注目映画『ブランカとギター弾き』長谷井監督に聞く 旅を通じて教わったこと、伝えたいこと

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この夏公開となる、日本人で初めてヴェネチア国際映画祭からの全額出資を得て製作された長谷井宏紀監督の第一回監督作品『ブランカとギター弾き』。映画製作のインスピレーションソースとして旅は欠かせない要素だという監督に、旅をする理由や旅から教わったことについてお話しを伺いました。

メインカット:(C)2015-ALL Rights Reserved Dorje Film

引き寄せられるように、世界各地のスラム街へ

映画のロケ地となったのは、フィリピン。マニラのスラム街を駆けまわるストリートキッズの様子から物語ははじまります。その風土とともに“貧困と子供たち”というユニバーサルなテーマを、シンプルかつ希望を持って描いていることから、世界各地の映画祭では審査員や観客から多くの賞賛の声が上がりました。

30代前半まで、さまざまな国のスラム街に赴いていたという長谷井監督。「もともと、この世界ってどういうことなんだろうとか、この社会って一体なんなんだろう、とか。小さい頃から差別とか、そういうものに自分の中でちょっと敏感なところがあって…。貧困とか貧しさっていうことに対して、ずっと疑問を抱いていたのを自分の中で知りにいくために、旅を続けてきた感じです」(長谷井監督)

お金があれば、大概のものが手に入る現代。しかし、孤児であふれる地域を訪れるうちに、それなら母親を買うということは可能なのか?という疑問が生まれ、それが『ブランカとギター弾き』のコンセプトとなったそう。

旅をすることで得られるかけがえのないもの

日本でお金を稼いでは、海外のスラム街を体感しに出かける。監督を旅へとつき動かしていたものは、何だったのでしょうか。

「僕にとって、20代は、ちょっと難しさを感じていた時代だったというか。いまでこそユルいねとか、適当だね、とかみんなに言われているんです(笑)フィリピンのスモーキーマウンテンに出会う前は、ここまでラクな感じではなかった。日本に居ても、居心地があまり良くない感じがして、本当に押し出されるように旅に行っていた気がします。旅に出ると、視点が増える。気持ちが楽になるんですよね」(長谷井監督)

当時はアートギャラリーの運営などもしていたそうで、アートブックの製作の一環で短編映画を撮ったところ作品が賞を獲得、映画の道を歩みはじめることに。

世界各地を訪ねて、培われた気質と生まれた作品

世界を旅しながら写真家としても活動し、2009年にはフィリピンでストリートキッズを題材にした短編映画「GODOG」を撮影。その作品が、映画界の巨匠であるエミール・クストリッツア監督によるセルビアの映画祭でグランプリを受賞しました。

今では「すっかりラテン気質が身についた(笑)」という監督。というのも、長年に渡り足を運んできたフィリピンは、スペイン植民地時代のなごりからか、ラテン気質が漂っている国なのだとか。

また、エミール・クストリッツアに認められた縁で、監督が長く滞在していたというセルビア共和国も、東欧ではラテン的な雰囲気を持った国といわれているそう。

そうこうしてパリで書かれた脚本は、フィリピンで撮影され、編集作業は韓国で。監督だけでなく、実は今回の映画そのものも、濃密な旅の空気をまとっているのでした。

監督流の旅のスタイルとヨーロッパでの出来事

監督の旅のスタイルの軸は、なんといっても「ひたすら歩くこと」なのだそう。ヨーロッパを旅した際、ロマの村に泊まった時にも、歩いた先にはすてきなエピソードが待っていました。

「マケドニアのロマの村では、歩いているとみんながついてくる(笑)最終的に、耳の聞こえない子の家に泊めてもらうことになって。家に着いたら家族の人全員、耳が聞こえなかった。それでも、なんとか身ぶり手ぶりで話して。そしてロマの音楽を探していると言ったら、カセットテープが売っている場所に連れて行ってくれました。彼らは音を手で感じて、これすごくいいよ、と。しかも本当にいい音楽だったので驚きました」(長谷井監督)

『ブランカとギター弾き』でも、実際に目の見えないギター弾きのピーターがピーター役として出演しています。他界してしまったものの、ピーターは監督にとって大切な友人のひとり。“目に視える”で判断しない彼をはじめ、「感じる、ということに純粋になっている人たち」に敬意を抱いている監督。「耳の聞こえない子の話というのも、いつか映画にしてみたいんです」(長谷井監督)

旅と映画、長谷井監督が抱くこれからへの想い

「たくさんのスラム街を見た結果、(知りたいと思っていた差別や貧しさという点で)構造としてはどこの国も変わらないんだな、と思いました。ただスラムでいえば、やっぱり医療と教育はとても重要だな、とわかったので。この先、この映画を通じても、何かできたら最高だな、と思っています」(長谷井監督)

貧しさの中にあってもたくましく生きぬく人々の暮らしを見つめ、時にはその中に溶け込んで、ともに過ごす。『ブランカとギター弾き』には、監督らしい旅の在り方から芽生えた熱い想いがぎゅっと詰まっています。旅のすばらしさを再確認できるような、夏の思い出に大切な人と観に行きたい一本です。

抽選で10組20名様をご招待!

『ブランカとギター弾き』の公開を記念して、ことりっぷweb読者の中から抽選で10組20名様を日本ユニセフ協会×『ブランカとギター弾き』特別試写会へご招待します。

○日本ユニセフ協会×『ブランカとギター弾き』特別試写会
[日時] 2017年7月24日(月)17:30開場/18:00開会
[場所] ユニセフハウス(東京都港区高輪4-6-12 JR品川駅から徒歩7分)
[ゲスト]長谷井宏紀監督ほか

[当日の流れ]
18:00〜18:10 開会、ご挨拶
18:10〜18:35 登壇イベント
18:35〜19:55 上映
19:55〜20:15 Q&A

○応募締切:2017年7月11日(火)
※当選者の発表は当選通知のメール(当選者の方のみに送信)を持って、発表とさせていただきます。

○STAFF&CAST
[監督・脚本]長谷井宏紀
[出演]サイデル・ガブテロ、ピータ・ミラリ、ジョマル・ビスヨ、レイモンド・カマチョ
[配給]トランスフォーマー
7月29日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
[公式サイト]

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