ドンナルンマら新星輩出のミランが若き芸術家育成へ 本社ギャラリー開設がイタリアで話題

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革新的なオフィスの中に、モダンアートを紹介する「カーサ・ミラン・ギャラリー」

 ACミランは4月にシルビオ・ベルルスコーニ前会長が退き、中国人オーナーが買収する一大革命が起きた。

 今夏の移籍市場ではDFマテオ・ムサッキオ、MFハカン・チャルハノールら実力者の補強に次々と成功し、新シーズンに向けたこれまでになかった期待感を示している。

 そんな名門はピッチ外でも新たな取り組みをスタートさせている。ミラン市のフィエラにそびえ立つ革新的なオフィス「カーサ・ミラン」の中に、モダンアートを紹介する「カーサ・ミラン・ギャラリー」が最近オープンして話題を呼んでいる。

 5月25日は新進気鋭のアーティスト、オロデ・デ・オロがモザイクの技術を駆使した作品の数々をこのギャラリーに展示。この展覧会のオープニングには、ミラン往年のレジェンドで、クラブ幹部を務める元イタリア代表DFフランコ・バレージ氏も出席した。

 近代的なオフィス、カーサ・ミランに相応しい展覧会となったが、この本社オフィスを設計したイタリアの高名な建築家、ファビオ・ノベンブレはデ・オロの作ったミランのチームカラー「赤」を前面に押し出す作品について解説文を寄せている。

アートの国としても知られるイタリア

「肉体を補充しようとする自覚。オロデはエロティックな断片を再構築する思考を追求しているアーティストである。宇宙的かつ、誘惑の物語を組み合わせる詩的な作家だ。一人の呪術師が、肉体を語ることにより、魂を救済する。欲望の炎と、恋の熱の不安定なバランス。断片的な爆発のリアリティー、知覚と試みを伴う、最高のユートピアの冒険」

 1974年、南イタリアのプーリア州ターラントで生まれた、このアーティストをイタリア屈指の建築家は絶賛していた。デ・オロは2014年、ミラノ・トリエンナーレ・デザイン・ミュージアムで3つの作品を出品し、イベントの主役となった。

 イタリアは優れた建築、プロダクトデザインのみならず、アートの国としても知られている。若き芸術家を育成するサロンを本社施設に設けたミランはサッカー選手のみならず、アーティスト育成にも本腰を入れようとしている。

 カーサ・ミランの展覧会責任者マルコ・アマート氏は、名門クラブのアート界における取り組みについてもこう説明する。

アーティストのデ・オロ氏(右)と握手する元イタリア代表のバレージ氏(右)

発表の唯一の条件、作品テーマは「ミラン」

「我々は若いアーティストに発表の場を提供し、プロモーションする。一人のアーティストは6カ月から1年間という長い期間発表でき、無料で展覧会が開ける。作品を売っても、売り上げは全てアーティストのものとなる。ただ条件が一つあります。作品のテーマは常にミランに捧げること。それが条件になります」

 デ・オロの作品は、ロッソネロ(赤と黒)というミランの愛称通りの2色を前面に押し出したゴールーキーパがセービングを見せる場面を切り取っていた。

 ミラノにはフォンダツィオーネ・プラダなど、現代美術を楽しめる大規模な美術館ができた。サッカーの名門クラブが作り出した「カーサ・ミラン・ギャラリー」という空間は、若いアーティストたちにチャンスを与えるポジティブな空間となった。

 ミランはイタリア代表GKジャンルイジ・ドンナルンマ、司令塔マヌエル・ロカテッリという下部組織出身の逸材が台頭し、育成力を見せつけている。名門が着手したイタリア伝統のアート部門の育成。自前の新星に加え、大型補強に成功した新シーズンのミランのように無限の可能性を秘める取り組みになりそうだ。

【了】

倉石千種●文 text by Chigusa Kuraishi

フットボールゾーンウェブ編集部●写真 photo by Football ZONE web