外国人スパイを警告するポスター Reuters/AFLO

写真拡大

 この5月と6月、相次いで中国での日本人拘束の情報が報じられた。5月下旬には海南省三亜市と山東省煙台市で、ともに温泉掘削作業のための地質調査を行っていた千葉県の地質調査会社の社員ら計6人が中国の治安当局によって身柄を拘束されたことが判明した。

 両市には、それぞれ3人ずつが3月下旬に現地入り。出張予定は1週間ほどだったが、4月初旬に突然、連絡が取れない状態になった。北京の日本大使館や駐広州日本総領事館から外務省への連絡で、6人が治安当局に拘束され取り調べを受けていることが分かったのは、拘束から約2か月後の5月下旬だった。

 そのほぼ1週間後、遼寧省大連付近で、50代から60代の男性1人が5月下旬に拘束されていたことが、中国側から駐瀋陽日本総領事館に通告された。中国側はこの男性を「スパイ容疑」で取り調べていることを明らかにしたという。

 前者の6人の場合、中国側は拘束の理由には触れていないが、後者の男性の場合は「スパイ容疑」と明言している。そのため、この男性は軍事管轄地域に侵入するなど“現行犯”で身柄を拘束された可能性が高いとみられる。

 いずれも、中国人民解放軍の軍事情報絡みで拘束されているのは間違いない。中国軍は大連がある遼寧省と海南省について、「スパイ潜入の要警戒地域」として神経を尖らせていたからだ。

 まず、大連は中国初の航空母艦や、4月に進水したばかりの国産初の空母が建造された軍港都市だ。実は、中国人民解放軍総参謀部傘下の軍機関紙「中国国防報」は昨年12月28日付で、「国産空母の高画質の画像流出には我慢がならない」と題する署名記事を第1面に掲載し、軍事情報の漏えいに強い警戒感を露わにしていた。

 しかも、記事は「日本の共同通信社が高解像度の写真をホームページ上に掲載しているが、その写真の撮影者は同社の関係者である」としたうえで、「国産空母は中国の重要な兵器であり、まさにいま建造中だ。関係のない人員が不法に撮影することは厳禁である。極めて安全に保全しなければならないところで、日本の人員がこのような高解像度の画像を撮影することができたことに警鐘を鳴らさざるを得ない」と激しく非難している。

 続けて、「軍事機密の保護は国家の安全や政権の安定、戦争の勝敗にも関わってくる。歴史上、機密漏えいによって、極めて重大な打撃を受けた例はよく見られる」と指摘。

 そのうえで、なんと120年以上も前の日清戦争(1894〜1995年)の例を出して、日本軍のスパイが清軍の兵員輸送船の出発時間を探ったり、日本人の大陸浪人が多数、上陸し、勝手に各地の地理や資源を測定したり、社会調査を行うなどの情報操作を展開したことで清軍敗北の大きな原因となったとの分析を披露しているのだ。

 同紙は大連ばかりでなく、海南省三亜で起こり、2016年に公判が終了した機密漏えい事件にも言及。中国初の空母「遼寧」など中国海軍艦船が多数寄港し、海軍基地もある三亜港では「犯罪分子が軍港付近で軍艦の写真を多数盗撮したり、軍艦の寄港情報を詳細に記録し、90回以上にわたって、インターネットで海外に流出。そのなかには軍事機密も含まれていた」ことを明らかにしている。

 記事では「『今日、国家の情報を売り渡せば、明日にはこれらの情報によって、同胞が殺される事態も起こりかねない』というスパイ防止・機密保護の意識を持たなければならない」と主張し、機密保持の重要性を強く訴えかけている。

 このように、この記事は今回の2件の日本人スパイ拘束事件と強い関連性があるといえよう。

●文/相馬勝(ジャーナリスト)

※SAPIO2017年8月号