クリスティアーノ・ロナウドの移籍騒動はレアル・マドリード残留で決着しそうだ。

 騒動の発端は、コンフェデレーションズカップの準備をしていたポルトガル代表の合宿中の出来事だった。スペインの検察当局がクリスティアーノ・ロナウドを脱税疑惑で告発してから数日後、代表のチームメイトに「もうスペインに戻ることはない。考え直すことはない」と伝え、レアル・マドリード退団を決断したと、ポルトガル紙ア・ボラが伝えた。

 チームを12度目のチャンピオンズリーグ(CL)王者、33度目のリーガ王者に導いたエースの退団宣言は、スペイン、ポルトガルはもちろん、欧州、そして世界中に大きなインパクトを与えた。すぐさま、古巣のマンチェスター・ユナイテッドやパリ・サンジェルマン、資金が豊富な中国クラブの名前が、新天地として候補に挙げられた。


コンフェデレーションズカップは準決勝で敗退。短いオフに入ったC・ロナウド

 だが、レアル・マドリード側は特に慌てた様子はなかった。会長のフロレンティーノ・ペレスは地元ラジオに出演した際に「代表仲間にそういう話をしたという報道を聞いただけ」と語り、本人からは移籍志願の話は聞いていないと、気にした様子は見せなかった。またある時は、泣きながらペレス会長に近づいてきたファンの子供が「C・ロナウドを退団させないで」と懇願したのに対して、「大丈夫。C・ロナウドはマドリードで引退するよ」と優しく諭したという。

 クラブOBの元ブラジル代表ロナウドは「自分の意見だが、彼はマドリードに残ると思っている」と語る。さらにクリスティアーノ・ロナウドの代理人であるホルヘ・メンデスも、近い関係者に「彼はチームに残留する」と話しているとも伝わっている。そしてポルトガル代表から離脱した本人からは、すでにクラブを安心させるようなメッセージが届いたと言われている。

 過去にもC・ロナウドの”レアル・マドリード退団”報道はあった。報道が過熱した2012年の時もそうだったが、今回の一件も、原因はピッチ内というより、ピッチ外での不満、特にメディアの自身に対する辛辣な対応や、それに呼応するようなサポーターから感じられる愛情不足によるものだろう。

 2009年、子供の頃から憧れていたレアル・マドリードに入団したC・ロナウド。入団発表にはサンティアゴ・ベルナベウを満員とする8万人のサポーターが訪れて祝福した。その期待に応えるように、ポルトガル人FWはゴールを量産し、チームの悲願であった10度目の欧州制覇をはじめ、数多くのタイトルをレアル・マドリードにもたらした。

 しかし、活躍すれば活躍するほど、C・ロナウドへの期待は、いつしか”結果を出して当然”という受け止め方に変わっていった。そして結果が出ないと、すぐさま厳しい批判を浴びるようになった。下り坂の選手、終わった選手、エゴイスト……。

 毎シーズン、コンスタントに活躍するのは難しいのがサッカーというスポーツだ。その中で世界トップのパフォーマンスを続けていくためには、選手自身の日々のサッカーへの真摯な取り組みが絶対に欠かせない。C・ロナウドは練習場に一番早くに着き、練習後もコンディションを整えるためフィジカルトレーニングを行ない、パフォーマンスをキープするための健康的な食事にこだわり、飽くなき向上心を持って大好きなサッカーに取り組んでいる。

 だが、そんな陰に隠れた努力にスポットライトが当たることはない。メディアに取り上げられるのは得点という結果と、並の選手なら大した話題にもならないサッカーの中でよくあるラフなプレー。さらにサッカーとは関係ない収入や恋愛についてのスキャンダルな話題ばかりだ。

 レアル・マドリードが33度目のリーガ優勝を決めたマラガの地で、C・ロナウドは優勝に関する質問に答えようとミックスゾーンで記者ににこやかに応対した。

 だが、ある記者から聞かれたのは、前の試合のセルタ戦での相手選手との確執についてだった。するとその笑顔は消え、「自分のことをよく知らないのに、あることないことが悪意を持って話されている。まるで自分を犯罪者のように責めてくる」と、不満を露わにした。

 そのような精神状態のところにスペインの国税当局と検察当局による告発が追い打ちをかけた。スペイン国内で、判決がまだ出ないうちから犯罪者のレッテルが貼られたことで、我慢の限界を超えてしまったのだ。

「ブーイングではなく、拍手をしてほしい」と、C・ロナウドはサンティアゴ・ベルナベウで行なわれたCL準決勝アトレティコ・マドリード戦後、サポーターに愛情を求めていた。

 このことに関して、「プロして高額の報酬を得ているのだから、ブーイングされることも当然であり、文句を言うのはただのわがままで甘えているだけだ」という意見もある。それもひとつの道理だと思う。だが、C・ロナウドとて、他の人々と同様に失敗をすることもある人の子だ。神様でも宇宙人でもない。賞賛をされれば嬉しいし、批判をされれば悲しい。誰だって批判だけを聞かされ続ければ不快になるだろう。

 もちろん、天賦の才能に恵まれた選手ではある。だが、C・ロナウドがその才能を輝かせるために、実際には日々のたゆまぬ努力によって「世界一」という称号を獲得した選手であることを人々は忘れている。それこそが、今回の移籍騒動の発端と言えるだろう。

■海外サッカー 記事一覧>>