「Thinkstock」より

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 2018年卒学生の採用は大企業がほぼ終了し、中堅・中小企業に移り始めている。今年の就活は昨年に比べてインターンシップ(就業体験)実施企業が急増し、また「1day」 から5日、1週間を超える長期のものまで多種多様だった。

 しかし、そのほとんどが文部科学省と経団連が禁じる採用直結型のインターンだった。しかも経団連の「3月広報活動解禁」「6月選考解禁」という指針があるにもかかわらず、加盟企業も通常選考とは別にインターン参加者を選考解禁前に選考し、内定を出すという“二重選考”が実施された。

 今、企業内ではいったいどのようなプロセスで選考が行われているのか。IT企業、建設関連企業、食品企業3社の人事担当者に、今年の採用における選考の実態について話を聞いた。

●選考解禁日の内定率が6割?

司会 就職情報サイト「マイナビ」が発表している6月15日時点の就職内定率は、67.7%になっています。また、リクルートキャリア調査による内定率も61%(6月1日時点)。選考解禁日に当たる6月1日の内定率の異常な高さといい、解禁後わずか2週間後の内定率が約7割という実態といい、いつ頃から企業は選考を開始したのでしょうか。

食品 実は6月1日というのは選考のスタート日ではなく最終日。インターンを通じて選考してきた学生に5月中に内々定のメールを送り、6月1日に集合してもらい、そこで正式に内定承諾書にサインしてもらいました。

IT うちは6月1日に「内々定式」をやりました。正式な内定日は10月1日ですが、学生さんには事前に「6月1日は安心してきてください。夕方に懇親会をやります」と通知し、1日に内定承諾書にサインしてもらうというやり方です。人事担当役員など人事関係者との交流、内定者同士の交流を行い、その後に懇親会と続きます。そこまでされると学生も断れない。また、もう一枚の紙を渡し、親のサインをもらってきてくださいと伝えます。なんの拘束力もありませんが、囲い込みのひとつの手法です。

建設 当社は式はやりませんでしたが、基本的にはみなさんと同じです。インターン選考を通過した学生さんを6月1日に集めて、内定承諾書にサインしてもらいました。

 その一方で、一般選考の学生さんはこの日から面接が始まるので、忙しいですが、去年よりは楽でした。というのはインターン選考は17年卒学生から始めたのですが、去年のインターンでの採用者は数百人の採用予定のうち4割弱。でも今年は6割を確保しました。去年の6月1日はそれこそ死にものぐるいで面接をこなしました。

●「就活=インターン」

司会 インターン選考と、正式選考解禁日から始まる一般選考という“二重選考”を行っているわけですね。問題にはなりませんか。

建設 一応対外的には「6月1日は守っています。インターンは通常選考ではないので若干早めにやっています」という逃げ口上を使っています。いずれにしてもインターン選考と一般選考の2種類の採用方法は、当社に限らず確立したといえるのではないでしょうか。同業他社も去年はやっていなかったけど、今年からインターンをやっているね、というところも増えていますし、来年の19年卒はすでに今年6月以降のインターン合同説明会に昨年以上の企業と学生が参加していますし、インターン採用がもっと増えると思います。

IT それは間違いない。経団連加盟企業は1350社ですが、指針に署名している企業は700超あります。純粋に6月1日選考解禁を遵守しているのは会長・副会長企業などごく一部の企業ではないですか。大学も同じです。インターンに参加しなかったら一般選考しかないぞと学生の背中を押している。

食品 大学のキャリアセンターも「就活=インターン」だと認識し始めています。2年前は「インターンって意識が高い特別な人がいくもの」という感覚でしたが、今年はインターンから就活が始まるというムードに変わった。キャリアセンターにしても一番の責務は就職浪人を出さないようにいかに内定数を出すかにある。経団連も文科省も選考と直結したインターンは禁止していますし、教員のなかにも採用インターンなどつまらないものに参加しないでちゃんと勉強してほしいという人はいますが、キャリアセンター職員の感覚とはだいぶ違います。

●インターン選考の実態

司会 インターン選考は、いつからどういうかたちで始まったのですか。

建設 昨年6年1日のインターンサイトのオープンから約1カ月後にエントリーを締め切り、参加申込者の面談を実施し、可否を決めます。これが事実上の一次面接に当たる。夏休みに事務系、技術系に分けて5日間のインターンを実施しました。期間中に学生の発言や振る舞い、グループのなかでどういう立ち位置にいるのかをじっくり観察できるのは魅力です。現場の担当者がどういう学生かを見て、人事が確認します。なかには現場から「ぜひうちに来てほしい」とオーダーを受けることもあるし、逆に「彼はうちではちょっと難しいのではないか」と言ってくる場合もあります。

IT 当社は夏に1dayインターンシップを開催し、その後に1週間のインターンシップを実施した。1dayでは業界・業種、それから自社の説明会を実施し、社員との交流会やグループワークを行う。いわば次のインターンシップ参加者の選考も兼ねている。これはと思う学生を絞り込んで非オープンのインターンに呼んで、ITスキルなどをじっくり見ている。当社の仕事の内容を知り、志望度を高めてもらうのが目的ですが、なかには優秀な学生でも自分のやりたい仕事ではないと引いていく学生もいる。でも互いのミスマッチを防止する意味でもよいことだと思っています。

食品 そこはインターン後のフォローでも大事な点です。定期的に工場視察や職場見学会、現役社員との交流会などを開催し、実際に選考までとぎれないようにしています。大事なのは学生のやりたい仕事が当社にあると思ってもらうことです。社員との交流で必ず学生が質問するのが「どうしてこの会社を選んだのですか」というものです。それに対して「ここしか受からなかったから」と答えると、学生はなんだとがっかりする。

 そうならないように社員には事前に教育し、たとえば「もともとこの業界はまったく興味がなかったけど、自分のスキルを高めて人に感謝される仕事をしたいと思っていたが、それがこの会社で叶えられると感じた」というような言い方ができるようにします。すると学生も会社に対する見方が変わります。

IT 採用する側もそう言われるとうれしい。志望動機で「貴社の商品が好きだから」という学生がもっとも多いが、一番嫌なパターンです。消費者目線ではなく、作り手、売り手の視点に興味を抱く学生に好感を持ちますね。

建設 インターン後に学生に「当社にいる大学のOB・OGと会いませんか」と誘いをかけますが、当然、会う社員は事前に選んでいます。OBには違いないが「あいつは会わせられない」という社員が必ずいますからね。

食品 19年卒のインターンシップはどうかわかりませんが、18年卒の夏のインターンシップの応募者を見るとGMARCH(学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政)クラスが積極的に動いていました。その上の旧帝大、早慶クラスの学生はいつでもどこでも勝負できるという意識があるのか、意外と動きが鈍かった。GMARCH以下の学生も「えー、もう就活なの」という意識で動きが悪かったという印象です。

●3月には面接開始

司会 インターンシップ参加者に実際に内々定を出したのはいつ頃ですか。

建設 3月の広報活動解禁と同時に個別に面談を進めます。通常の選考と同じように1次、2次、3次と重ねて最後は役員面談で採否を決めています。正式な選考解禁の6月の前なので「面接」という言葉は使えませんが、選考なので不合格者も出ます。ただし、合格、不合格という言葉も使えないので、パスした学生にはメールで、次の面談日を伝えています。そして5月の連休頃には内々定を通知するという流れです。

IT 当社も概ねそういう流れですね。おっしゃったように6月前なので次の面談日に呼ばれない学生には“お祈りメール”は出せないのでサイレント状態(合格・不合格を通知しない)になります。でもほとんどの学生は気づいていると思います。
(文=溝上憲文/労働ジャーナリスト)