自身の取材体験を交えて作品を
語った作家の石井光太氏

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 第69回カンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞したフィリピンの鬼才ブリランテ・メンドーサ監督最新作「ローサは密告された」の試写会イベントが7月3日、都内であり、作家の石井光太氏が作品を語った。

 マニラのスラム街で小さな雑貨店を家族で経営するローサ夫妻は、家計のために少量の麻薬を扱う。ある夜、密告から夫婦は逮捕され、麻薬売人の密告要求、高額の保釈金など、警察から脅迫まがいの要求をされる。

 ルポ作家として世界各地の貧困地帯を取材してきた石井氏は、本作で描かれているようなフィリピンのスラム街にも20年ほど前から通っている。「映画だからこそ描ける人間の生き方を描いている」「スラム街はそもそも住む場所がない人たちが空き地を占拠するもの。フィリピンでは数万人単位で一つの街のようになっていて、映画にもリアリズムがあった」と感想を述べ、「スラムのようなところでは黒白はっきりつけて生きられない。生きるためには悪いこともしなくてはならないし、グレーの中で自分たちの人間性やプライドをぎりぎりのところでバランスを取っている」と物語の背景を解説する。

 フィリピンの麻薬撲滅政策については「国が麻薬の取り締まりという、黒白はっきりしたものを突き付けた瞬間にグレーで成り立っていた人間の命や尊厳が崩壊してしまうが、麻薬取締も、悪い警官がいたりとすべてが白ではない」「公務員の給料が低いので、悪いことをしないと生活が成り立たない状況もある」と述べ、「日本と違うのは、麻薬取引の資金が戦争や反政府のゲリラに結びつくので、国は何がなんでも抑えなければならない」と、厳しい処罰が下される理由を説明した。

 「ローサは密告された」は、7月29日からシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開。