事故直前の父と子(画像は『Moline Police Department 2017年6月8日付Facebook「On Tuesday evening, the Moline Police Department was dispatched to a report of several people in the water at 55th Street and Old River Drive.」』のスクリーンショット)

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美しい夕陽を背景に、桟橋で父と息子の深い絆が垣間見える感動的な光景を撮影した16歳のアマチュア写真家。しかしその直後、川に落ちた息子を助けようと父親が川へ飛び込んだ…。『Fox 59』や『Inside Edition』など複数メディアが伝えている。

6月6日、米イリノイ州ゲールズバーグに住むマリック・ウィリアムズさん(25歳)は、2週間前に出産したばかりのパートナー、ヘザー・ホームズさん(21歳)と子供2人を連れて車で45分ほどの距離にあるモリーンのベン・バターワース・パークを訪れた。

アウトドアが好きで釣りが趣味だったマリックさんは、ヘザーさんの産後の息抜きを兼ねて、ミシシッピ川の桟橋で息子ジェイデン君(6歳)と釣りを楽しんでいた。

ちょうどその時、写真撮影のために通りかかったアマチュア写真家のライリー・ゴメズさん(16歳)は、夕陽を背に言葉も交わさず川を見つめて座っている父子の姿に深い絆を感じた。ライリーさんはこの辺りをよく訪れており、思わず2人を写真に収めた。ライリーさんに気付いたジェイデン君はカメラに視線を向け、マリックさんは緑色のバケツに腰かけ釣りをしている。この穏やかな瞬間を撮影し、最後にもう一度夕陽を見ようとしたライリーさんは、数分前まで桟橋にいた子供の姿がないことに気付いた。

その瞬間、父親は子供の名を叫びながら素早く川へ飛び込んだ。そばに停めてあった車のなかで生後2週間のジョジィア君に授乳していたヘザーさんが異変に気付き、「誰か助けて! 2人は泳げないの!!」と叫んだ。

居合わせた男性が川へ飛び込みなんとかジェイデン君を救助したが、マリックさんは溺れたまま流されてしまった。駆けつけたモリーン警察や消防隊員らがマリックさんの捜索にあたったが、ついに彼を発見することはできなかった。

生後間もないジョジィア君とジェイデン君を抱え突然シングルマザーになってしまったヘザーさんは、高校時代の初恋の相手でもあった愛するマリックさんへの思いをこのように語っている。

「マリックは子供のためには全てを投げ出して何でもするような父親でした。スポーツやガーデニングなどのアウトドアが大好きで、特に釣りには週に4日行くほどでした。釣った魚をバケツにたくさん持って帰って来て、家族で夕食にしたり近所の人たちに配ったりもしていました。」

ヘザーさんによるとマリックさんは信仰深く、家族を何よりも大切にする子煩悩な父だったという。1歳3か月の時に養子として引き取られたが、18歳で家を追い出され、その後は仕事を見つけることも容易ではなかったようで、若い頃から人知れぬ苦労を抱えて生きてきた。高校時代にヘザーさんと知り合い、15歳で彼女がジェイデン君を産んだ時も、誰の助けも借りず2人きりで支え合ってきたという。

一瞬にして悲劇となってしまった現場にいたライリーさんは「できる限りのことをしましたが、マリックさんを救えなかったことが悔やまれてなりません。自分の命を犠牲にしてまで愛する息子を救おうとした、勇敢な“ヒーロー”の最後の写真を家族に提供できたことを喜びに感じています」と話している。

マリックさんの友人らはその早すぎる死を悼み、募金サイト「GoFundMe」で葬儀費用のための寄付を呼び掛けている。

画像は『Moline Police Department 2017年6月8日付Facebook「On Tuesday evening, the Moline Police Department was dispatched to a report of several people in the water at 55th Street and Old River Drive.」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)