「親御さんとコミュニケーションを取りながら、読み聞かせできるような絵本を目指しました」(吉田)、「漫画とか絵本とか区別せずに楽しめる作品」(江口)

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 『伝染るんです。』『殴るぞ』『ぷりぷり県』『おかゆネコ』など、ギャグ漫画家として数々の作品を送り出している漫画家・吉田戦車が、2冊目となる絵本『走れ! みかんのかわ』を上梓。あるものを追いかけて走るみかんが、リンゴやバナナ、馬などと遭遇し、最後に出会ったのは……? 発売を記念して開催された、漫画家・江口寿史とのトークショーを完全レポート!

――07年に漫画家の伊藤理佐さんとご結婚されて、10年にはお子様が誕生。子育てをしていくなかで生まれたのが、吉田さん一冊目の絵本となる『あかちゃん もってる』(河出書房新社)でした。2冊めの絵本に取り組もうと思ったきっかけは?

吉田:ビッグコミックスピリッツで連載していた『おかゆネコ』が16年に連載終了したんですよ。ちょっとゆっくりできるかなと思っていたんですけど、そしたらすかさず、一冊目の絵本『あかちゃん もってる』の担当編集者が「ヒマですよね。描いてください」って連絡してきて……。

江口:「ヒマですよね」って、敏腕ですね(笑)。制作にはどれくらい時間をかけたんですか?

吉田:一日で見開き一枚(2ページ)が限界で。20見開きなので、のべ20日間くらいかかりました。一冊目は子供が好きそうだなと思ってこってりとしたアクリル絵の具を使って描いたんですが、これが難しくて難しくて……。今回は、墨インクに水彩絵の具で着彩しました。普段の漫画と同じ作業なので、その点は楽でしたね。また、一冊目の絵本は『いないないばあ』みたいな、一番対象年齢の低い絵本を目指していたんですが、今回は親御さんとコミュニケーションを取りながら、読み聞かせできるような絵本を目指しました。

江口:お子さんの成長によって、描きたいものも変わってきたんですね。

吉田:自分の子供はもちろん、まわりの子供たちが何を面白がるか、読者を間近に感じられたこともあって、ゲラゲラ笑ってほしいという気持ちで描きました。

江口:前回のは「絵本」ということを強く意識されてたように感じましたけど、今回の『走れ! みかんのかわ』は、気負いのない感じで描かれてましたね。いつも漫画で描いているような、ちょっとシュールな吉田戦車らしさも出ているし。漫画とか絵本とか区別せずに楽しめる作品。吉田さんは昔からチャレンジングですよね。俳句もギャグにしちゃうし(一枚の絵と俳句で日常世界を詠む、吉田の新ジャンル作品『エハイク』シリーズ)。それがすべて面白いのでいつも嫉妬しています。やりやがるな!って(笑)。

吉田:江口さんは絵本のオファーとかないんですか? たくさんありそうですが……。

江口:ええ、まあ、あるんですけど……ご承知の通り、描かないもんですから全部立ち消えて……(笑)。描いてみたいって気持ちはあるんですけどね。それこそ娘が1、2歳の頃は「擬音」とか「擬態語」とかをおしえる絵本とか、おもしろそうだなあって考えたり。でもそういうのはもうきっと誰かやってるかな。

◆ふたりが注目する絵本作家は?

――お二人が、描き手として注目されている、おもしろいと思っている絵本作品、作家についてお聞かせください。

江口:僕が娘と一緒に読んで好きだったのは、林明子さん。子供の体型の描き方がリアルでたまらない。自分が子供を描くときも、参考にしてましたね。リアルで、かつかわいい絵が好きなんです。『こんとあき』とかね。

吉田:お話自体は、結構恐いんですよね。死を予感させるような、シュールな夢のような世界。うちの子も大好きです。

江口:あとは五味太郎さん。できあがったものを見ると簡単なように見えるんだけど、誰にも真似できない発想なんですよね。400冊も出してるって、すごいなあ。