医者を好み、医者と付き合い、結婚することを目指す。

そんな女性たちを、通称「ドクターラバー」と言う。

日系証券会社の一般職として働く野々村かすみ(28)も、そのひとり。

彼女たちはどんな風に医者と出会い、恋に落ち、そして生涯の伴侶として選ばれてゆくのだろうか?

医者とドクターラバーたちの恋模様は、一筋縄ではいかないようだ。

慈恵医大出身のドクター2人とお食事会をしたかすみと、同期の里帆。かすみは、爽やかで甘いルックスの内科医・城之内からデートに誘われるも、病院からの呼び出しでほとんど話せないままさよならをすることに。気の張ったデートを終えて一瞬浮かんだのは、同期の営業マン・タケルの顔だった…。




毎週月曜は、女たちのデート報告会


「つまり、消化不良だったのね」

里帆の率直な言葉に、かすみは弱々しくうなずくしかなかった。

先週金曜日の城之内とのデート。開始から30分もしないうちに、彼は病院から呼び出され、戻ってしまった。

「呼び出しは、内科医にはついてまわるからね。覚悟しないとね」

里帆の言葉に、かすみは相槌を打つ。

彼の時間を、丸ごともらえるわけではない。そういうもどかしささえも、ドクターラバーは「逆に楽しい」くらいの超ポジティブスタンスで、愛してゆかねばならないのだ。

「でも、城之内さんは素敵な方よ。内科医は外科医に比べて少し地味な人が多い分、性格も研究博士みたいに変わったタイプもいるから」

里帆は顔をしかめてつぶやく。目下狙い中の浅見か、または別の誰かを思い出しているのだろうか。

「とりあえず、埋め合わせの連絡が来るまで待ちましょ」

もっとガンガン攻めなさい、と里帆に言われなかったことに何となくほっとしながら、かすみはうなずいた。



「なんか浮かない顔してない?うまい焼き鳥でも食べに行くか」

帰り際、会社のエントランスでたまたま会った同期のタケルに誘われ、かすみは『博多かわ屋 神田店』に来ていた。

「かわ屋って、福岡ではすごく有名で。博多っ子の俺としては、待望の東京オープンだよ」

「この名物のかわ焼きは、絶対に食べた方がいいって。女って、鳥皮好きでしょ?」

いかにも証券の営業マンらしい速いテンポで、タケルは話を進める。

口数の多くないかすみにとって、軽快に話してくれるタケルは、今日もとても心地がよかった。

気まずいムードに、なるまでは。


かすみの胸をえぐった、タケルの言葉とは…


年収や社会的地位で男を選ぶ女って、ダサくない?


「この前のランチで話してた医者とのデート、どうだったの?」

串焼きもあらかた食べ終わった頃、タケルはふいに聞いてきた。

かすみは何となく、身構える。

「そんなに会話はできなかったの。病院からの呼び出しで、すぐ戻ったから」

当たり障りのない回答をすると、タケルは「ふーん」と黙り込む。

お酒が強いながらほんのり頬が赤くなっているところを見ると、結構酔っている様子だ。

「なんで、そこまで医者にこだわるの?」

タケルが少し、責めるような口調で言い放つ。

何かが始まる一歩手前の雰囲気を察し、かすみはかわすように答えた。

「別に、こだわっていないよ。たまたまそういう出会いが多いだけ」

はは、そんなわけないじゃん、とタケルが乾いたように笑う。

「正直さ」

タケルは頬杖をつきながら、横に座るかすみをじろりと見る。

「年収や社会的地位で男を選ぶ女って、ダサくない?」

鋭く、切り捨てるような物言いに、かすみは胸をえぐられたような感覚になる。

「男の格で、自分の価値を決めてる女、って感じがするんだよな」

刃で刺すようにたたみかける言葉に、かすみは何も言うことができない。

「そっか…」と絞り出すのが、やっとだった。

かすみの表情を見てタケルも我に返ったのか、少し気まずそうな顔つきになる。

「…あ、私、新宿に寄って買わなきゃいけないものがあって。そろそろ行こうかな」

そう言ってかすみは、タケルの方を見ないようにしながらバッグを取り出す。

「OK。お会計で」と手を挙げたタケルの表情は、見えなかった。



―自分自身には、価値がない女。

かすみは頭の中で、タケルの言葉をずっと反すうしていた。

本当は買い物なんてなかったが、早くあの場から立ち去らないと、涙がこぼれそうだった。

とりあえず新宿に来たからには、とNEWoManの『ル パン ドゥ ジョエル・ロブション』で明日の朝食用のパンを買う。

―代々木まで、歩いて帰ろうかな。

ふらりと外に出ながらふと南口の方を見ると、LUMINEの広告が目に飛び込んでくる。

“自分に夢中になれないと、誰かを真っすぐ愛せない。”

タケルの言葉と重なり、再び、胸が締めつけられるように痛む。

―東京に来て、6年目。私自身には、今何があるんだろう…。


ドクターラバーが医者にこだわる、その理由。


ドクターラバー・里帆が語る、他に替えがたい医者の魅力


里帆です。

かすみから聞きました。先日タケルに『かわ屋』で言われたこと。

ちょっと、さすがにひどすぎませんか?

証券の営業マンって気のいい一方で、女性への理想の価値観は、重要文化財並みに古いところがあります。

年収や社会的地位で男を選ぶ女が、ダサい?
自分自身には価値がない女?

自分たちは仲間内で、結婚相手を選ぶときに「やっぱり若くて美人がいいよな」って言っているのに。

年齢と外見で女の価値を決める人種に限って、年収や職業で男を評価する女に嫌悪感を抱いたりするんですよね。

せめて、同じ穴のムジナだってことには、気づいてほしいです。

「なんで、そこまで医者にこだわるの?」

タケルはかすみにそう聞いたそうですが、そんなことは私たちドクターラバーからすれば、明々白々です。

実際、長く一緒に生活することを考えると、そのメリットは計り知れませんが、私がドクターにこだわる理由は主に2つあります。

まずは、「高収入×高安定性」。

私は、ドクターは最強の国家資格職だと思っています。収入は生涯安定しているし、定年もないようなもの。

大学病院の場合、基本給はそんなに高くないですが、非常勤アルバイトで収入はかなり増えます。(時給が約1万円とか…!)

同じ国家資格職でも、例えば弁護士の場合、所属する事務所でかなり給料が変動します。今は弁護士の数もだいぶ飽和していて、個人で稼ぐのも大変そう…。

年収だけで比較すれば、外資系や経営者の方がよっぽど高いこともあります。けれど、彼らは常に、クビや倒産のリスクもはらんでいます。

ドクターは少なくとも、大学病院なら800〜1,000万円、地方の病院だと約1,200万円という年収をずっとキープできる。

白金に豪邸を建てるほどのぜいたくができるわけではないけれど、一生困らない、余裕のある暮らし。

豪華客船のタイタニックに乗るか、安全性の高い新幹線に乗るのか。

結婚という人生の長い旅路で、どちらを選ぶかなんて言わずもがなですよね。

そして2つ目の理由は、ドクターは「家柄と頭の良さ」がともに保証されている、という点です。

学費の高い私大に通えるドクターの家柄が良いことは、言うまでもありませんね。

それに実は、医学部は偏差値に応じて学費が安くなる傾向にあり、例えば慶應大学は学費がさほど高くないのです。国立はもっと安いです。

難関大に入れるということはかなりの高等教育を受けているわけですから、そういう環境を用意できる時点で、やはり良いお家柄なのです。

また、医学部に受かっているのだから、当然頭の良さは担保されています。

加えて、受験勉強しかり、研究しかり…専門性高くつきつめられる方々なので、飽きたと言って仕事を辞める心配もほとんどありません。

これだけ最良の条件がそろっている、ドクター。その蜜の味を知ってしまった私は、ここから抜け出すことはできなそうです。

あなたも「ドクターラバーになりたい」と、心が傾いてきたのではないですか…?

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医者が好むアプローチ法を徹底研究せよ!!