい” という条件付きですが…」

・デイビッド・トゥーヒグ(チーフエンジニア)
「アルピーヌとしては、時速60km/h台で公道を走っていても、ドライビングプレジャーを感じさせるクルマが欲しいのです。それにもかかわらず、サーキットに行く週末には、血がさわぐようなモデルが理想ですね」

彼のチームが、このクリニックの結果をもとに、スペックを決定した。その目指すところは、第1に “軽量” であること。

「車重が軽ければ、スプリングレートを高める必要もなく、猛烈に硬いクルマのなかで毎日を過ごす必要がなくなります。これがA110のボディをアルミニウム製にした理由です」

「続いて重要なのが、サスペンションの選択でした。全輪ダブルウイッシュボーンの採用は、このクラスでは非常に稀なことでしょう。718ケイマンは、フロントがマクファーソンですから」

車重1080kg 全輪ダブルウィッシュボーン

初心にかえって自動車工学のテキスト、それも第1章を読み返してみた。

・ダブルウィッシュボーン
・軽量ボディ

このふたつが、A110のダイナミクス性能を方向づけることは間違いない。

前者は、ハードコーナリングにおいてもポジティブキャンバーに陥ることなく、路面にぴったりとトレッド面を接地させる。この点に関してはストラットに優るのだ。

それがストラット・サスペンションでは、クルマの姿勢を正すために強固なアンチロールバーを必要とする。その代償が、乗り心地の悪化だ。

「ダブルウィッシュボーン式を四輪に採用したことで、ボディロールに悩まされる必要がありません。A110に取り付けたアンチロールバーをご覧ください。小ぶりで、中身は中空です。乗り心地に悪影響はありません」

・車両重量は、ミニマムに(1080kg)。
・足まわりは、ダブルウィッシュボーン式。

これが素晴らしいスポーツカーの鉄則だ。

「A110」助手席インプレッション ウルゴン登場

例えばスロットルを踏み込んだときにどうなるか? A110のサスペンション設定は、スムーズなキャンバー変化という点では、クラス随一の性能だとトゥー匕グは胸を張る。それゆえハードに攻め込んでいっても唐突な挙動変化はなく、狙い通りのラインにクルマを乗せることができるという。

思い切ってコーナーに飛び込むと、わずかにトーアウトとなる設定がなされており、緩やかにアンダーステアが顔を出す。シャシー自体のバランスは、実にニュートラルにチューンされている。

低中速:扱いやすく、走るのが楽しい
高速域:安定していてセーフティマージンが大きい

これは望んでも、なかなか成し遂げられないキャラクターである。

アルピーヌA110 ウルゴンの隣からレポート

それでは本日の主役に登場して頂こう。ドライバーの名は、ロラン・ウルゴンだ。彼よりもA110のダイナミクス性能を語るにふさわしい人物はいるまい。そしてテストコースは、ルノー・テクニカルセンターの高速テストコース。これ以上の条件はないだろう。わたしはその助手席に同乗させてもらった。

A110のステアリングを握ったウルゴンは、鳥肌が立つほどのスピードで、連続するタイトコーナーに進入する。さきほどまで、優美で穏やかなルックスのクルマだと思っていたが、今のわたしは野生動物にしがみついているような気分だ。
 

延々とつづくドリフト ケイマンに勝機は?

ストレートを立ち上がると強烈なパフォーマンスで加速していく。デュアルクラッチのトランスミッションは、変速がシャープで、キレがいい。それに本物のスポーツカーだけが発するサウンドが、終始耳をくすぐるのだ。

ウルゴンが、走行モードを「トラックESC」にすると、わずかにスリップしながら、低速コーナーでドリフトを披露してくれた。

もっと楽しみたい? とばかりに、彼はおもむろにシステムOFFを選んだ。するとそこから長々と続く激しいドリフトがはじまった。助手席から見ているかぎり、クルマの身のこなしは驚くほど軽く、ステアリングのレスポンスは鋭い。スピードを高めていっても安全マージンが失われることはなかった。

テストコースの最もラフなセクションにA110が差し掛かる。ここでは、多くの開発車両がフェンスの犠牲になるという。しかし、その走りはどこまでも懐が深く、スムーズだ。これほどのコントロール性と走行性能が共存するモデル。決して数多くは存在しない。

さて、本当にアルピーヌA110は、ファン・トゥ・ドライブの申し子なのだろうか? その答えは、AUTOCARが試乗を許されるまで待つことにしよう。わたしが今皆さまに約束できることはただ一つ。718ケイマンは確実に追い詰められているということだ。