ラーメン(550円)。ラードを使わないので、ギトギト感がなく、あっさりとした味わい

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豚骨ラーメン発祥の地といわれている久留米市。「博多ラーメン」と「久留米ラーメン」の一番の違いはスープの取り方と濃度。博多は寸胴で毎日フレッシュなスープを仕込み使い切る“取り切り”スープが主流。一方、久留米は、昔ながらの羽釜で、減った分を継ぎ足し煮込み続ける通称“呼び戻し”技法が主となっている。一般的に“久留米ラーメンはこってり味”というイメージがあるが、実際はラードや背脂を使わない店が多く、比較的あっさりとしている。

【写真を見る】「チャーハン」(550円)は、サイドメニューの定番人気

今回、歴史ある老舗ラーメン店から、話題の店舗まで、久留米で食べるべき5軒のラーメンを紹介。ラーメンの味の要である“元ダレ”や、刻みチャーシューを使い完成させた鉄板サイドメニュー「久留米焼きめし」も要チェックだ。今も独自の“豚骨文化”を発信し続けている地に、食べ比べに出かけてみよう!

■ 南京千両 本家

1937(昭和12)年創業で、豚骨ラーメンの発祥とされる「南京千両(なんきんせんりょう) 本家」。元々うどんの屋台を営んでいた初代店主・宮本時男さんが、東京・横浜で流行していた中華そばと、出身地の名物である長崎ちゃんぽんをヒントに、当時、鶏ガラより安価であった豚骨に着目。史上初の豚骨100%ラーメンを生み出したと言われている。

現在は、初代の息子・憲司さんと孫の博さんを中心に、野中町にある店舗や明治通沿いの屋台を切り盛り。豚頭を強火で炊き、旨味を抽出した茶褐色のスープと、創業より自家製にこだわる緩やかなウェーブの縮れ麺、また、チャーシューを刻んで入れるスタイルもそのままだ。豚肉の煮汁が入った醤油ダレが奥行きのあるコクを添えている。

サイドメニューの定番人気は、「チャーハン」(550円)や「餃子」(8個400円)。具は肉ミンチ、ニラ、タマネギ、キャベツ入りでニンニクは控えめ。直火にかけた熱々の鉄板で提供される。

2017年で創業80年を迎えた歴史ある店。店舗の隣には製麺室もある。

[南京千両 本家]福岡県久留米市野中町1357-15 / 0942-22-6568 / 11:00〜22:00(LO)

■ 久留米 大砲ラーメン 本店

豚骨ラーメン発祥の地、久留米のなかでも横綱閣で、1953(昭和28)年の創業より半世紀以上、一度も釜を空にすることなく煮込み続ける“呼び戻しスープ”で有名。豚骨を継ぎ足しながら炊き、濃度の異なる複数のスープをブレンドすることで、骨の髄から染み出る旨味が幾重にも重なり、奥深いコクが楽しめる。

食感と風味が程よいアクセントになる豚脂の揚げ玉、通称「カリカリ」も久留米の伝統的な具材。ふんわりと仕上げたタケノコや、有明海が近いことに由来するノリをのせるのも特徴だ。

麺は、自社製麺所「大砲 麺工房」で作る中細ストレート。低加水麺なのでスープとより馴染みやすい。メニューの2本柱である「ラーメン」(並600円)と、カリカリをのせた「昔ラーメン」(並650円)を、一度に味わえる「食べくらべセット」(800円)も用意。そのほか、久留米の本店のみで味わえる「厚切り炙りチャーシューメン」(800円)にも注目だ。

店内は、L字のカウンターと小上がり席。カウンター越しに、大きな羽釜でスープを煮込むようすも見ることができる。

[久留米 大砲ラーメン]福岡県久留米市通外町11-8 / 0942-33-6695 / 11:00〜21:00(LO)

■ 丸星ラーメン

1958(昭和33)年に創業した24時間営業の「丸星ラーメン」。当時、広い駐車場を備えたロードサイドのラーメン店は希少で、トラックの運転手はじめ、ドライバーがその評判を全国に運び、久留米ラーメンが全国区になる一翼を担った。今なお、久留米っ子のソウルフードとして深く根付き、深夜から明け方にかけても客の波が途切れない。

昔ながらの1杯として存在感を放つラーメンは、豚骨のさまざまな部位を豪快に炊き込み、豚骨フレーバー、骨粉感も生かした“直球豚骨”というべき味わい。博多ラーメンに比べると、やや太めの麺との絡みもよく、何より1杯400円という値段がうれしい。

気さくなおばちゃん従業員たちが迎える、アットホームな雰囲気も同店の持ち味だ。店内の一角に置かれた漬け物は食べ放題。大鍋でグツグツと煮込まれ、味が染みたおでんにもそそられる。

持ち帰りラーメンは、久留米みやげとしても人気。

同店は、国道3号線沿いにあり、福岡市街からも車で50分ほど。24時間営業なので、思い立った時に足を運んでほしい。

[丸星ラーメン]福岡県久留米市高野2-7-27 / 0942-33-6440 / 24時間営業

■ 拉麵 久留米 本田商店

店主の本田眞一さんは、江戸時代、久留米問屋街の一角に、履物問屋として創業した「本田商店」の4代目。大手インテリアメーカーなどで勤務を経て、父のラーメン店開業をきっかけに、自身もラーメンの道に進むことを決めた。「伝統を守りながらも、よりお客様のニーズに応えていくのが、どの業種でも重要。インテリア業界や家業を通じ、肌で感じたことをラーメン作りにも生かしたい」と本田さん。

「温故知新」を掲げるラーメンは、久留米発祥の継ぎ足し技法「呼び戻し」を用いる。火加減、水加減を微調整しながら煮込み続けた、濃厚でクリーミーな味わいが自慢だ。“久留米らしさ”を存分に感じられる定番の「純味」(580円)のほか、黒マー油&白マー油でアクセントを加えた洗練の「眞味」(700円)など、新旧の多彩なラーメンを作る。

同店は、麺そのものが旨い店としても有名。鳥越製粉小麦「麺うたまろ」を使い、店内で製麺する中細麺は、香り高く、“はねかえるような強いコシ”が特徴だ。

ラーメンダレを隠し味に香ばしく炒める、「久留米やきめし」(小400円、中500円、大600円)も人気。

「とんこつラーメン、久留米式ちゃんぽん」の看板が目印。駐車場も広く入りやすい。

[拉麵 久留米 本田商店]福岡県久留米市南3-27-29 / 0942-55-4065 / 11:00〜15:00、18:00〜22:00

■ モヒカンらーめん 本店

屋号の通り、モヒカンヘアの店主、スタッフが迎える久留米の名物店。市内にもう1店舗「世界のモヒカン」を展開している。自慢の「モヒカンらーめん」(580円)は、化学調味料、添加物を抑え、豚骨本来の旨味を引き出した“自然派豚骨”。近年、より味の改良を重ね、九州産の豚頭、大腿骨など、煮込む豚骨の量を増やし重厚感がアップした。老若男女が食べやすいよう、豚骨の臭みも徹底して取り除いている。

チャーシューは、上質の豚肩ロースを厳選。肉をパサつかせず、みずみずしい状態で出せるよう、切りたてを提供する。そのほか、丼の中央に浮かぶ真っ赤な辛味調味料「モヒカンレッド」にも要注目。韓国唐辛子はじめ、十数種のスパイスを混ぜ込んだ赤ダレが、スープに鮮烈な辛味とさわやかな香りを添える。

残った豚骨スープをジュジュッとかける熱々鉄板の「とんこつ飯」(500円)、「焼き替え玉」(300円)など、サイドメニューも個性的。底抜けに明るいスタッフのきめの細かい接客も人気の理由だ。

店内は食券制。カウンター奥にボックス席がある。

[モヒカンらーめん 本店]福岡県久留米市津福本町221-11 / 0942-39-6786 / 11:00〜23:00(LO)

【九州ウォーカー編集部/取材・文=上村敏行、撮影=酒井修一、戸高慶一郎】