「.JP」や「.UK」などの国ごとに与えられるトップレベルドメイン(TLD)は、インターネットが社会インフラにまで発達した現代社会においては国の共有財産と言っても過言ではない重要な資源です。しかし、スロバキアでは国別コードTLDが、詐欺的な手法で政府から一民間企業に奪い取られたそうです。

The story of stolen Slovak national Top Level Domain .SK

https://medium.com/@Oskar456/stolen-sk-domain-717e070f6735

1993年にチェコスロバキアからチェコとスロバキアが分離独立して以降、チェコスロバキアに割り当てられていた国別コードTLDの「.CS」は廃止され、チェコには「.CZ」が、スロバキアには「.SK」が割り当てられることになりました。「.CZ」はチェコのドメイン管理団体のCZ.NICが管理することになり、CZ.NICはセキュリティと信頼性を高めながらオープンソースソフトを開発するなど、チェコ国内のインターネットインフラの整備に非常に貢献しているとチェコ人のTurris Omniaさんは自国のTLD管理の実態を誇らしいものだと述べています。

しかし、かつて国を共有していた隣国スロバキアの「.SK」ドメインの管理については、「不幸なことだ」とOmniaさんは述べています。その理由は、1999年に起こった「詐欺」の結果、一民間企業が国別TLDの「.SK」を独占して、権限を乱用的に使って不当に利益を得ているからだと言います。

「.SK」がスロバキアに割り当てられると、スロバキア政府は学術ネットワークを運営するSANETに国別コードTLDの「.SK」の管理業務を委託しました。そして、SANETはスロバキアのComenius大学の数学・物理学部に拠点を構える非営利団体「EUnet Slovakia」というグループにドメインの管理・運用を委託することになりました。ICANNのレジストリは以下の様な形でした。



1995年になると、「.SK」を運営していたComenius大学にいた一部のグループが、すでに存在していた「Softwarehouse,sro」という会社を、「EUnet Slovakia.sro」という名前に変更しました。「.sro」とは有限責任の形態の企業に付記されるコードだとのこと。つまり、EUnet Slovakiaとは無関係の企業の名前を、EUnet Slovakiaと関連性があるかのように仕立て上げたというわけです。さらに、Comenius大学の敷地内に小さな賃貸の部屋を借りて会社の所在地を移すことで、EUnet Slovakia.sroはEUnet Slovakiaと郵便番号を共有することに成功しました。

そして、1999年にこの一部のグループは、ICANNに対して「.SK」の管理団体から「Comnetius University(Comenius大学)」の記載を削除し、「EUnet Slovakia」の後ろに「sro」を追加してほしいという、記名上の修正を申し出ました。ICANNは住所変更に伴う小さな変更として申し出を受け入れました。これが、非営利団体の「EUnet Slovakia」から、民間企業が「.SK」を奪い取った瞬間でした。

このICANNの管理するデータの変更からわずか9日後の1999年8月19日に、EUnet Slovakia.sroはアメリカ国内に所在がある企業「Euroweb International USA」に売却されることになり、「.SK」の詐取計画は完成しました。

「.SK」は政府の管理下から離れると、2002年にはドメイン登録料が設定され無償利用が停止され、この状況は2017年まで変わることなく継続しているとのこと。



2004年にスロバキア政府の管理下から「.SK」が奪われたことが公になると、政府関係機関の電気通信省がICANNに書簡を送って事態の打開を求めました。ICANNは交渉する職員を派遣してスロバキア国内のドメインを管理する協会の設立を提案したとのこと。そして、2004年2月2日から政府・Euroweb International USA・協会の3者による交渉が開始すると、Euroweb International USAは圧力に屈してスロバキア政府へのEUnet Slovakia.sro売却に応じ、「.SK」を管理するための企業SK-NICが設立されることになりました。

しかし、Omniaさんによると最近、SK-NICが「.SK」をCentralNic,Ltdというイギリス企業に売却しようとする動きがあるとのこと。CentralNic,Ltdはラオスに割り当てられた「.LA」という国別TLDを「世界初の都市TLD」としてロサンゼルス市に、またラテンアメリカ向けTLDとして、本来の価格よりもはるかに高い価格で「.LA」関連のドメインを販売する企業であることから、「.SK」がスロバキア市民の手から奪われるという懸念を抱いているそうです。

スロバキアの中には「.SK」を国民の手に取り戻すべく政府に訴える声も上がっているそうですが、スロバキア政府のコンサルタントのPatrik Krauspe氏が元SK-NICのマネージングディレクターであることからうかがい知れるとおり、スロバキア政府とSK-NICとの強い関係性から、先行きは不透明だそうです。