専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第112回

 ゴルフって、気の持ちようで状況がいかようにも変化するスポーツと言えます。

 昔、芹澤信雄プロが「ティーショットでチョロしたときは、先にアプローチしたと思えばいい」とテレビで言っていました。これは、名言ですよね。

 同様のことを考えてみると、今の時分は蒸し暑い日が続きますが、こういうときは関東にいながら「沖縄に来たんだぁ〜」と思えばいいのです。さらに暑くなったら、「バリ島でゴルフをしている」と思えば、すごく楽しいじゃないですか。炎天下の埼玉県と思うからいけないわけで、昔行ったバリ島でのゴルフもこんな感じだったな、と思い出しましょう。


何事も前向きに考えて苦しい状況から逃れたいものですが...

 となれば、冬の寒い時期は手がかじかんでしょうがない。そういうときは、「スコットランドに来てゴルフをしている」と思えば、飛行機代が浮いて楽しいですよ。雑草だらけの河川敷でプレーするときなんかは、「小樽カントリー倶楽部の旧コースに来た」と思うと、俄然目の前の景色が変わって見えます。

 実際、小樽CCの旧コースでラウンドしたことがありますけど、関東圏の河川敷コースの空も、どんよりと曇った日なんて、まさに小樽の空そのもの。クローバーの雑草もいとおしく感じます。

 とまあ、このようにゴルフは視点を変えて、都合よく解釈したほうが何かと具合がいいのです。この”ご都合主義”のラウンドは、コースだけでなく、プレー状況なども自分の都合のいい方向に持っていけます。

 例えば、ラウンド中に突然お腹が痛くなって、トイレに行きたくなったとしましょう。でも、トイレのあるお茶屋まではまだ遠い。

 さあ、あなたならどうします?

 こういうときは、過去、試合中に便意が急に襲ってきてトイレに駆け込んだが、間一髪間に合わずに漏らしてしまった某選手のことを思い出しましょう。その方は、トイレの目前でかなりの大物を排出したようで、その後のプレーは晴れているにもかかわらず、なぜか合羽を着てプレーしたんだと。合掌……お悔やみ申し上げます。

 それに引き替え、アマチュアの便意なんて軽いものです。試合じゃないので、カートを借りて「ちょっとトイレに行ってくるわ。1ホールやらないからよろしく」てな感じでいいんですから。

 そんな余裕がない場合でも、ギャラリーなんていませんから、林の中にボールを探しにいくふりをして、事を致せばいいのです。ただこれは、決して勧めているわけではありませんよ。あくまで仕方のない場合の、緊急回避措置として言っているのです。

 あと、滅多にないのですが、人間関係が険悪になったりするときがありますよね。なかなかオーケーしないとか、打つときに後方線上に立たれて気になる、あるいはパットのライン上の先に仁王立ちして目障りとか。はたまた、余計なアドバイスをされたり、カンに障るようなことを言われたり……。

 ゴルフはメンタルなスポーツですから、そんなちょっとしたことで崩れてしまいます。その結果、同伴者に対する嫌悪感が生まれてしまうのですが、そういうときは政権にいじめられて、出会い系バーに足繁く通った前川さんを思い出しましょう。

 世の中には、貧困に苦しむ人がいっぱいいるじゃないですか。我々はゴルフができるだけでも幸せ、と思えばいいのです。

 そして、我々がいつも直面している”大叩き問題”。これも、気の持ちようでいかようにもなります。

「叩く」というのは、個々によってそのスコアは違ってきますが、自分の平均スコアよりも10以上もオーバーしてしまうと、どんよりした気分となり、パニック寸前ですよね。

 そういうときは、奮起しようなどと思わずに、むしろ「これも定め」と、己の運命を受け入れたほうがいいと思います。

 心安らかに、石川啄木の歌でももじってみてはいかがでしょうか。

「打てども、打てども、我がスコアよくならざり、じっと手を見る」

 なんかグッときませんか。続いてはこちら。

「東海の名門倶楽部の白砂に、我泣き濡れて、球と戯むる」

 石川啄木は天才歌人と言われた人ですが、若くして病に倒れて亡くなっています。歌集も出していますが、全国区の歌人として認められたのは亡くなってからです。

 ゴルフでいっぱい叩いたとき、私はみんなにこう言います。

「あぁ〜、ゴルフでよかった。これが実際の人生だったら、一大事だよ。今日は厄払いの日なんだから、これでいい」

 人生は小さなトラブルが出ている間は、大きなトラブルはあまり顔を出しません。ゴルフで大叩きしたぐらいでの厄なら、大いに結構。帰りは休み休み、居眠り運転しないようにして帰ろう。それでいいのです。

 そして、最後になりましたが、ゴルフは何事も謙虚に、淡々と、礼儀正しく、節度を持って、スコアに一喜一憂せずに臨みたいです。

 その思いを見事に体現しているのは、宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の詩ですよね。冒頭だけ記します。

「雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ 慾ハナク 決シテ瞋(怒)ラズ イツモシヅカニワラッテヰル(中略)ミンナニデクノボートヨバレ ホメラレモセズ クニモサレズ サウイフモノニ ワタシハナリタイ」

 実に素晴らしい人生訓じゃないですか。そもそもこの詩を発表して売ろうなんて、これっぽっちも考えてなかったところが、宮沢賢治の素晴らしいところです。

 というのも、宮沢賢治が亡くなって、一周忌に親族が集まって彼の遺品を整理していました。そのときに、賢治が日頃使っていた手帳が公開されます。実はその手帳の裏表紙に、この詩が書かれていたのです。つまり、賢治は自分の戒め、自分の生きる指針として、常日頃、この詩を読んでいたのです。

 どうです? ゴルフで叩くとか、喧嘩するとか、う○こが漏れそうになるとか、ほんとちっぽけなことですよね。

 少しは向上心があるなら、これからは宮沢賢治を見習って、ラウンド後にはその日の反省を込めた一文でも手帳の裏に書きとめておきましょう。

「今期ワースト117。デクノボーニナル」とかね。

 まあ、なんぼすごいことを書いても、亡くなってから遺稿集として出版されることはないですから、ご心配なく。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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