【原ゆみこのマドリッド】もう練習している…

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▽「ちょっと早すぎじゃないかしら」そんな風に私が驚いていたのは月曜。前日にメディカルチェックの様子がTVに流れていたアスレティックに続き、ここ数日は猛暑も影を潜めてはいるんですけど、夏の殺人的な暑さには定評のある地元でセビージャがベリッソ新監督に率いられ、朝8時半からプレシーズンのトレーニングを開始したというニュースを見た時のことでした。いやあ、確かに昨季のリーガは5月21日に終わり、その前は3期連続してあった恒例のヨーロッパリーグ決勝もなかったため、選手たちもそろそろ体を動かしたい気分になっていたかもしれませんけどね。

▽7位で終わったアスレティックの場合、今月27日にEL予選3回戦1stレグが待ち受けていますし、バルサに行ってしまったバルデベルデ監督の後を継いだジガンダ新監督が張り切っているため、納得もできるんですが…。セビージャはCLで決勝トーナメントに進出してしまい、EL4連覇とはいかず、この夏のUEFAスーパーカップはありません。さらに、彼らの今季最初の公式戦は8月15、16日のCLプレーオフ1stレグなんですよ。また、UEFAスーパーカップに2連連続のCL王者として、EL王者のマンチェスター・ユナイテッドと対戦するレアル・マドリーでさえ、プレシーズン開始は11日だというのに…。セビージャは異例の早期始動。もしやこれって、今季こそアトレティコの定位置であるCLグループリーグ出場権のある3位奪取を果たしてやるという、セビージャの意気込みの表れだった?

▽いえ、そういうアトレティコもこの木曜には炎天下のマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場で選手たちの体力テストがスタート。9日の夕方にはロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)に移動して、月曜から地獄のキャンプとなりますから、別にそれ程、後れを取っている訳ではないんですけどね。22日の土曜には毎年恒例のメモリアル・ヘスス・ヒル杯でヌマンシア(2部)と対戦して、翌日にはメキシコへ行き。25日にトルーカとの親善試合をこなしてすぐ帰国すると、8月1、2日はミュンヘンでアウディ・カップに臨み、初日のナポリ戦の後、バイエルンかリバプールと決勝or3位決定戦をプレーすることに。さらに6日にもイギリスに飛んで、今季からプレミアリーグで戦うブライトンと親善試合となかなか密な予定が組まれていますが、公式戦が8月19、20日のリーガ1節までないというのは結構、有難いことかも。

▽というのも昨季など、お隣さんはジダン監督のローテーション政策が効を奏して肝心な試合で息切れすることはなし。未成年選手獲得における規則違反で受けたFIFA処分もCAS(スポーツ仲裁裁判所)のおかげで、新規選手登録できないのは今年の1月の1回だけに減ったため、放出予定の左SBコエントランの代わりに早速、テオ(昨季はアトレティコからのレンタルで、アラベスでプレー)を獲るなど、穴埋めも滞りなく行えるのとは違い、この夏もシメオネ監督は新戦力をアテにできませんからね。

▽ジエゴ・コスタ(チェルシー)だ、ビトロ(セビージャ)だと騒いでいるのはあくまで来年1月に向けてで、それまでは一応、負傷離脱が長期に渡ったアウグストやヴァルサリコらは帰って来るとはいえ、リーガ前半戦とCLグループリーグは昨季とほぼ同じAチームメンバーで賄わざるをえず。となれば、出ずっぱりとなる選手たちには極めて高い体力をつけてもらう必要があるから。とりわけ先週の金曜まで、誰よりも長いシーズンを過ごしたサウールなど、恥骨炎の症状も出ていることから、この月末に遅れてプレシーズンに参加したあと、まだ開幕まで間があるのは大いに助かるかと。

▽え、それでそのサウールの今季最終戦となったU21ユーロの決勝はどうだったのかって? いやあ、私もまた彼の活躍をお伝えしたいと腕まくりをしていたんですが、もしかしてアトレティコ勢は決勝に勝てないというジンクスでもあるんですかね…。去年の夏もCL決勝でマドリーに負けた悔しさをバネにグリーズマンがフランスをユーロ決勝まで牽引していったんですが、最後はクリスチアーノ・ロナウドのポルトガルに敗北。同じシーズンに2つの国際ビッグトーナメントの決勝で負けるという不名誉な記憶を作っていたように、サウールもあと一歩が及ばなかったんですよ。もちろん彼だけの責任ではないのは確かですが、スペインU21代表の同僚、アセンシオ(マドリー)など、6月にカーディフでCLトロフィーを掲げていますからね。ダメージも少なくて済んだのでは?

▽ちなみにドイツとの試合の方は、「En la primera parte no hemos sido nosotros/エン・ラ・プリメーラ・パルテ・ノー・エモス・シードー・ノソトロス(前半のウチは自分たちでなかった)」とセラデス監督も後で言っていたように、チームにいつもの活発な攻める姿勢が見えず。そうこうするうち、40分にはジョニー(スポルティング)が自陣エリア近くで失ったボールが起点となり、トルヤン(ホッフェンハイム)のクロスをバイザー(ヘルタ)にヘッドで決められて、先制点を奪われてしまったから、驚いたの何のって。それでも準決勝のイタリア戦だって、前半は決して優勢だった訳じゃないのだからと、後半に私も期待を懸けていたところ…。

▽その日はダメでしたね。8人もU21常連メンバーをコンフェデレーションズカップのレーブ監督率いるドイツBチームに引き抜かれ、決して知名度は高いと言えない選手たちで構成されたCチームの団結した守りにスペインは突破口が開けず。うーん、サウールやセバージョス(ベティス)もシュートは試みたんですが、とりわけ前者はイタリア戦のハットトリックで運を使い果たしましたかね。GKポラースベック(2部のカイザースラウルテンからハンブルクに移籍)を破ることはできず、サンドロ(マラガ)からウィリアムス(アスレティック)に、ボランチのマルコス・ジョレンテ(昨季はマドリーからレンタルで、アラベスでプレー)からFWのボルハ・マジョラル(同ボルフスブルク)とアタッカーを増やしても全然、得点できないんだから困ったもんじゃないですか。

▽結局、そのまま試合は1-0で終わり、U21ユーロはドイツの優勝で幕を閉じたとなれば、実際、大会MVPに選ばれ、トロフィーとポーズさせられたセバージョスも少しも嬉しそうじゃありませんでしたしね。計5得点で大会得点王となったサウールなど、ゴールデンブーツを受け取るのを忘れてしまい、チームバスに乗っているところをわざわざ、中まで取りに行かされたなんて逸話も。これにはさすがにアトレティコも可哀想に思ったから、クラクフからバラハス空港に到着した翌朝、サウールの2026年までの契約延長を発表する気の遣いようでしたが、同時に契約破棄金額も8000万ユーロ(約103億円)から1億5000万ユーロ(193億円)とアップ。

▽先日、一足早く延長のサインしたコケと同額になった当人は、クラブのオフィシャルサイトに上がったビデオで「Estoy muy contento porque en el Atleti somos una familia y no hay un sitio mejor en el que pueda estar/エストイ・ムイ・コンテントー・ポルケ・エン・エル・アトレティ・ソモス・ウナ・ファミリア・イ・ノー・アイ・ウン・シティオ・メホール・エン・エル・ケ・プエダ・エスタル(アトレティコは家族だし、自分がいられるこれ以上の場所はないから満足だよ)」と言っていましたが、2013年のU21ユーロ優勝チームの一員だったカンテラーノ(アトレティコB出身の選手)の先輩とタイトルでも肩を並べられなかったのは、ちょっと後悔が残るところかと。

▽まあ、サウールの場合はこの大会を最後にU21から卒業する11人の1人で、GKケパ(アスレティック)、アセンシオ、ベジェリン(アーセナル)、デウロフェウ(決勝当日にバルサがエバートンから買戻しオプションを行使)らと共にA代表でもロペテギ監督のお覚えめでたいメンバーでもあることから、このリベンジは来年のW杯で果たせるかもしれませんけどね。できれば、その前にアトレティコで何かタイトルを獲れるよう、丁度、1日からはオフィシャルショップの看板も新しい紋章に衣替え。すでに物議を醸している新ユニフォームはまだ発売されていませんが、ワンダ・メトロポリターノにホームが移転する今季はツキが変わってくれるといいんですが。

▽おかげで翌土曜は私もお祝いすることがなくなったため、丁度始まったrebaja(レバッハ/セール)巡りを兼ねて、ワールド・プライド2017(LGBTの権利を主張するフェスティバル)の最終日で賑うセントロ(市内中央部)を散策。主義主張を表明したい人々もきっといるんでしょうが、観光客も含め、コスプレやボテジョン(広場など屋外でやる酒盛り)のいい口実になっていたような。何せ、あのロエベのショーウィンドウまでがレインボーカラー(多様性を示すゲイ・プライド運動の象徴)でデコレーションされていましたからね。フィエスタの中心となるチュエカ地区に入る道では必ず警官が荷物チェック、グラン・ビア(市内中心の大通り)も全面通行止めにして、中央には鉄柵を並べている辺り、テロ対策も近頃は大規模にやっているんだなという感じでしたが、まあご時世柄、それも仕方ないのかも。

▽そんなことはともかく、サッカーの話を続けると、日曜にあったコンフェデ3位決定戦ではポルトガルが後半アディショナルタイム、マドリーとの契約が終わっても、奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)魂は持っていくつもりのペペのゴールでメキシコと同点に。延長戦では前半、アドリエン・シウバ(スポルティングCP)がリベンジPKに成功し、2-1で勝利。双子が生まれたばかりというのを理由に、クリスチアーノ・ロナウドのチーム離脱を認めたフェルナンド・サントス監督を安心させることになりましたが、マドリッドに一旦、戻ったはずの当人からは今もSNSでの写真以外、何の音沙汰もないため、移籍したいのか、チームに残留するのかの結論はまだ出ていません。

▽うーん、この調子だと、31日にロナウドが脱税容疑でマドリッドの裁判所に出廷した後、ロスアンジェルでキャンプ中のチームに合流するまで、白黒つかない気もしますが、それに応じて、早々にリヨン行きが決まったマリアーノはともかく、モラタやハメス・ロドリゲスの移籍を許可するかどうか、ムバッペ(モナコ)やセバージョスを獲得すべきなのかどうか、クラブの方針も変ってきますからねえ。できれば、早めに答えを出してもらいたいところですが、さて。そうそう、ジダン監督の長男で昨季はたまにベンチに入っていたエンソはアラベスへのレンタル移籍が決定。U21ユーロで実力を示したマルコス・ジョレンテやバジェホのように外のクラブで修業して、トップチーム入りを勝ち取れということのようです。

▽そしてコンフェデ決勝はドイツがマルセロ・ディアス(セルタ)のミスを利用、バーナーが奪ったボールをシュティンドルが決めて奪った1点で、アレクシス・サンチェス(アーセナル)やアルトゥロ・ビダル(バイエルン)のいるチリに0-1と勝利して優勝。もうBチームとCチームでdoblete(ドブレテ/ダブル優勝のこと)なんてこと、あっていい? どうもこのまま行くと、来年のW杯でスペインが復権するのは難しいように思えてしまうんですが、まあ、それはかなり先の話。来週の月曜にはマドリッドの弟分、レガネスも始動しますし、昇格プレーオフで国内では誰より、長く戦った末、1部Uターンを果たしたヘタフェも17日には練習を始めるため、私もそれまでに英気を養っておかないといけませんね。【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。