世界最大の自転車レースとして知られる「ツールド・フランス」の2016年大会を制したのはイギリス人のクリス・フルームでした。ツールド・フランス2016の第8ステージで、フルームは「super-tuck」と名付けられた独特のライディングポジションでダウンヒルを独走したことで、「下りで最も速いポジションはどれか?」という議論が沸き上がっています。

Techniques that give cyclists the edge in Tour de France | Daily Mail Online

http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-4661274/Scientists-reveal-effective-cycling-positions.html

フルームによるsuper-tuckスタイルは、以下のムービーの100秒以降で確認できます。

IMPRESIONANTE VELOCIDAD EN EL DESCENSO DE CHRIS FROOME EN LA ETAPA 8 DEL TOUR DE FRANCIA - YouTube

super-tuckは、ハンドルに覆い被せるようにトップチューブにまたがるスタイル。下りが得意ではないフルームがダウンヒルで猛アタックをかけた様子は、その不格好なライディングポジションも相まって、ツールド・フランス2016で最も印象的なシーンの一つになりました。なお、フルーム曰く、super-tuckは「瞬間的な出来事」とのことで、前輪の安定性を欠く恐れがある危険なスタイルであるため、他のライダーにはオススメできないとのこと。



真似するなと言われるとむしろ興味を引かれるもので、流体力学の専門家のアイントホーフェン工科大学教授のロバート・ブロックン博士は、フルームのライディングフォームを含む、代表的なポジションについて空力特性を研究しました。



研究では風洞試験が行われ、風の流れや空気抵抗などが調べられています。



風洞試験での空気の流れる様子は以下のムービーで確認できます。

空気抵抗係数(Cd)に前面投影面積(A)を積算したCdA値の結果は以下の通り。最もCdA値が優秀だったのは、「Top tube 4」というトップチューブに体を任せるように小さくなるスタイルでした。他にもサドルに腹ばいになる「Pantani」や、伝統的なスタイルの「Back down 2」などが続きますが、フルームのsuper-tuckは第7位で、最優秀だったTop tube 4比で7.2%も抵抗が大きいという結果になりました。



フルームのsuper-tuckは、定説通り空気抵抗の面ではそれほど優秀ではないことが確認され、super-tuck以上に優れたライディングスタイルがあることは予想どおりだったとのこと。

しかし、驚くべきことに古くから知られるあるライディングフォームが、他のポジションに比べて圧倒的に優れている可能性が見つかりました。そのフォームとは、イタリア人サイクリストのマイケル・ゲーラがかつて使っていた「スーパーマンポジション」。

スーパーマンポジションが秘めたポテンシャルの高さをまざまざと見せつける様子は、以下のムービーで確認できます。

ダウンヒルを駆けるサイクリスト。



しかし、ペースが上がらないせいか、後続車両に次々と抜かれてしまいます。



集団の最後尾に落ちてしまいました。



「仕方がない、あれをヤルか……」とばかりに、ゴーグルをクイっとやると……



ペダルから足を離して……



スーパーマンのような格好に。これが「スーパーマンポジション」



スーパーマンポジションのライダーは、前方のライダーをとらえ始めると……



あれよあれよとかわしていき……



あっさりとトップに。さらに、ペダルを激しくこぐ後続をぶっちぎっていきます。



ついには前方にいたバイクをパス。



驚いたバイクのライダーはカメラをパシャパシャ。



こうして後続を引き離すと、普通のライディングポジションに戻りました。



スーパーマンポジションが他のライダーをぶっちぎる映像は衝撃的。ちなみに専門家によると、スーパーマンポジションの方がsuper-tuckポジションよりも高い安全性を持つとのこと。ただし、どのライディングポジションが優れているのかは、ライダーや自転車との相性もある上に、アップダウンの有無などのコースレイアウトやハンドリング性、安全性などさまざまな要素が絡むため、一概には決められないものだとのこと。

ツールド・フランス2017では7月14日のステージ12がダウンヒルなので、昨年のフルームの快走を経て、各選手がどんなライディングポジションを試みるのか、注目が集まりそうです。