室町時代の大将棋

 山形県天童市が、藤井聡太四段(14)の連勝をきっかけとする将棋ブーム特需に沸いている。天童市は将棋駒の生産量日本一を誇り、全国シェアの約95%を占める。そのため、ふるさと納税の特典として将棋盤がもらえるのだ。

「1万円、2万円を納税するともらえる将棋セットが一番よく出ています。ネット経由の申し込みでそれぞれ100件以上あります。最高級将棋盤がもらえる100万円納税には、3月からすでに3件の申し込みがありました」(天童市ふるさと納税推進室担当者)

 天童駅前には巨大な駒のモニュメントがある。甲冑に身を包んだ人間が駒に扮する「人間将棋」は、市を代表する毎年恒例の有名イベントだ。

「藤井四段のブームが始まってから来館者が目に見えて増えました」と語るのは天童市将棋資料館の石川浩幸さん。

 資料館には、将棋のルーツともいわれるインドのチャトランガや、日本の古代将棋も展示されている。

 現在の将棋は、9×9マス、駒8種類、合計で40枚だが、鎌倉時代に考案された「中将棋」は12×12マス。駒は21種類で、全部で92枚となっている。

鎌倉時代の「中将棋」

 中将棋の発祥地は明らかになっていないが、現在でも関西方面には愛好家が多く、日本中将棋連盟という団体もある。中将棋には「酔象(すいぞう)」と呼ばれる駒があり、この駒は相手陣地に入ると「太子」に変わり、「王将」と同じ役割を果たす。つまり王将が2つある状態になる。

 室町時代の「大将棋」は15×15マスで130枚。「摩訶大大将棋」となると駒数が増え、19×19マスで192枚。こうなると、将棋盤そのものも大きくなる。こちらも王将が2つ存在するルールは同じ。1回のターンで2度連続で動かせる「師子」駒なども存在する。

摩訶大大将棋

 さらに「泰(たい)将棋」と呼ばれる将棋となると25×25マス、93種類、駒数は354枚に及ぶ。ここまでくると陣地内のマス目に隙間がなくなるため、駒をどのように動かすのか見当がつかない。ほぼ自由に動くことができる「自在王」という駒まである。

 はたしてどんなルールだったのか、対局にどれだけ時間を要するのか気になるところだ。

「残念ながら、ほとんどの古代将棋に関しては棋譜など残っておらず、実際にどのように対局されていたのかよくわかっていません」(同上)

 石川さんによれば、現在の将棋の形になったのは江戸時代に入ってから。古代将棋では、ヨーロッパ発祥のチェス同様、相手から獲った駒は使用することができなかったという。

「実は戦後GHQが将棋をなくそうとしたことがありました。アメリカ人にとって、獲った駒が使えるルールは『裏切り』を連想させたようです。これに対して、升田幸三名人が「将棋は人を生かす文化だ」と反論し、阻止したそうです」(同上)

 日本中を沸かせたわずか14歳の藤井四段。現代に将棋ブームをもたらした彼の中にも、「人を生かす文化」が受け継がれていることだろう。