古いテクノロジーの新しい使い方がIoTのポテンシャルを変える

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古いテクノロジーの新しい使い方がIoTのポテンシャルを変える。

1990年にスイスで誕生したモバイルソフトウエア会社 Myriadグループが、同社のIoTプラットフォームである ThingStream.ioを使ったコネクテッド・バンドル Presstoを作りだした。

このデバイスはUSSD(Unstructured Supplementary Service Data)プロトコルを使って、182文字のメッセージをセルラーネットワークを介してPresstoサーバに送信する。PresstoはボタンとGSM通信、管理プラットフォームがひとつのパッケージになったものであり、これによりボタンがトリガーとなるアプリケーションの開発を行うことができる。ボタンを押せばGPS位置情報や日時、ボタンの状態などの少量の情報がアプリケーションに送られる。

 

USSDとは?

USSDプロトコルはGSM(Global system for Mobile Communications)携帯電話でサービスプロバイダとの通信に使われている。コールバックサービス(ローミング中の電話代を抑える)などのさまざまなサービスで利用され、携帯電話のマーケティング能力やインタラクティブなデータサービスを豊かなものにする。一般には携帯電話の利用可能チャージ確認の手段としてよく知られているだろう。

Myriadグループのビジネス開発副社長、Neil Hamilton氏に詳細を聞いた。

USSDはアフリカやインド、南米など、銀行口座を持たない人が多い発展途上国市場では、携帯電話を使ったモバイル送金に使用されている。このアプリケーションによって公共料金の支払いや、振込も可能にするという。Hamilton氏は次のように説明する。

「少量のデータ転送(動画や大きなファイルではなく1日あたり数キロバイト程度の転送量)を行うIoTの利用例を考えた場合、USSDは適しています。我々が実現するのは、いわゆるLP-WANでGSMに相当するものです。というのもUSSDはそれ程処理能力を必要としません。またバッテリーもそれほど消費しないことから、部品がより高くつくLTE通信を使ったものよりもデバイスを安くすることができます。」

Myriadグループは既に600以上の通信キャリアに跨るグローバルローミングネットワークを形成しており、組み込みのSIMカードを通じユーザは世界中のほぼどこからでもデータ通信を行うことができる。

「どんなデバイスメーカーにもデータの変換を行える小さなコードライブラリを効率的にお届けすることができます。モーションコントロールを搭載したセンサーの場合、USSDで送信できる形式に変換します。ここまでの話でインターネットは絡んできません。ある意味、私たちはUSSDを通してインターネット言語をだましているんです。ゲートウェイで再び情報をインターネット言語に戻して、アプリケーションへとつなぐ、といった具合に。」

 

USSDが最適なケースとは?

データ通信経路としてUSSDが特に適しているケースには、ロジスティックやトラッキングなどでの小規模で高速に移動する遠隔通信があげられると、Hamilton氏は説明する。

「それぞれが異なるエンドツーエンドな通信キャリアと契約している運輸会社があったとして、貨物がどこを行き来しているのかわかっていない場合、貨物のハートビートをどこからでも把握するのは難しいことです。我々はホールセール型の通信を購入し、GSM機能を付加することでLP-WANと競おうとしています。これは企業や通信キャリアが見落としているやり方です。これをユビキタスなものとは言いたくありませんが、移動体の遠隔通信に間違いなくぴったりなものだと言えます。」

農業や環境に携わる企業であれば、以下のような困難にぶつかるだろう。例えば、広大な農地をモニタリングしたり、特定の時間帯に交通量が増える道路や基地局のそばで農業テクノロジーソリューションが一貫性を持たなくなったりする状況などである。

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Hamilton氏は工業アプリケーションデータの経路として、USSDが話題に取り上げられるほど、さまざまなユースケースがあらわれるという。今日では多くのセンサー製造業者がセンサー・アズ・ア・サービスというモデルを模索している。もし付加価値の高いセンサー業者なのであれば多くの場合、それを他社に売って回るディストリビューターに製品を販売するだろう。

「完全にコネクテッドなデバイスが売られるようになれば、それは場所を問わず使われるようになり、誰でもセンサー業者が提供するアプリからログインして、データをアプリケーションに送れるようになるでしょう。これは人々にとって市場を変えるチャンスが巡ってくることを意味します」

Presstoボタンはもともと、コンセプトを検証するためのユースケースのデモのために設計されたものだが、これが驚くほど多くの興味を惹きつけたとHamilton氏は言う。開発者にとってはより価値が高いものだ。

「コネクテッドデバイスを管理するための非常に興味深いワークフロープラットフォームを我々はつくろうとしており、これによりモノをコネクテッドなものにしようとしている工業企業に、より付加価値が高く便利なサービスを提供することができます」

CATE LAWRENCE
[原文4]