胃酸抑制効果の高い薬剤「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」の長期利用で死亡リスクが高まるとの発表

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代表的な胃酸分泌抑制薬の「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」について、死亡率を高めるリスクがあるという研究結果が発表されました。

Risk of death among users of Proton Pump Inhibitors: a longitudinal observational cohort study of United States veterans | BMJ Open

http://bmjopen.bmj.com/content/7/6/e015735

Proton pump inhibitor (PPI) heartburn drugs linked to increased risk of death - CBS News

http://www.cbsnews.com/news/heartburn-drugs-proton-pump-inhibitors-ppi-risks-prilosec-nexium-prevacid/

Popular heartburn drugs linked to higher death risk | EurekAlert! Science News

https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-07/wuso-phd062917.php

PPIは胃の細胞プロトンポンプに作用して胃酸の分泌を抑制する薬で、同じ胃酸分泌抑制作用を持つH2ブロッカーよりも抑制時間が長いとされています。アメリカではPPIの購入には処方箋が必要でしたが、処方箋なしで薬局のカウンターで販売可能に規制緩和された結果、Prilosec、Nexium、 Protonix、Zegeridなどの名前で広く販売されています。なおNexiumが処方箋によって処方された数だけでも2015年に1500万回を記録している通り、PPIは非常にポピュラーな薬剤としてアメリカで利用されています。

そのPPIについて、ワシントン大学の研究者が、退役軍人の薬剤処方記録を活用することで副作用などの健康リスクを調べています。研究では、2006年10月から2008年9月までの期間にPPIを処方された27万5933人の患者とともにH2ブロッカーを処方された患者7万3355人について、服用後から5年間に死亡した割合に関する追跡調査が行われました。その結果、H2ブロッカーを服用した患者に比べてPPIを服用した患者の死亡リスクが25%高いことがわかったとのこと。

論文共同執筆者のアル・アリー博士は、「結果は非常に明確で、驚きの結果になりました。特に、データをあらゆる期間で区切って分析しても、PPIの使用と死亡リスクとの間には一貫して関係性がありました」と述べています。また、服用から30日の条件では、PPIとH2ブロッカーの対照群では死亡リスクに有意な差は見られませんでしたが、1年から2年間、薬を継続的に服用していた人は、死亡リスクがPPI使用者がH2ブロッカー使用者に比べて50%高いことも分かったとのこと。PPIを長期間にわたって服用することで死亡リスクが高まる傾向が確認されたというわけです。

PPIが特定の疾病と関係性があるとする研究は他にもあり、腎臓病、腹部の感染症、心臓病、肺炎、認知症を引き起こすリスクが指摘されています。仮に、指摘されているすべての現象にPPIが関係しているとするならば、死亡リスクが高まることは当然だとアリ博士は考えています。



もっとも、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のフォラサデ・メイ博士は、今回の研究は関連性のみを示す観察研究である点には注意が必要だと述べています。死亡リスクが高まる具体的な原因を突き止めて、PPIが健康に与えるより詳しいリスクを明らかにする必要性があるとのこと。

アリ博士も、今回の研究から直ちにPPIを服用中の患者が薬の使用をやめるべきではないと述べています。PPIが胃酸を抑える効果は高いことから、PPIの必要性が高い場面では服用するのは推奨されるべきですが、むやみに服用することは避けるべきだと述べています。患者と医師はメリット・デメリットを理解した上で、服用すべきかどうかを検討すべきだとしています。