7月4日、北朝鮮は初めてICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験に成功したと発表した。このタイミングでの発射に、都議選で大敗した自民・安倍政権への“当てつけ”なのではという声もあがっている。

 朝鮮中央テレビは、「大陸間弾道ロケット 火星14型験発射成功。朝鮮民主主義人民共和国は核兵器とともに世界のいかなる地域も打撃できる」と伝え、ICBM発射を承認する金正恩委員長の直筆資料も公開された。

 北朝鮮の1カ月ぶりとなるミサイル発射に安倍総理は「北朝鮮がまたもや弾道ミサイルの発射を強行した。度重なる国際社会の警告を無視するもの。そして、今回のミサイル発射はさらに脅威が増したことを明確に示すものである」とコメントしている。

 ロシアのモスクワでは現地時間3日、中露首脳会談が行われ、アメリカは4日に独立記念日を迎えた。米・トランプ大統領はTwitterに、「金正恩委員長は他にましなことはできないのか 韓国や日本がこれ以上我慢するとは思えない 中国は北朝鮮に対して重い措置をとり――この無意味な行為を今回限りで終わらせてくれるだろう」と投稿した。

 また、先週、アメリカを訪れトランプ大統領と北朝鮮の挑発に対する連携を確認したばかりの韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、緊急のNSC(国家安全保障会議)を開催。5日には、ドイツで行われるG20サミットに向け出発し、各国と北朝鮮問題について話し合う予定だ。日本・アメリカ・韓国の3カ国による首脳会談も予定されており、北朝鮮の狙いはこの会談で議題にのぼることになる北朝鮮への厳しい対応に対する牽制とみられている。

■今回のミサイルは米・アラスカの一部に届く

 北朝鮮が「ICBM発射成功」と発表したことに対して、アメリカは「ICBMではなく中距離弾道ミサイルだった」という声明を出した。

 軍事アナリストで静岡県立大学特任教授の小川和久氏は、この声明について「大陸間弾道ミサイルだと最初から言ってしまうと引っ込みがつかなくなり、なんらかのアクションを起こさなければいけなくなる。中距離弾道ミサイルだと言っておけば行動を起こさずに済むというところはあったかもしれない」との見方を示す。

 また、「今回のミサイルは米・アラスカの一部に届く」としたうえで、「(北朝鮮が)アメリカに届くような打ち方をしたら許さないのは間違いない。ただ、北朝鮮は『周りの国に危険を及ぼさない打ち方をした』と火星12の時も今回も言っている。遠くに飛ばす能力はあるけど近くに落として周りの国に危険を及ぼさないことが、ロフテッド軌道で発射した理由だとしている」と説明する。

 一方で、北朝鮮の狙いについてデイリーNKジャパン編集長の高英起(コウ・ヨンギ)氏は、「金正恩氏が求めているのは、自分たちが核保有国であることを認めてくれということ。今の国際軍事的な視点から言えば、核保有国を攻めることはできない。金正恩氏からすれば『守りを完璧に固めたい』ということ」と分析した。

 核保有国であると国際社会に認めさせるという点で、北朝鮮はインドをモデルにしていると小川氏は指摘する。「インドは核拡散防止条約に入らずに世界から非難されながらも核保有国になった。今やインドが核保有国だから非難されることはなく、むしろ平和国家のイメージすらある。北朝鮮はインドのような立場になれると思っていて、アメリカがそれを受け入れてくれるのが一番良い。アメリカもトランプ政権になってから、2月と4月に『国家安全保障会議からアメリカの専門家に対して、北朝鮮に対しての選択肢を提案してくれ』と言い、その中に軍事的選択肢もあれば、北朝鮮を核保有国として認める選択肢まで出せと言っている。もちろん、北朝鮮もそれを分かって阿吽の呼吸で動いているところはある。アメリカの神経を逆なでることは避けている」という。

 また、北朝鮮が核保有国として認められることは第1段階だという。「外国から攻められないように、抑止力として大きな軍事力を持たなければならない。茨城県ほどのGDPの国が23%を軍事費に費やしている。核保有国という立場が認められれば、核が抑止力になって攻められにくくなり、大きな軍隊をもつ必要がなくなり負担が軽くなる。そして、経済建設を成功させようというのが第2段階。これは戦後のアメリカがやったモデル」と、北朝鮮の考えを示した。

 一方で、北朝鮮がアラスカへミサイルを撃つ可能性については、「今回のミサイルを一番アメリカ本土に近いアラスカに撃つためには、もっと低い軌道であることが必要。ただ、核で反撃されるので、使ったら一回で終わり。絶対使わないということが前提」と否定した。

■アメリカの独立記念日“7月4日”に発射した狙いとは

 北朝鮮は今年に入ってこれまで10回ミサイル発射を行ったが、初めて「特別重大報道をする」と事前通告を行った。これについて、小川氏は「アナウンサーを見てほしい」と指摘する。「放送に出ていたのはトップの女性アナウンサーで、国家の慶事の際に出てくる人。ピンクのチマチョゴリもめでたいということ」と説明する。また、金正日氏が亡くなったときに出てきたのも、このアナウンサーだ。

 小川氏は加えて、「北朝鮮は今年になってアメリカとチキンゲームをしてきた。第1ラウンドは北朝鮮が先にハンドルを切って、4月13日以降に態度を柔らかくし、アメリカと話し合いをする流れに動いている。今回、アメリカの独立記念日に発射したのは、理性的な健全な核保有国としての態度、信頼してもらえるような国としての態度を、アメリカにアピールするために計画的に行った」と、ミサイル発射の狙いを分析した。

 さらに、高氏は「北朝鮮は韓国も日本も眼中にない」と話す。「7月4日は65年前に北朝鮮と韓国の間で初めて共同声明が出された日。この声明は失敗してしまったが、未だに南北融和宣言の1つではある。この日に実験をするということは、北朝鮮が韓国を相手にしていないということ。自分たちが相手にしているのはアメリカだけで、日本の安倍政権への“当てつけ”も眼中にない。よく勘違いされるのは、『日本海に撃った=日本に撃った』というイメージだが、北朝鮮からしたら領海。北朝鮮は昔から一番敵対している対象と戦う。他の国はどうでもいいと考えている」と、説明した。

 今後の北朝鮮問題における注目点として、小川氏は「日本は、アメリカ、中国、韓国、北朝鮮それぞれの国との距離が、縮まったり離れたりしているという前提で語る傾向がある。しかし、安全保障に関しては日米というひとかたまりで、中国・ロシア・北朝鮮と向き合う必要がある。日本としては自分の国は自分で守るということを言う人がいるが、ステップとしては日米同盟をとことん研究して使いきって初めて次の展望が出る。日本は日米同盟を活用しながら、平和主義とか非核三原則に相応しい営みをして北朝鮮と向き合うことができれば、日本に対して態度を変えてくる可能性がある」と語った。

 高氏は「仮に金正恩氏が核を放棄するといっても、完全に放棄されるまでに5年、10年、もっとかかるかもしれない。最も問題なのは、北朝鮮を過小評価して『北朝鮮に核、ミサイルはできないだろう』と思っている間にここまできてしまったこと。正直タイムリミットは近づいていると思う。北朝鮮が完全な核武装国家になるのをなんとか抑えるために、各首脳が軍事的アクションも含めて決断しなければいけない」と述べた。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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