ここまで4ゴール。今季からサガン鳥栖のキャプテンとなった豊田陽平

「どこかに甘さがあったと思います」

 サガン鳥栖のエースである豊田陽平(32歳)は少し顔をしかめ、2017シーズン前半戦を振り返っている。折り返しの17節時点で、6勝5敗6分の10位。勝ち越しているだけに、悪くはない。ただ、目標としてきた優勝戦線に食い下がるには、後半戦に向け、微調整は必要になるだろう。

「悪くはないけど、勝ちきれていない試合が多いですね。油断なのか、集中力の欠如なのか。ホームではいいけど、アウェーで勝てていない」

 ホームのベストアメニティスタジアムでは6勝1敗1分と圧倒的な強さを示すも、アウェーでは0勝4敗5分とひとつも勝てず、大きく負け越している。ホームの強さは優位点だろうが、内弁慶とも言える。

「まだまだ勝利する集団になりきれていません」

 金民友の後を継いでキャプテンになった豊田は、そう言って唇を噛む。

「ジュビロ磐田戦のように、アンラッキーな終盤の失点があったり、大宮アルディージャ戦のように、攻めていても決めきれずに追いつかれたり……。でも、それは不運なだけでなくて、どこかに自分たちの甘さがあって、そこに気づかないといけない。キャプテンとしては、チームがひとつになれるように束ねられるか。全員がフォア・ザ・チームを胸にピッチに立つ。それが鳥栖らしさで、継承していくべきものだと思っているので」

 今シーズン、鳥栖は大きく生まれ変わりつつある。
 
 例えば16節の浦和レッズ戦は、先発11人中、5人が新加入選手だった(ちなみに浦和は1人)。後半戦には、主力だった鎌田大地がドイツ移籍で抜け、ビクトル・イバルボは登録抹消、フランコ・スブットーニの放出も決定的だ。代わりに韓国五輪代表CB、チョン・スンヒョンの獲得を発表。さらにもう1人の日本人CBと、外国人も含めたアタッカーにも食指を動かしているようだ。

 変化は余儀なくされるだろう。マッシモ・フィッカデンティ監督が与えたプレーモデルを選手がアジャストさせ、バランスを見つけられるか。

「守備の安定がいい攻撃を作り出す」

 フィッカデンティはイタリア人監督らしく、守りのディテールにはこだわってきた。フォーメーションを相手次第で変えられる柔軟性も特長で、4-3-1-2、4-4-2、あるいは5-4-1でクローズするなど、守備に関しては厚みが出てきた。その上で、「自分たちでボールを動かし、イニシアチブを取る」という精度も徐々に上がっている。プレー回路ができる中、今までボールを受けるのを怖がっていた選手も意識を変えつつあるのだ。

 例えば右サイドバックに小林祐三が入って守備の堅牢さはかつてないものとなり、サイドに「ボールの出口」もできた。小野裕二は攻守に非凡さを見せ、原川力はプレースキッカーとして異彩を放っている。また、ユース上がりの田川亨介の走力の質の高さとボールを叩く感覚は、特筆に値するだろう。

 チームとして、殻を破りそうな気配はある。

 その一方、失われたものもある。ユン・ジョンファン監督体制のときに根付いた鳥栖イズムは、薄れつつあるだろう。例えば相手をたじろがせるようなプレスはなく、長いボールに殺到する威圧感も失われた。

「今はチームの形を作り上げているプロセスだと思うのですが、やっぱり攻撃の迫力は出したいですね」

 今シーズンもチームトップの4得点を挙げている豊田は、そう持論を口にする。豊田は2010年に鳥栖に入団し、2011年にはJ2得点王となってチームをJ1昇格に導いた。2012年から5シーズン合計(リーグ戦のみ)で83得点を記録し、これは大久保嘉人に次ぐ。ヘディングの技術はJリーグ随一だ。

「まだまだ、崩すところそのものにこだわっている部分があると思います。ボールを回すことはできるようになったんですが、状況判断の中、もっと単純にゴールを意識したプレーを全員で共有していかないと。例えば、危険なクロスボールを入れられるタイミングなら、迷わず入れるべき。まずゴールありきというか、自分を信じて、あるいは頼ってもらって、クロスを入れてほしいですね」

 豊田は後半戦に向け、臨戦態勢を整える。

「正直を言うと、自分はベテランになってきたのかな、と割り切りが出てきたなぁと思っていました。でも、いまはゴールに飢えています。こんなに得点をしたい欲求が残っていたんだな、という新鮮な感覚です」

 野心的に豊田は語る。もともと、夏場以降に得点を量産するタイプ。そのゴール数増加はチームの順位上昇に直結するはずだ。

「鳥栖でタイトルを!」

 そう志してきたストライカーは、チームがマイナーチェンジをする中、気力を高めつつある。

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