目から考えるアンチエイジング

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2017年6月2日から4日にかけて、17回目となる日本抗加齢医学会総会が開催された。

今期で同学会理事長の任期を終える慶應義塾大学医学部眼科学教室の坪田一男教授は、3日の理事長提言に登壇し、自身の専門領域を踏まえ、目から考えるアンチエイジングとして光が生体に与える影響を語った。

疾患の発症リスクにも影響するブルーライト

「光環境とアンチエイジング医学」と題した提言の中でまず坪田教授が指摘したのは、運動や食べ物と並びQOLに大きな影響を与える要素が「光」であるという点だ。その例として挙げられたのは、「ブルーライト」と「バイオレットライト」という異なる波長の2つの光だった。

ブルーライトとは波長が380〜400ナノメートルの光で、紫外線にもっとも近く、目の網膜まで到達するほどの強いエネルギーを持っている。坪田教授はブルーライトが単に目に負担をかけドライアイなどを招く有害な光ではなく、サーカディアンリズム(体内時計)を決めるために不可欠な光であり、「昼間にブルーライトがなければ昼だと認識できなくなってしまう」という。しかし、このことが現代では問題になる。

「夜を明るくする白い光もブルーライトから生み出されています。夜にブルーライトを受けるとサーカディアンリズムが崩れ、うつや高血圧、肥満、糖尿病、がんの発症リスクが高まることもわかっているのです」

マウスを対象とした実験では、摂取カロリーは同じにかかわらず、夜にブルーライトを受けたマウスと受けていないマウスを比較すると、前者が肥満になることも確認しているという。

「現代社会は肥満率が高いと言われますが、カロリー摂取量はそれほど上がっていません。世の中がどんどん明るくなり、ブルーライトを受ける機会が増えていることと何らかの関係があるのではないかと考えています」

もちろん、夜のブルーライトは不眠にもつながる。典型的な例は、夜にベッドの中で見るスマートフォンだ。画面を近づけるほどブルーライトの影響が強くなり、脳が覚醒し眠気が薄れてしまう。眠気が薄れればさらにスマホを見てしまい、脳は覚醒し......という悪循環に陥る。夜ブルーライトを受けると記憶力が低下するという研究結果も発表されているようだ。

では、夜のブルーライトを遮断するとどうなるのだろうか。坪田教授らの臨床試験によるとブルーライトを100〜95%遮断するレンズを使用したメガネを夜かけることで、HDL(善玉)コレステロール値が上昇しLDL(悪玉)コレステロール値が低下したほか、血糖値が低下することが確認されている。坪田教授は、光環境からアプローチする糖尿病治療も実現するのではないかと期待感を表した。

紫の光が近視を止める?

ブルーライトよりも波長が短い360〜400ナノメートルで屋外環境光のみに含まれるのが「バイオレットライト」だ。その名の通り、太陽光を分解した際に目で見える限界にある紫色の光だ。

青と紫で似たようなものだから、やはりブルーライトと同じく健康に悪影響を与える光かと思いきや、坪田教授によるとバイオレットライトは近視を抑制する効果があることが示唆されているという。その効果については、2016年12月に坪田教授らが発表しており、耳にした人もいるかもしれない。

坪田教授がバイオレットライトに着目したのは、重度の近視である「高度近視」の治療として、目の中に挿入する「眼内レンズ」を装着した患者で、近視の進行に差が出ていたことがきっかけだった。レンズの性能や使用条件などには差異がないにもかかわらず、なぜ進行度が異なるのか検証したところ、レンズがバイオレットライトを通しているか、通していないかという違いがあることがわかったのだ。

「外でよく遊ぶ子どもが近視になりにくいことは、近視の研究者にはよく知られていたことでした。両親が近視でも外で2時間以上遊んでいる子どもは近視になりにくいというデータもありましたが、その理由はわかっていなかったのです」

さらに人為的に近視にしたヒヨコを対象にバイオレットライトの有無と近視抑制の関係を調査したところ、バイオレットライトを浴びていたヒヨコでは「Early growth response 1(EGR1)」という近視を抑制する遺伝子が活性化していることが確認されたという。

「近視は眼球が異常成長して長く伸び、膜にピントを合わせづらくなってしまった状態ですが、EGR1は異常成長を抑制し近視の進行を抑えてくれるのです」

近視は単に視力が低下するだけでなく、失明原因になることも知られている。日本では今のところ失明要因の第5位だが、2050年には第1位になるという推計もあり、坪田教授は危機感を感じていると話す。

「中国では50年前まで20%に過ぎなかった近視人口が80%近くまで増加しているデータや、日本でも高校卒業時に約80%が近視となっているとするデータがあり、目の異常のパンデミックが起きていると言っても過言ではありません。バイオレットライトの研究を通じ、近視の抑制に少しでも貢献できればと考えています」

第17回日本抗加齢医学会総会
理事長提言「光環境とアンチエイジング医学」
※敬称略
座長:齋藤英胤(慶應義塾大学大学院薬学研究科薬物治療学)
演者:坪田一男(慶應義塾大学医学部眼科学教室)

医師・専門家が監修「Aging Style」