南アフリカはケープタウンの高校では、ダンスとラップで数学を教えるグレートティーチャーの授業が大人気だ。

現在33歳のKurt Minnaar先生は、ヒップホップアーティストでダンスの振付け師の経験もある。もともと落ち着きのない子どもで数学が大の苦手だったそうだが、かつての自分が数学の授業についていけなかったり集中できなかったりしたのは、もしかしたら自分だけのせいではないのでは? と思うようになったという。

そんなKurt先生が編み出したのが、ラップとダンスで九九や公式などを教える方法。これなら体でノリながら覚えられるし、何より楽しい。おかげで生徒たちの集中力と成績は格段にアップし、いつも授業は大盛り上がりなんだとか。

時にはラップトップを持ち込んで、ビートを流しながら複雑な掛け算をラップしたりと、生徒たちに飽きさせない工夫を凝らしているKurt先生。あまりにも効果があったため、新しいビートやライム、レッスンプランなどを編み出すのに日々大忙しなんだそう。

数学の授業中にダンスとラップが繰り広げられるなんて一見したら学級崩壊状態だが、生徒たちの授業参加率はほぼ毎回100%というから驚き。実際、日本の九九もリズムや語呂で憶えるものだし、化学の授業でお馴染みの「スイヘイリーベ……」や「ふっくらブラジャー愛のあと」なんて、モロに語呂重視である。つまり数学や科学の学習には、まず公式や並びを憶えることが重要だったりするのだ。特に九九は因数分解など、さらに複雑な数学公式を覚える際にも超重要なので、九九にさえつまづかなければ数学を敬遠する生徒も確実に減るだろう。

昨今の教育現場では、総合的な教育の重要性が唱えられている。数学も文学も、科学も芸術も、この世界においては有機的に絡み合っているものであり、それぞれを独立したものとして個別で教えるのではなく、全ての関係性も含めて教えることが重要、というものだ。スポーツ選手が医学の世界に進んだり、生物学者や数学者が哲学の世界に進む、といった実例はあるし、その逆も然りである。そのことを考えると、各授業を孤立したものとして実施するよりも、頭の柔軟な若いうちから楽しく総合教育を行うことは、確実に生徒たちの可能性を広げるはずだ。

そのためには総合的な教育を行える教師が必要なため決して容易ではないが、Kurt先生の授業は見事にこれを実現している。苦手意識どころか「数学大好き!」な生徒が急増中のこの授業では、リズム感もラップのスキルも表現力もアップするとあって、他の先生たちも感謝していることだろう。

「僕らは少年の頃、みんなマイケル・ジャクソンに憧れていた。アーティスティックな要素を教育に持ち込むことは、教えるということを絶対に美しくする」と語るヒップホップ・ティーチャー、Kurt。本人ですら思いがけず、学校教育に大革命をもたらしている。