モデルに応募したはずが、現場に行ったらアダルトビデオの撮影だった――意思に反して女性がAV出演を強要される被害が相次いでいる。

 AV出演強要については、政府も対策に乗り出している。2017年3月には、関係省庁が局長級の対策会議を開催。4月には、被害防止月間として内閣府HPに注意喚起のサイトを新設し、シンポジウムや街頭キャンペーンなど、教育・啓発活動も行っている。また、取り締まり強化として全国の警察に専門官を配置し、4月は勧誘行為の検挙が23件にのぼった。警察庁をはじめとする各省庁で相談できる環境を整えている。

 ノンフィクションライターの石原行雄氏は「最近起きた問題だと思われがちだが、ずっと昔から続く問題だ」と話す。「2004年にバッキー事件という事件があった。バッキービジュアルプランニングというAVメーカーが、普通のAVを撮る予定で女優を呼んで、危険ドラッグや肛門裂傷などほとんど拷問のようなビデオを撮影したというもの。主犯格に対して、強姦致傷罪として18年の実刑判決が出た。これを極端な例として捉えている人は多いが、AV出演強要と根は同じ。ファッションの写真を撮るだけといって現場に行ったら裸にさせられたり、AVとは聞いていたがいざ行ってみたら30人を相手にしなくてはいけなかったり。アダルト業界は構造的な問題を抱えたままずっとここまで来ている」と指摘する。

 元AV男優の加藤鷹氏は「約1万本AVに出ているが、そういう問題のあるAVに出演したことはない」と前置きしつつ、「バッキー事件は僕も業界にいた時の話だが、起こり得なくはないなという感覚はあった。撮影で何もなければそのまま終わるが、人の身体を扱っている以上、事故が起こってしまうとそれだけでは済まなくなってしまう。痛くても血が出なかったら映像的にはセーフだけど、骨が折れたりするとニュースになって大問題になる。AVに限った問題ではなく、どの業界でも事故が起こらなければ事件にはなっていないはず」と述べた。

■個人で撮影・配信したほうが儲けられる

 今年5月、大阪でモデル募集サイト運営者の男が職業安定法違反などの容疑で逮捕された。AVプロダクションとは関係のない事件で、男はコスプレモデルと偽ってインターネットで募集した少女を、意に反してAVに出演させた。

 事件の背景として石原氏は、「最近、プロの見よう見まねでアダルトビデオを撮影するケースが非常に増えている。プロの世界だと、流通や映像など業界団体で一定の縛りがあるので、縛りがない個人でやれば自由だし、より過激な撮影が出来て儲けられる。また、インターネットが出てきて、配信サイトやダウンロード販売サイトで自分が趣味的に女の子とした性行為をそのままお金に変えられるということがいわば、世間にバレてしまった。法律も知らなければモラルも無い人たちがAVに手を出すようになってしまった」と、個人で撮影・配信する人が増えたことを指摘する。

 加藤氏も「AV業界側からすると営業妨害。ネットが出始めた10年ぐらい前に、ある弁護士に言われた。『ちゃんとしたAVメーカー団体は、問題がある個人撮影などを排除していく活動をしないと自分たちが苦しくなりますよ』と。その頃は実感がなかったが、今まさに感じている」と話した。

 一方で、AV業界・団体に入らず“アンダーグラウンド”で活動している個人への規制については、「法律にしろモラルにしろ、締め付けが中途半端だと、どんどんアンダーグランドに潜って過激化したり犯罪性が強くなったりする。やるんだったら、きちんとしたルールを作って徹底的に取り締まるか、出来ないんだったら別の縛りの方法を考える必要がある」と、石原氏は訴えた。

 また、個人による撮影が増えている理由としては、「AV業界が認知された分、過当競争が起きている。インディーズ監督の話だと、モデル、AD、撮影場所、機材の手配をして、撮影しながら自分も男優として出て、編集してメーカーに納品して経費を払うと手元に残るのは10万円あるかどうか。だったら、SNSで援助交際をしている女の子を3〜4万円でスカウトして、個人で撮影して配信したほうが儲けられる」と説明した。

■石原氏「性的なものは取り締まりの線引きがあいまい」

 実際にAV出演を強要された事例として、「街中で『モデルになりませんか』とスカウトについていくと財布等を取り上げられ、男数人に囲まれ契約書を強要された」「新宿でモデルとしてスカウトされ、スタジオでトップレス写真を撮影された後、『サインしないと帰れない』と事務所に軟禁された」というものがある。

 石原氏は「レアケースではない」と断言する。「女の子が『帰ります』と言えない空気を作られていると思う。例えば、今までニコニコしていたお兄さんが、『何時間も説明させて、これで仕事がパーになったらどうするんだ』と突然凄んでくる。契約書に名前だけ書いて帰って電話で断ればいいや、とその場を逃れたい一心でサインしてしまう」と、女性がAV出演を拒否できない理由を話した。

 また、商法上その契約が成立するか、を裁判所に提起する手はあるが、スカウトマンはそういった知恵・経験がない子、押せば泣き寝入りするような子を狙って声を掛けるという。ジャーナリストの堀潤氏も、「性暴力被害に遭って警察に訴える女性の割合はわずか4.2%と言われている。強要されてサインしてしまったけど、『私も断れなかったのがいけなかった』『私にも落ち度があったんだ』と泣き寝入りしてしまい、見えにくい問題」と指摘した。

 加藤氏は、「いつの時代も詐欺師がいるし悪者もいる。自分も若いとき、英会話セットが流行って30万円ぐらいで買ってしまったが、どこにも訴えていない。それは、自分が可愛いお姉さんに鼻の下を伸ばして出向いてしまったという非があるから。ちょっとでも非を感じてしまったら、人間は言い出しづらい」と話した。一方で、窓口は必要だとし、「女性が意図していない行為をされるとか、女性の人権の問題を言えない状況は良くない」と指摘した。

 石原氏が見てきた撮影現場のうち、何件かは女優が来てから「聞いてないです」と揉め始めることがあったという。「結局、事務所の社長やマネージャーに電話して説得してもらうようなケースがあって、メーカー側はそれを知りつつも、事務所側に『今日これだけ現場を組んだのに、撮影ができなかったら賠償金どうするんだ』と話す。メーカー側が見て見ぬふりをしてきた結果、『じゃあ俺も騙して儲けよう』というスカウトマンが無くならないというのが、アダルト業界独特なもの」と語る。

 一方で、加藤氏は「映像を創る人間からすると、映画の撮影でも金に関係なく『作品としてこのシーンはどうしても女優にヌードになってほしい』と監督が女優を口説くということはありえること。あとは、女優が納得するかどうか。“監督が言うなら”といった人間同士としての会話も押し殺されてしまうことを危惧している」と話しつつ、「今の若い人や後輩に聞くと、AVの人間は追い込まれている。書かれていないことは1ミリもできないぐらいの恐怖感を持っている」と明かした。

 最後に石原氏は「複合的な問題が重なってついにここまできた。性的なものは、グレーなものを残しながら、なんとなく取り締まる・取り締まらないということが多いと思う。あいまいな部分を失くして、きちんと線引きしないといけない。プロの方も、業界団体をつくるときに第三者を入れてきちんと透明性のある団体にすることが必要だ」と述べた。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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