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●乗用車よりも変化が激しい? トラック・バスの世界

日野自動車の社長に就任した下義生(しも・よしお)氏が会見を開き、同社の今後や業界の見方について質疑に応じた。電動化や自動運転など、とにかく動きの多い昨今の自動車業界だが、乗用車に比べ、トラックやバスといった商用車の世界の方が、より激しく変化しそうというのが下氏の見立て。激動の時代を乗り切るためには、独自のアライアンス構築にも積極的に取り組むという。

○幅広い経験、トヨタにも在籍

下氏はバスの設計から日野でのキャリアをスタートさせ、その後は商品の企画、開発、営業、販売といった幅広い経験を積んだ。同社が社運をかけて投入した北米専用のボンネットトラック「NAPS」ではプロジェクトリーダーを務めるなど、海外事業にも深く携わった経歴を持つ。日野の社長に就任する前は、トヨタ自動車に常務執行役員として在籍していた。

日野の社長として重視したいのは、車両の販売だけで終わらない「トータルサポート」体制の充実だという下氏。商用車は購入から買い替えまでの期間が長いので、その間も顧客のビジネスパートナーとして、しっかりと関係性を構築したいと豊富を語った。

○トヨタで感じた危機感、ビジネスモデルの転換が参考に

トヨタ時代の下氏は、コーポレート担当として、グループとしての戦略やアライアンス構築などを見ていた。そのときに感じたのは、時代の変化に対してトヨタが抱く強烈な危機感だったという。

トヨタは2016年度こそ減益決算となったものの、収益レベルは依然として高い。そんな状況でも、従来のビジネスモデルから脱却し、自前主義から仲間づくりへと舵を切ったり、クルマの電動化に力を入れ始めたりするトヨタを、下社長は「危機感の塊」と評した。その姿勢からは刺激を受けたという。

トヨタがメインとして扱っている乗用車よりも、トラックやバスといった商用車のビジネスの方が「変化が激しくなりそう」というのが下社長の見立てだ。激動の業界にあって、トヨタのように危機意識を持ち、新しいことに取り組む姿勢は日野にとっても大切になるだろう。下社長はどのような「変化」を想定し、その変化をいかに乗り切っていく考えなのだろうか。

●先進技術を軸とするアライアンス構築

○物流業界の課題と直結する商用車の変化

商用車に訪れる変化は、物流業界の課題と密接に関連している。「モノを運んで欲しい」という需要はなくならないどころか増えていく見通しである一方、モノを運ぶ側では人材不足が進行していく。このズレが大きくなっていくことこそ、商用車業界に訪れる変化だと下社長は定義した。

このズレを埋めるための1つの方策として、下社長はアライアンスの構築に意欲を示す。日野はトヨタから50.1%の出資を受けているので、現在もトヨタのアライアンスの一員ではあるのだが、時代の変化に対応するため、独自のアライアンス構築を進める可能性も示唆した。仲間づくりの軸になるのは「先進技術」。新しい技術に単独で対応するのは難しいし、トヨタに学んでいるだけでもダメというのが下社長の考えだ。

物流業界の課題解決に役立ちそうな先進技術が自動運転だ。ドライバー不足の影響もあり、商用車の世界では自動運転の活用が進みそうな情勢。日野は2016年5月、「自動走行・高度運転支援に向けたITS技術」の共同開発でいすゞ自動車と合意済みだ。高速道路におけるトラックの隊列走行については、実証試験に向けて計画通りに進めているとのことだった。

もう1つ、物流業界で解決が待たれるのは、いわゆる「ラストワンマイル」の問題だ。幹線道路の物流を効率化する一方で、玄関まで荷物を届ける最後の1マイルに対し、メーカーとしてはどのような解決策を提示できるのか。下社長は、この課題に現行の商品群で貢献するのは難しいとの見方を示しつつ、今はトヨタの商用車部門であるCVカンパニーと連携し、物流を俯瞰して見るスタディーを始めたところであり、この課題については、グループ全体として解決策を探っていきたいとした。

○電動化に対する考え方は

先進技術といえば、商用車の電動化に関する取り組みも見逃せない。下社長は「商用車は顧客にとって道具」であるため、電動化を進めるにしても「いかにコストを抑えるかが重要」との認識を示した。小型バスを電気自動車(EV)化したり、大型バスを燃料電池車(FCV)にしたりする方向性も検討しているそうだが、安く作れなければ商用車メーカーとしてはビジネスにならない。このコスト負担を減らす意味でも、仲間づくりが重要になると下社長は指摘した。

時代の変化に対するトヨタの危機感を目の当たりにし、さらに変化の激しくなりそうな商用車業界に戻った下社長。トヨタに比べ、日野はアライアンス構築に関する経験が不足していると認める同氏だが、先進技術について思いを同じくするメーカーとは、積極的に手を組む姿勢を示していた。日野が今後、どのような企業と提携を結ぶのかに注目したい。