6月30日、U-21ヨーロッパ選手権の決勝が行なわれ、ドイツが1-0でスペインを下した。ドイツは2009年大会以来、2度目の優勝である(大会名はU-21だが、これは予選開始時点で21歳以下のためであり、本大会の出場資格は23歳以下。本稿では大会名に合わせて、当該世代をU-21世代と表記する)。


U-21欧州選手権を制したドイツ。photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 決勝で対戦した両国は近年、この大会で好成績を残している。ドイツは2009年大会優勝の他にも、前回2015年大会でベスト4に進出。スペインは2011年、2013年大会で連覇を果たしている。また、両国はこの世代に限らず、U-19やU-16の年代別ヨーロッパ選手権を制するなど、育成年代で成果が目立つ。

 しかも、ドイツ、スペインともに、ただ「育成年代で強い」だけでなく、育成年代での成果をA代表の成果、すなわちW杯優勝につなげたという点でも共通する。世界的に見ても、(U-21世代を育成年代に含めるかどうかはともかく)本当の意味で育成・強化に成功した”2強”と言っていいだろう。

 優勝したドイツは、同時進行的に開かれていたコンフェデレーションズカップでも、若手主体のチームで優勝。場合によってはU-21代表でプレーしていたかもしれない、1994年以降生まれの選手を9名もコンフェデに送り出してなお、ヨーロッパを制してしまうのだから、層の厚さはさすがだ。

 準優勝のスペインもハイレベルなポゼッションサッカーは健在で、選手個々の能力の高さではドイツ以上だった。”2強”が順当に勝ち上がり、そろって決勝に進出したことは、この2カ国が育成・強化において充実している現状を物語る。

 当然、こうした成功は他の国にも影響を与える。そのひとつに挙げられるのが、イングランドだろう。

 先のU-20W杯で初優勝を遂げたサッカーの母国は、この大会でもグループAを首位通過。準決勝でドイツに2-2からのPK戦(3―4)で敗れはしたが、2強を追う存在であることを印象づけた。


準決勝でドイツに敗れたイングランドだが...。photo by Getty Images

 率直に言えば、今大会のU-21世代には個々の能力においても、チームとしての組織や戦術といった面においても、世界チャンピオンとなったU-20世代ほどのインパクトはなかった。

 それでも、イングランドに起きている”サッカーの変化”は、十分に感じ取ることができた。確実にボールをつないで攻撃を組み立てるなかで、狙いを持った長短のパスを蹴り分けていたGKジョーダン・ピックフォードは、その象徴的な例だろう。

 世界を制した年代が中心となる2年後のこの大会を楽しみにしたいのと同時に、注目すべきは、イングランドもまたスペインやドイツに続き、育成の成果をA代表につなげられるかどうか、である。

 だが残念なことに、その点に関して言えば、イングランドが厄介な問題を抱えているのも確かだろう。というのも、イングランドは自国リーグがあまりに充実してしまっているからだ。

 海外資本も流入し、世界的に見て最も富に恵まれたリーグと言ってもいい、イングランド・プレミアリーグ。世界各国から名だたるスター選手が集まるリーグは、裏を返せば、自国の選手にとっては活躍する、あるいは出場機会を得るための高いハードルが待ち構えていることを意味する。

 今大会に出場したメンバーを見ても、プレミアリーグ所属のクラブで主力として活躍できている選手は、GKピックフォード(サンダーランド)の他、DFカラム・チャンバース(ミドルズブラ)、MFジェームズ・ワード=プラウズ(サウサンプトン)など、ごくわずか。2部リーグにあたるチャンピオンシップ所属のクラブでプレーしている選手も少なくない。

 例えば、MFナサニエル・チャロバーなどはサイズにも恵まれ、高いポテンシャルを感じさせるボランチだが、下部組織からチェルシーで育ちながら、なかなかトップチームでプレーするチャンスを得られていない。毎年のように期限付き移籍を繰り返しているのが現状だ。

 準決勝でスペインに敗れた、イタリアのルイジ・ディ・ビアージョ監督が「我々の選手は主にセリエAでプレーしているが、スペインにはチャンピオンズリーグなど、ヨーロッパのトップレベルでプレーしている選手が何人かいる」と、経験と実績の違いを口にしていたが、同じことはイングランドにも言えるだろう。いや、むしろイタリア以上に深刻な状況にあると言えるのかもしれない。

 確かにUEFAが発表しているデータ(6月8日時点)を見ると、今大会の登録メンバーのなかでA代表でのプレー経験を持つ選手の人数は、スペインの8名、ドイツの5名に対し、イングランドは3名。しかも、そのうちふたりは、わずか1試合ずつに出場したに過ぎない。

 スペインでは、すでにチャンピオンズリーグ決勝を経験しているMFサウル・ニゲス(アトレティコ・マドリード)をはじめ、チャンピオンズリーグにも出場しているDFエクトル・ベジェリン(アーセナル)、MFマルコ・アセンシオ(レアル・マドリード)などが台頭してきているのに比べると、明らかに後れを取っている。

 もちろん、育成・強化に力を入れたからといって、毎年のように次々とタレントが現れるはずはない。スペインやドイツにしても、年代ごとに”当たり外れ”は間違いなくある。U-21ヨーロッパ選手権を例にとっても、今大会のドイツはマヌエル・ノイアー、メスト・エジルらを擁して優勝した、2009年当時のチームには見劣ったし、スペインにしてもイスコ、チアゴ・アルカンタラらを擁して優勝した、2013年当時のチームにはとても及ばなかった。

 その意味で言えば、イングランドも今後、2009年のドイツや2013年のスペインに匹敵する世代が現れるのかもしれないし、もしかすると、それは現U-20世代なのかもしれない。もう少し長い目で、イングランドに起きている変化を見ていく必要があるのだろう。

 育成・強化の充実を図りながらも、その成果を上に引き上げることの難しさを抱える。そんなイングランドがこれから先、A代表でどんな成果を残していくのだろうか。

 旧態依然とし、古臭ささえ感じられたイングランド・サッカーに見られる確かな変化。萌芽の今後に注目したい。

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