後継機が発売されると、旧モデルは注目されなくなりがち。とはいえ、新旧の差が少ない製品も多く、旧モデルが実はお買い得というケースも少なくない。そこで、人気の入門機、キヤノン EOS Kiss X9iとX8iを比較する。前編では画質や操作性をチェックしたが、後編では連写性能や価格などをチェック。前回に引き続き、カメラ初心者的視点で吉森信哉さん、プロカメラマンの視点で永山昌克さんの評価を交え、両機を評価する。

↑EOS Kissシリーズは、2003年の初代、EOS Kiss Digital登場からダントツの人気を誇る入門機。機能はもちろん、価格面での注目度も高い。それだけに前モデルと最新モデルの価格差も気になる

 

【連写性能比較】連写速度以上に連続撮影枚数の影響が大

EOS Kiss X9iの連写は、最高6コマ/秒となっているが、ライブビュー撮影時やAIサーボAF設定時は最高約4.5コマ/秒となる。そのため、動いている被写体を追いながら撮る場合には、X8iとの実質的な連写速度の差はほとんどないといえる。ただ、連続撮影枚数がX9iのほうが多く、特に「RAW+JPEG/ラージファイン」で撮影した場合は、X8iの約6枚に対してX9iでは約19枚と差が大きい。X8iが1秒強しか高速連写できないのに対して、X9iでは4秒強の高速連写が可能だ。

 

下の写真のように、動く被写体を連続して撮影するなら、X9iが圧倒的に有利だ。「連写速度自体は5コマと6コマで気にならない程度の差といえますが、連続撮影枚数の違いは気になります。ただX8iでも、JPEG/ラージファインなら約180 枚(X9iは約190枚)撮れるので、X8iで連写する場合は、JPEGでの撮影がおすすめです」(吉森)。「X9iはライブビューでの連写もAFが速いため有利。AFエリアもファインダー撮影時よりも広くなるので、被写体を捉えるのも容易です」(永山)。

↑両機とも「RAW+JPEGラージファイン」で★の位置に先頭車両が来た時点で連写開始。先頭車両がフレームアウトする直前のカットを掲載した

 

↑X9iは先頭車両がフレームアウトするまで途切れることなく連写でき、15コマ目でフレームアウトした(14コマ目を掲載)。X8iは、スペックどおり6コマ目以後、急激に連写速度が遅くなって7コマ目にはフレームアウトしてしまった(6コマ目を掲載)

 

【吉森信哉さんの連写性能の10段階評価】

EOS Kiss X9i・10/10
EOS Kiss X8i・7/10

連写性能の結果は気になっていたが、やはりこの差は大きい。といってもJPEGで撮れば差は比較的少なくなる。AEB連写などを行うぶんには、X8iでも十分な性能を持つ。

 

【永山昌克さんの連写性能の10段階評価】

EOS Kiss X9i・10/10
EOS Kiss X8i・6/10

RAWで撮影してPCで仕上げるケースが多いなら、迷わずX9iを選びたい。連続で約19コマ撮れれば、スポーツ撮影を含めて動きモノ撮影をストレスなく楽しめる。

 

【価格比較】X8iを選んでアクセサリーに投資もアリ

EOS Kiss X9i発売から約1か月が経過した2017年5月初旬現在のダブルズームキットの大手量販店の価格は、13万4220円。X8iのダブルズームキットは9万7740円なので、3万6000円以上X8iが安い。今後、この差は少しづつ縮んでいくものと思われるが、少なくとも現時点ではX8iがかなりお買い得になっている。ちなみに3万6000円あると、外付けフラッシュの430EX III-RTなどを購入してもお釣りがくる計算。予算を少し足せば、EF-S 10~18mm F4.5-5.6 IS STMなどの交換レンズを購入することもできる。撮影する被写体にもよるが、もし現時点でX9iを買う予算があるなら、あえてX8iを選択して、こうしたアクセサリーを揃えていくのもよさそうだ。

 

「動くものを撮るのでなければ、X8iの価格はかなり魅力的になっています。特に風景や花の撮影などでは、使用するレンズで写真に差がつくケースが多いので、X8iを購入して、広角ズームレンズやマクロレンズなどに予算を振ったほうが、撮影がより楽しくなるケースも多いのではないかと思います」(吉森)。

↑EF-S 10〜18mm F4.5-5.6 IS STM(参考価格:3万6790 円)。16mm相当の超広角域をカバーする広角ズームレンズ。ダブルズームキットと組み合わせることで、超広角16mm相当から超望遠400mm相当までの撮影が楽しめる

 

↑スピードライト430EX III-RT(参考価格/3万1590 円)。コンパクトでガイドナンバー43という大光量な外付けフラッシュ。バウンス撮影や電波通信式のワイヤレス発光機能に対応し、凝ったライティングも可能だ。

 

【吉森信哉さんのコスパの10段階評価】

EOS Kiss X9i・7/10
EOS Kiss X8i・9/10

限られた予算でボディもレンズもといった場合はX8i がおすすめ。ダブルズームでも多くの被写体に対応できるが、広角ズームがあれば、スナップなども変化が出せる。

 

【永山昌克さんのコスパの10段階評価】

EOS Kiss X9i・8/10
EOS Kiss X8i・8/10

X8iの低価格も魅力的だが、X9iの性能は上位機種のEOS 80Dに近い。その点でX9iが高価だとは感じない。今後、多少価格がこなれてきたら、かなりお買い得だと思う。

 

コスパを重視するなら、冬のボーナス時期以降が狙い目

EOS Kiss X9iの価格に関しては、まだ発売から時間が経っておらず、ほぼ初値に近い状態だ。そのため、カメラが今すぐ必要というのでなければ、少し時間が経過して価格がこなれるのを待ってみるのも1つの方法といえる。そこで、EOS Kiss X8iが過去にたどった価格変化から、X9iの今後の価格動向を予想してみたい。ここでは、「価格.com」に掲載されている、EOS Kiss X8iダブルズームキットの平均価格グラフを参考にする。

↑グラフの青い線が価格情報サイト「価格.com」でのX8iの平均価格(赤い線は最安値)だ。多少上下しているものの、およそ半年で1万円前後下がっているのがわかる。(2017年5月10日時点)

 

まず、X8iは2015年の4月に発売されたが、そのときの初値は13万833円となっている。ちなみにこれは、EOS Kiss X9iダブルズームキットの価格.comでの初値、13万850円とほぼ同じだ。

 

最初の約半年で2万円強値下がりし、その後、半年ごとに1万円前後価格が下がっている。結果として、発売から2年を経過した現在では8万円台となっているのだ。人気機種ということもあり、極端な値下げは期待できないと思われるが、この図を参考にする限り、最初の半年は値下がり率が高く、様子を見てもよさそう。とすると、今年の10月後半以後が買い時ということになる。具体的な価格としては、10万円台半ば程度の価格も期待できそうだ。これなら、今から資金を溜めたり、冬のボーナスを当て込んだりすることで、購入しやすくなるのではないだろうか? その後半年ごとに1万円ずつ下がる可能性は否定できないが、そのぶんは、カメラを使いこなすことで“元が取れる”だけの機能や性能を持ったカメラだ。

 

【総合評価】動体はX9iがベターだが、風景はX8iでもマル

EOS Kiss X9iは、45点のAF測距点やISO25600までの常用感度などの性能面では、上位モデルのEOS 80Dに肩を並べるハイスペックな初級機。一方、X8iはダブルズームキットで9万円台という価格が魅力だ。「X8iは、現在見ても初級モデルとしては基本性能が高め。まだまだ現役で使えるカメラです。ただ、今回チェックした結果のように、連写性能はX9iには勝てません。動きモノを数多く撮るかどうかで判断するのがいいと思います」(吉森)。

 

「実機を触ってみて感じたのは、X9iのAFの使いやすさです。ファインダー撮影にしても、ライブビュー撮影にしてもAFが高速でカバーエリアも広く、フレーミングが楽でテンポよく撮影できます。吉森さんも語っているように、風景などをじっくりと撮影する場合は、X8iでも遜色なく撮影を楽しむことができますね」(永山)。

 

【吉森信哉さんの総合評価】

EOS Kiss X9i・44/50
EOS Kiss X8i・39/50

動く被写体を撮るか撮らないかが選択の分かれ目。花や風景、テーブルフォトなど、じっくり撮るタイプの被写体が中心なら、X8iのコスパの高さは見逃せない。

 

【永山昌克さんの総合評価】

EOS Kiss X9i・47/50
EOS Kiss X8i・38/50

コスパの面ではX8iが魅力的だが、上位モデルに近い性能のX9iは、価格なりの価値がある1台だと思う。金額的にキビシイ場合は、価格が落ち着くのを待ってみよう。

 

【EOS Kiss X9i がオススメなのはこんな人】

●子どもやスポーツを撮る人
●ライブビューを多用する人
●動画撮影を楽しみたい人

 

【EOS Kiss X8i がオススメなのはこんな人】

●風景などの撮影が中心の人
●レンズも買い足したい人
●低価格に一眼を揃えたい人

 

写真・解説/河野弘道 協力/価格.com