開発中の医薬品を取り扱う臨床試験関係者。南アフリカ・ソシャングベで(2016年11月30日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】個々の患者の腫瘍を標的とするオーダーメードの皮膚がん治験薬2種について、小規模の臨床試験で安全性が確認できたとする開発チームの研究報告が5日、発表された。ただ、このワクチン治験薬については、がん細胞に対する免疫反応を誘発したが、これは必ずしも治癒と同等とみなせるわけではないという。

 今回の研究では、新抗原(がん細胞にみられるDNA変異に起因する分子)をターゲットとするパーソナライズ・ワクチン2種が、世界で初めて人体に投与された。試験結果はともに英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 新抗原は人体の正常細胞には見られないため、がん療法にとって最適のターゲットになる。化学療法などの従来の治療法では、病気の細胞とともに健康な細胞も殺傷するため、患者に重い副作用が発生する。

「NeoVax」と命名されたこの世界初のワクチンについて、論文の共同執筆者で、米ダナ・ファーバーがん研究所(Dana-Farber Cancer Institute)のパトリック・オット(Patrick Ott)氏は、AFPの取材に「接種した全ての患者において、ワクチンの実行可能性、安全性と持続的な免疫原性(免疫反応の誘発)が示された」と語った。

 NeoVaxは、病気を予防する従来型のワクチンとは異なり、腫瘍摘出後のメラノーマ(悪性黒色腫)皮膚がん患者で、がんの再発を防止することを目的としている。こうした効果がNeoVaxにあると断言できるまでには、まだしばらく時間がかかりそうだ。

 研究チームは、術後のメラノーマ患者6人を対象に、NeoVaxのフェーズ1(第1相)臨床試験を実施し、その安全性などを調べた。概してメラノーマでは、24か月以内の再発が患者の半数以上にみられるが、試験後平均25か月が経過した時点で、うち4人については再発は確認できなかった。

 だが、これは決定的な結果ではない。「対象となった患者が少数であるため、4人はワクチンを接種しなくてもがんのない状態を保っていた可能性がある」と、オット氏は指摘する。

■自身の免疫系を「訓練」

 研究チームは今回、「がんの場合、患者の腫瘍は一人一人異なっているという認識を以前から持っていた」「最近の技術の進歩により、特定の患者の腫瘍を標的とするのに適した治療法を作り出すことが今や可能になりつつある」との声明を発表した。

 NeoVax治療薬には、患者の腫瘍に由来する新抗原が最大20種類含まれる。研究チームは、がんに特異的な遺伝子変異を同定して、関連する新抗原を特定するために、各患者から採取したがん細胞と正常細胞のDNAを解析した。

 そして、がん細胞への攻撃を誘発させることを目的として、これらの分子を認識するよう患者自身の免疫系は「訓練」された。

 ネイチャー誌には、パーソナライズ・ワクチンを用いた別の臨床試験でも、ワクチンの安全性と免疫反応の誘発が同様に確認されたとする2件目の論文も掲載された。この臨床試験では、メラノーマ患者13人が対象となったという。

 オランダ・ライデン大学医学センター(Leiden University Medical Centre)のコルネリス・メリエフ(Cornelis Melief)氏は、解説記事に「今回の2件の研究は、この種のアプローチの可能性を裏づけている」と記しており、「これらのワクチンの有効性を立証するため」に、より大規模な被験者グループを対象とする次段階の臨床試験の実施が求められるとした。
【翻訳編集】AFPBB News