2015年からコーチとして活躍していた(写真は埼玉西武ライオンズ公式サイトより)

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プロ野球、埼玉西武ライオンズの森慎二コーチが、42歳の若さで急死した。亡くなる3日前までチームに帯同しており、あまりにも突然の訃報に衝撃が広がった。

当初、メディアは「多臓器不全により死去」と報じていたが、東京スポーツが森コーチの父親の話として「溶連菌の感染による敗血症」が死因と伝えた。

通常は咽頭炎や扁桃炎を起こす病原体だが

森コーチが体調不良を訴えたのは、2017年6月25日。そのまま福岡市内の病院に入院し、27日にはチームから休養が発表されたが、翌28日に亡くなった。西武の辻発彦監督は6月29日付のサンケイスポーツに「(体調が)悪いのは知っていたけど、俺しか知らなかった」とコメントしており、森コーチが無理をしていたかもしれないが、それにしても急すぎる。

7月4日付の東スポ電子版に、森コーチの父親が「本人の死因に関しては、毒性の強い溶連菌の感染による敗血症でした」と明かしている。明確な死因については球団も発表しておらず、今のところこの報道だけだ。

シオノギ製薬のウェブサイトに、溶連菌の詳しい説明がある。正式名称は「溶血性連鎖球菌」で、「一般にはA群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)による感染症を溶連菌感染症として理解されているといってもよい」という。主に咽頭炎や扁桃炎といった、のどに感染する病原体だ。国立感染症研究所や東京都感染症情報センターによると、A群溶血性連鎖球菌咽頭炎の場合、例年7月、つまり今の時期がピークで、学童期の子どもに最も多くみられる。2〜5日の潜伏期を経て突然発熱し、全身の倦怠感や咽頭痛により発症、しばしばおう吐を伴う。まれに重症化し、全身に赤い発疹が現れる「猩紅熱(しょうこうねつ)」になることがある。ただし通常、熱は3〜5日以内に下がり、1週間以内に症状は治まる。

ところがA群溶血性連鎖球菌は、別の病気を引き起こすことがある。「劇症型溶血性連鎖球菌感染症」と呼ばれ、日本では毎年100〜200人の患者が確認されているが、「このうち約30%が死亡しており、きわめて致死率の高い感染症」(国立感染症研究所)なのだ。しかも突如発病し、数十時間以内に死に至ることがあるから、恐ろしい。

「人食いバクテリア」と呼ばれることも

劇症型溶血性連鎖球菌感染症はしばしば、メディアが「人食いバクテリア」と報じることがある。東京都感染症情報センターのサイトの説明を見ると、劇症型溶血性連鎖球菌感染症患者の傷口に直接触れるなどして感染、菌が血液や筋肉、肺といった通常は細菌が存在しない組織に侵入して起きる。

初期症状は発熱や悪寒、体の痛みや腫れが起き、その後症状が一気に進行。筋肉周辺組織が壊死を起こしたり、血圧低下や多臓器不全からショック状態となり、発病後数十時間で死亡するケースも少なくない。

森コーチがこの症状だったかは分からない。ただ当てはまりそうな部分はある。

東京都では2017年1月以降、ほぼ毎週のように1人以上の患者が出ている。第22週(5月29日〜6月4日)は、5人の患者が報告された。年齢は40代以降で増え始め、70代以上が最多だ。東京都では2015、16年と続けて年間60人以上の患者が出ており、増加傾向にある。なお国立感染症研究所の「感染症発生動向調査」を見ると2016年は、全国で485人と過去最も多かった。

2017年2月9日付「ウィズニュース」には、劇症型溶血性連鎖球菌感染症の経験談が掲載されていた。始まりは足にできた水ぶくれで、アルコール消毒したものの治らず、1週間ほどして急激な悪寒に襲われたという。体温は41度まで上がり、「翌朝になると、高熱から意識はもうろう。病院に運ばれて、すぐさま入院が決まりました。全身に腫れが広がったほか、高熱にうなされました。腎臓や肝臓にも炎症が現れて、多臓器不全になりかけました」。

幸い点滴で注入した抗生物質が効いて、4日後に高熱がさがったものの、3週間以上入院したという。