ハーバード大学メモリアルホール(資料写真、出所:)


「それでは、最優秀チームの多田さんから一言お願いします」

「素晴らしい仲間たちとこのような賞をいただくことができて大変嬉しく思います。今後とも頑張っていきますので、引き続きなにとぞよろしくお願い申し上げます」

 6月19日の最終ピッチ大会(事業計画コンテスト)を迎えた「BRAVEアクセラレーションプログラム」で、私の率いた「内視鏡画像人工知能診断プロジェクト」チームは起業前部門で最優秀賞を獲得することができました。

 内視鏡検査に人工知能を組み合わせて、早期診断と、病変見落としの防止を図り、世界の内視鏡医療の精度向上に貢献するというコンセプトが高く評価され、同時に、ビジネスプランも現実的で有望と判断されるところまでブラッシュアップできたからではないかと思っています。

 これで、2カ月間にわたる国内最大のアクセラレーションプログラム「BRAVE 2017 Spring」は終了しました。

 受賞が決まり頭が半ば真っ白になりつつある中、大勢の方から祝福を受けて、続く懇親会に参加している中、自分自身にとってこれからが本番だとの思いを強くしました。また、このプログラムを通じて知り合った数々の医療ベンチャー経営者を思い浮かべ、医療ベンチャーを志す人がもっと増えれば現場から医療は変わるのではないかと考えていました。

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アクセラレーションプログラムとは

「BRAVEアクセラレーションプログラム」とは、「革新的科学技術の実用・事業化を目指すチームに対しその夢を実現するための知識・ノウハウと人的ネットワークを提供する」プログラムです(運営は独立系ベンチャーキャピタルのBeyond Next Venturesと複数の事業会社)。

 プログラムでは、各チームにマッチングされた担当メンターからアドバイを受け、経営者候補メンバーと最終ピッチ大会に向けたプレゼン資料を作成し、ビジネスモデルの詳細な検討を行います。

 また、1泊2日の研修では、医療ベンチャー経営者、弁護士、ベンチャーキャピタル経営者などによる講義を受け、事業計画書の書き方や、事業戦略、知財戦略、資金調達などについて学びます。

 アイデアと技術はあるけれどどうやってビジネスにしていけばいいのか分からない技術者や研究者たちにとって、事業計画書の策定とビジネスモデルの構築方法を身に着けられる、きわめて実践的なプログラムとなっています。

 現在、「BRAVE 2017 Winter」の募集中ですので、イノベーション、起業に関心のある技術者や研究者の方は、まず試しに参加されてみてはいかがでしょうか。リクルートグループの「TECH LAB PAAK」が運営する「MEET SPAAC」という新規事業開発プログラムもあります。

(前回のコラム「活を入れられたので人工知能診断で世界を目指します」も参照ください)

20年前に感じた東大とハーバード大学の違い

 本プログラムへの参加チームは、前回より大幅に増えたとはいえ全部で66ですから、まだまだ多いとは言えません。それでも多くの研究者たちが、自分のやりたいと思う、そして理想とするビジョンに向けて、一歩を踏み出そうとしている(もしくは進めている)事実を目の当たりにして、私は大いに刺激を受けました。

 大学生活やサラリーマン生活で、指導者や上司の指示に従うことに慣れてしまうと、「自分で何かやりたい」という気持ちがだんだんと失われていきます。指示されたことをきっちりクリアしていく能力はもちろん大切です。しかし、やりたいことを自分で決めて、実践している人たちもたくさんいるのです。

 受賞後、私が20年前に東大医学部の学生だったとき、ハーバード大学との短期交換留学に参加したことを思い出しました。

 ハーバード大に留学してとても印象的だった出来事があります。あるとき、同じグループのハーバード大生が、週に一度の指導教授とのミーティングを欠席しました。

 その学生が欠席した理由を、教授はこう説明してくれました。「彼女は、今日は見学したい手術があるとのことなので、彼女とのミーティングは別に行う。だから今日のミーティングは私と君だけだ」。教授の「こんなことは当たり前」とでも言いたげな口ぶりに、私は驚いたものです

 ちなみに、私がハーバード大への留学中に100回以上言われたセリフは、 "It’s up to you." (それはあなた次第です)でした。実際にその言葉通り、ハーバード大では私が希望したこと、例えば「救命救急室を見学したい」と言えばすぐに手配して見学させてくれました。

 日本の大学ではシステム上できないことが多々ありますので、同じことを日本の学生に勧めることはできませんが、ハーバード大の学生は、東大の学生以上よりも、もっと自分の意思を表明し、自分がやりたいことを行っていました。

フロンティアへのチャレンジがイノベーションを生む

 私たちが開発を進めている、消化器内視鏡専門医の知識と経験を乗せた人工知能は、今後、医者にとって必須となってくるものであり、そもそも私自身が欲しいものなので、需要は間違いなくあると確信しています。

 現時点では、マーケットとしてはほぼゼロの状態です。リスクはたくさんありますし、誰も成功は保証してくれません。しかし、フロンティアにチャレンジすることによってしか、イノベーションを生み出すはできません。現場から日本が変わることを信じて、チャレンジしていきたいと思います。

筆者:多田 智裕