呼ぶ方にも、呼ばれる方にもお作法があるホームパーティー。

人格やマナーが試される場でもあるが、その正解を知らぬ者も多い。

都内の様々な会に参加し、その累計回数は約100回にものぼる29歳の沙耶加が、多角的な視点でホームパーティーを評論してゆく。

これまでは手土産問題や、Uber EATSの使い方を考えた。さて、今回は?




手土産は、地方の名産品で


-沙耶加さん、来週土曜、目黒にある鈴木さん宅で“地方グルメ会”が開催されるのですが、ご都合いかがでしょうか?

木曜日の昼下がり。仕事の合間に携帯をチェックすると、広告代理店を経営する高田からLINEが入っていた。

“地方グルメ会”という見慣れぬ文字に思わず手が止まり、返信を迷っていると高田から続けてLINEがきた。

-ルールは簡単。各自、1万円相当の“地方の名産品”を持参して下さい。当日はシェフが腕をふるうため”素材のまま”で構いません。デザートでもOKです。

-ただし、都内のデパートなどで購入するのはルール違反となります。必ず、地方から直接取り寄せて下さい。

ここまでLINEを読み、高田が誘ってくれたこの会に強い興味を持った。 地方の名産品を持参する会...なかなか面白そうだ。

しかも高田は顔が広く、彼の周りにいる人たちの顔ぶれを考えても、華やかな会になることは間違いない。

-お誘い、ありがとうございます。楽しみにしております♪

そう返信を打ちながらも、既にいくつかの地方の名産品が思い浮かぶ。

何を持参すべきか迷いながらも、楽しんでいる自分がいた。


各々が持ってきた地方の名産品とは?そこに集う、気になる顔ぶれ


日本全国から集った、名産品


本日の会場である鈴木邸は、目黒の高級住宅街の一角に佇んでいた。

西欧風の扉を開けると、素敵なご夫婦が出迎えてくれた。

家に一歩入ると吹き抜けが気持ちの良い玄関ホール、そして通されたリビングの奥には大きなアイランドキッチンがあり、既に4名ほどがその周りに集っていた。

「沙耶加ちゃん、何を持ってきたの?」

ビールを片手に、既に顔が少し赤くなっている高田が奥から顔を出す。

そっと、自分が持ってきたダンボール箱を差し出した。

「わぁ、 立派な野菜だね!これ、京野菜かな?」

家主の鈴木さんが、ダンボールの中に入っている聖護院かぶや賀茂なすを、興味津々の顔つきで見ている。

何を持っていくべきか散々悩んだ挙句、以前から個人的に取り寄せている京都の野菜を持参した。

通常個人配送はしてくれないのだが、農家の方に直談判し、定期的に野菜を送ってもらっているのだ。

「野菜もいいねぇ。他の人たちがメイン系ばかりだったから、良いバランスが取れるよ。」

高田がニコニコしながら、他の人たちが持参した物を指差す。それらの名産品を見て、思わず感嘆の声が漏れた。




「なんて立派な越前ガニ...」

その隣にある発泡スチロールの箱を開けると、これまた立派な北海道産のエゾアワビがゴロゴロ入っている。

「これは僕が持ってきたんだよ。」

高田が誇らしげな顔をしている。毎年冬になると福井からカニを取り寄せているらしく、今回も無理を言って大きな物を譲ってもらったそうだ。

そうこうしているうちに続々とゲストが集い始めた。もちろん、片手には地方の名産品を抱えながら。

勝浦港で取れたマグロに、飛騨牛のヒレ1kg。山形の佐藤錦のさくらんぼに、愛媛県宇和島市にある、こうの果樹園の無添加オレンジジュース。福岡に販売会社がある 『美巣』の 、純度100%のツバメの巣など。

それぞれのゲストの個性を反映するような、バラエティーに富んだ地方の名産品が、テーブルの上にズラリと並べられた。

そこには、レストランにも負けないくらい豪華な食材が揃っていた。

圧巻の光景に見惚れていた時、奥にひっそりと佇んでいたシェフがパチンと手を鳴らした。

「さて、ショータイムに参りますか。」


シェフの手によって地方の名産品はどう調理される?


家主である鈴木さんが、ホームパーティーを開催する時によく呼んでいるというシェフは、慣れた手つきで次々と素材を調理し始めた。

「素材が良いから、今回はそこまで手を加えずに、シンプルに行こうかな。」




ゲストは、福井県の『梵 超吟 純米大吟醸』を飲みながらシェフが料理する手順を見つめたり、ゲスト同士で楽しそうに話をしている。

各々が持ってきた肉類や魚は炭火焼や刺身として提供され、締めにパスタが振る舞われた。

「はぁ。なんと贅沢な時間なのかしら。」

余った魚のアラで出汁を取ったスープを飲みながら、幸せな気分に浸らずにはいられなかった。


常日頃からネットワークを築いている者だけが手に入れられる物


「東京だけではなくて、日本各地に美味しいものがたくさんあるんですね。」

「そうだよ。隠れた名産品も多いし、奥が深いよ。何よりこうやって、みんなで持ち寄って食べるのが楽しいよね。定期的に開催してるから、また沙耶加ちゃんも参加しなよ。」

「嬉しい!ありがとうございます。」

最近Instagramでよく見かけ、気になっていた福島県いわき市の『ゼリーのイエ』の宝石のような可愛らしいゼリーを食べながら高田と話している時に、ふと気がついたことがある。

ここに集っている人たちは、普段から“お取り寄せ”をしている人たちなのだ。

地方の名産品は、物によっては手に入らない物もある。予約数ヶ月待ちということもあるし、そもそも市場に出回らない物や、一般客相手には販売してくれない店もある。

しかし彼らは常日頃から自分が気に入った地方の名産品の生産者、及び販売会社とのネットワークを築きあげているため、顧客リストの上位に入っているのだろう。

つまり、ホームパーティーという特別な機会でなくても、日常的にお取り寄せを楽しんでいるのだ。

「せっかく食べるなら、少しくらい高くても美味しいものを食べたいからね。」

振り返ると、家主の鈴木さんが立っていた。

ホームパーティーは、普段から、どのような生活を送っているのかも露呈される場であると 、改めて感じた。

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いつお開きにする?タイミングが計りずらい、退散時間のお作法

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Vol.1:会話を盛り上げるだけでは不十分。見られている、家主の品格
Vol.2:ビジネスは、ホムパで始まっている。ゲストを有機的に繋ぐ主催者の手腕とは
Vol.3:ホムパの手土産の「真の正解」を、ご存知ですか?
Vol.4:ホムパの新常識!合理的な男は◯◯を使いこなす