取材&写真:鍋 潤太郎
もうすぐSIGGRAPH 2017(写真は昨年のアナハイムでのSIGGRAPH 2016)

はじめに

♪も〜いくつ寝ると〜SIGGRAPH〜♪…もうすぐ楽しいSIGGRAPHである。SIGGRAPH 2017はロサンゼルスのダウンタウンにて、2017年7月30日〜8月3日の5日間に渡って開催予定である。そこで今回は、SIGGRAPH 2017の見どころを「ざっくり」と紹介してみようと思う。渡米前にスケジュールを検討する際の参考用にご活用頂ければと思う。

※このコラムで紹介されている内容は6月末時点での情報です。開催情報が予告なく変更されることも予想されます。最新情報はSIGGRAPH公式サイトや、最新のアドバンス・プログラムをご参照ください

SIGGRAPHとは何ぞや?

その前に「シーグラフ(SIGGRAPH)」をご存知ない方のために、SIGGRAPHとは何かを簡単にご紹介しておこう。SIGGRAPHは、毎年夏にアメリカで開催されるコンピュータ・グラフィックス分野の世界最大級の国際コンベンションである。正確には国際学会および展示会なのだが、連日映像作品の上映やVFXメイキング講演、ユーザー・イベント、パーティなどが開催されることもあり、その楽しさや華やかさから「祭典」的な存在としても知られている。

国際学会の性質にふさわしく、大学の研究者やハリウッドのVFX現場で開発された最新技術の論文発表も行われ、ここで公開された論文が、最新ハリウッド映画の技術に応用される事例も少なくない。アメリカのCG・VFX界では「情報共有」の考え方が浸透しており、こういった最新技術を惜しげもなく公開し、みんなで使っていこうという姿勢が見られる。その姿勢はオープンソースなどに代表される情報共有や業界標準化にも通じるものがある。

SIGGRAPHの歴史は古く、第1回は1974年にコロラド州の都市ボルダーで参加者わずか600人で開催された。参加者数及び出展者数のピークは1997年のロサンゼルス開催で、参加者48,700人に出展社数539。それからは徐々に規模が小さくなり、ここ数年は参加者14,000人前後、出展社数150前後を推移しているようだ。そんなわけで、ここしばらくの規模は最盛期と比べると3分の1程度に縮小してしまっているものの、それでもCGの最先端技術の論文発表やVFX作品のメイキング講演、エレトリック・シアターに代表される映像作品の上映など、まだまだ魅力は満載である。

SIGGRAPHは毎年開催地を変えて実施され、過去にはボストン、シカゴ、フロリダ、ダラス、そしてラスベガスなどの全米各都市で開催されたこともあった。しかし近年は規模縮小の影響もあってか、CG&VFXが盛んなロサンゼルス近郊やカナダのバンクーバーなどで開催されることが多い。インターネットの普及により、海外の映像作品や映画のメイキング映像などが気軽に見れる時代になったが、著作権の関係などからオンラインでは公開されない「SIGGRAPHに行かないと見れない、門外不出映像」が拝めたり、SIGGRAPHの場で憧れの著名人に出会えたり、実際にVFXを制作した著名VFXスタジオのスーパーバイザーなどによるメイキング講演が生で聴講できるのは、やっぱり貴重だ。

LAXからダウンタウンLAへの移動は

LAX(ロサンゼルス国際空港)からダウンタウンLAまでは約16マイル(25km)ほどの距離があり、道路の混在状況にもよるが、車で25分から45分ほどである。空港からの移動にはタクシーやシャトル・バスなどを利用するのが一般的だ。詳細はこちら

上記の公式サイトによれば「スーパーシャトル」を利用すると、SIGGRAPH参加者向けのディスカウントが利用できるという。ディスカウント・コードは「PK7AU」。相乗りだが、宿泊先のホテルまで連れて行ってもらえる。スーパーシャトルのサイトはこちら

アメリカを旅慣れている方は、レンタカーを借りるのも楽しい。タクシーも便利だが、いま流行りのUberを使う方法だってある。Uberは日本ではまだお馴染みではないと思うが、アメリカでは大人気のサービスである。スマホにアプリ(日本語対応されているので便利)をダウンロードしておけば、登録している車(Uberに登録している一般人が運転する普通の車。友人が迎えに来てくれるような、気軽な感覚で利用できる)が迎えに来てくれる。

料金はクレジット・カードから自動決済されるので、ぼったくられたりチップを支払う手間がないく、英語が苦手でも便利である。タクシーよりも割安で、サービスも(ドライバーによって個人差はあるが)タクシーと比較すると総じて良い。搭乗ヒストリーなどがアカウントに記録として残るので、万が一車中に忘れ物をしても、すぐに対応できるのも利点だろう。

チケット&レジストレーション

チケット&レジストレーション情報は下記サイトから見ることができる。詳細はこちら

最もリーズナブルに視察しようと思えば、機器展だけ(Exhibits Only)に入場できるチケットで50ドル。視察目的によって様々な種類のチケットがあり、最も高いフル・コンファレンスのチケットは非会員だと1,645ドル。

※学割も用意されているので、学生のみなさんは要チェックである。
※今年から、レジストレーション・バッジにID写真が入るようになった(!)ようだ。これは他人のバッジでの入場を防ぐ目的があるらしい。その関係で、友人のバッチを借りたり職場の同僚とバッチの使い回しができなくなるのでご注意。オンライン・レジストレーションの際には写真が必要なので上記リンクをチェックしてほしい。
※チケットの購入は事前にオンラインでも可能だが、現地に行ってから窓口で購入することもできる。

アドバンス・プログラムを入手しよう

便利な時代になった(笑)もので、SIGGRAPH 2017のアドバンス・プログラムのPDFが公式サイトから閲覧&ダウンロードできる。詳細はこちら。まずはこれをゲットして全体像を把握しておくと、行動予定が立てやすくなるだろう。内容は定期的に更新されているので、既にダウンロードした方もご出発前に最新のPDFファイルに更新しておくと良いだろう。

チケットの種類によってアクセスに制限がある

ハリウッド映画のVFXメイキング講演などが見れるProduction Sessionsはオススメ
(SIGGRAPH 2016でのProduction Sessionsにて筆者撮影)

チケット(レジストレーションのカテゴリー)は5種類で、下記のようなアルファベットの記号で表記される。

  • FP:フル・コンファレンス・プラチナ(売り切れ)
  • F:フル・コンファレンス
  • S:セレクト・コンファレンス
  • EP:エキシビット・プラス
  • EO:エキシビット・オンリー

SIGGRAPHには様々なイベントや講演があるが、チケットのカテゴリーによっては入場できないものあるので、注意が必要である。アドバンス・プログラムを見ると各イベントに入場可能なチケットが、上記アルファベットによって記載されている。例えばハリウッド映画のVFXメイキング講演などが見れるProduction Sessionsは「S(セレクト・コンファレンス)」以上のチケットでないと入場できないようになっている。事前にアドバンス・プログラムを確認した上で、購入するチケットを決めると良いだろう。

今年の見どころ

機器展を一回りするだけで今年のトレンドが把握できる
(SIGGRAPH 2016にて筆者撮影)

今年で44回目を迎えるSIGGRAPHだが、今年はどんな見どころがあるのだろうか?ひとくちに「見どころ」と言っても、参加される方の専門職種によって着目点が異なると思うが、ここではVFXアーティストの諸兄が興味を持ちそうな分野を、筆者の独断と偏見に基づきピックアップしてみた。


■機器展(Exhibition)

会期の火水木の3日間に渡って行われる機器展。これにあわせて月曜にLA到着のスケジュールを組む方も多いようだ。ここでは様々なCG関連のソフト&ハードの最新動向が見ることができ、会期中に一回りするだけで今年のトレンドが把握できる場でもある。各CGソフトのベンターが構えるブースでは、最新バージョンのデモや、ユーザー事例のプレゼンテーションなども行われる。

CGソフトのTシャツやバッジ、関連グッズなどをゲットするのも楽しみの1つだ。特にピクサーがレンダーマンのノベルティとして毎年機器展会場で配布する「歩くティーポット」のグッズは、放出時間になると長蛇の列ができる人気である。


■エレクトリック・シアター

SIGGRAPHの数あるイベントの中でVFX屋にとって絶対に外せないのが、このエレクトリック・シアターである。著作権の関係でオンラインに公開されていない極秘映像も多数含まれ、必見である。2013年までは月〜水の夜3回と木曜日の午前と会期中は計4回開催されていたのだが、2014年から夜の2回のみになってしまったのが残念。今年の開催は月曜と水曜の夜のみ。

入場可能なチケット:FP/F
Electronic Theater
Mon,31 Jul,6-8 pm
Wed,2 Aug,8-10 pm

会場:South Hall K
チケット:40ドル(別売り・但しフルコンファレンスにはチケットが含まれる)

コンピューター・アニメーション・フェスティバルの一環としてVRシアターも、連日開催予定である。


■VRビレッジ

昨年大好評だったVRビレッジ
SIGGRAPH 2016にて筆者撮影

昨年大好評だったVRビレッジだが、今年も引き続き開催される。座って楽しむもの、立って楽しむもの、ヘッドマウントを使うもの、巨大なものなど様々なVRが体感できるエリアである。日曜から木曜まで連日開催される。

入場可能なチケット:FP/F/S/EP/E
会場:Experience Hall, South Hall G
詳細はこちら

VR VILLAGE HOURS:
Sun,30 Jul,1:30-5:30pm
Mon,31 Jul,10am-5:30pm
Tue,1 Aug,10am-5:30pm
Wed,2 Aug,10am-5:30pm
Thu,3 Aug,10am-3:30pm


■トークス

公開前の研究成果やアイデアを披露する「トークス」も、VFX関連の面白いプレゼンテーションが聴講できる。下記はその一例だが、今年もかなり盛りだくさんである。

入場可能なチケット:FP/F
詳細はこちら

The Art of Production
Sunday,30 July,9:00 am-10:30 am,Los Angeles Convention Center,Room 150/151

A look at the many visual and technical challenges that went into creating Pixar’s Lou,a complex character who could take on almost any form using the random objects around him.

It’s Complicated
Sunday,30 July,10:45am-12:15pm,Los Angeles Convention Center,Room 403AB
Evolving Complexity Management on“The LEGO Batman Movie”

Effects Omelette
Sunday,30 July,2:00pm-3:30pm,Los Angeles Convention Center,Room 152
“Rogue One:A Star Wars Story”-Jedha Destruction
“Moana”:Geometry-Based Disco Ball Lighting for Tamatoa’s LairBuilding Detailed Fractal Sets for“Guardians of the Galaxy Vol.2”

I Like to Move it,Move it
Sunday,30 July,3:45pm-5:15pm,Los Angeles Convention Center,Room 403AB
Muscle Simulation for Facial Animation in”Kong:Skull Island”(ILM)

Hair It Is!
Monday,31 July,9:00am-10:30am,Los Angeles Convention Center,Room 403AB
The Art and Technology of Hair Simulation in Disney’s “Moana”(Walt Disney Animation Studios)

Making Waves
Tuesday,1 August,10:45am-12:15pm,Los Angeles Convention Center, Room 408AB
“Moana”:Crashing Waves(Walt Disney Animation Studios)

Alt. Workflows
Wednesday,2 August,9:00am-10:30am,Los Angeles Convention Center,Room 402AB
Director-Centric Virtual-Camera Production Tools for Rogue One(ILM)

Pipe Dreams
Thursday,3 August,9:00am-10:30am,Los Angeles Convention Center,Room 402AB
Large-Scale VFX Pipelines(Weta Digital)

Tools of the Trade
Thursday,3 August,10:45am-12:15pm,Los Angeles Convention Center,Room 402AB
Optical Flow-based Face Tracking in”The Mummy”(MPC)


■プロダクション・セッション

ここでは、最先端技術をプロダクションに応用したプレゼンテーションが行われ、毎年かなり見応えのあるメイキング講演を聴講でき、まさにVFX屋必見である。下記はその中からおもしろそうなものを抜粋。詳細及びスケジュールは、前述のアドバンス・プログラムをご参照あれ。

Production Sessions
入場可能なチケット:FP/F/S

TUESDAY,1 AUGUST

10:45am-12:15pm
Production Session:Stories the Ocean Tells Us:The Making of“Moana”

3:45-5:15pm
Production Session:Industrial Light&MagicPresents:Behind the Visual Effects of Rogue One:A Star Wars Story


WEDNESDAY,2 AUGUST

3:45-5:15pm
Production Session:Games of Thrones:Building and Destroying Meereen

5:45-7:15pm
Production Session:Sony Pictures
Imageworks Celebrating 25 Years of Innovation,Imagination,and Creativity


THURSDAY,3 AUGUST

10:45am-12:15pm
Production Session:Blizzard Entertainment
Presents:the Making of the“Overwatch Animated Shorts”

2-3:30pm
Production Session:The Making of Marvel Studio’s Spider-Man Homecoming

3:45-5:15pm
Production Session:The Making of Marvel Studio’s“Guardians of the Galaxy Vol.2”


■ジョブ・フェア

JOB FAIR
入場可能なチケット:FP/F/S/EP/EO/E

会場:機器展会場内
South Hall H/J
Tue,1 Aug,9:30am-6pm
Wed,2 Aug,9:30am-6pm
Thu,3 Aug,9:30am-3:30pm

SIGGRAPHでの就活やリサーチを予定しておられる方は、是非こちらへ。リクルーターやスーパーバイザーとコネクションを作れるチャンスの場でもある。事前に書籍「ハリウッドVFX業界就職の手引き」を読んで海外就活の予習しておくことを忘れずに!

おまけ:映画「La La Land」のロケ地がコンベンションセンターの比較的近くに

余談であるが、映画「La La Land」の中に登場するロケ地がコンベンションセンターの比較的近くにある。近くと言っても歩くと30分程かかる。歩けない距離ではないが、タクシーかUberを使うと便利だろう。下記2つのロケ地がダウンタウンLAにある(地理は下記の地図をご参照)。

グランド・セントラル・マーケット

映画の中に一瞬登場する、セバスチャンとミアが軽い食事を取っている場所である。世界中のさまざまな料理が手軽に楽しめる場所で、レストランではなく市場の雰囲気に近い。ランチや夕食をここで取るのも楽しいだろう。

■ケーブルカー「エンジェル・フライト

現在休止中ではあるがこれがケーブルカー「エンジェル・フライト」

こちらも映画の中にほんの一瞬登場する、ダウンタウンLAにある「世界で最も短い」と言われるケーブル・カー。上記のグランド・セントラル・マーケットの近隣にある。現在は休止中(今年9月に再オープンらしい)だが、映画のロケの時だけ特別に運行して撮影。車両の中でキスする2人、降りてから出口で踊る2人のシーンが撮影された。

ここは日本領事館が入居する高層ビルの一角にあるので、LA在住の日本人にとっては、パスポートの書き換えなどで時折訪問するお馴染みの場所でもある。みなさんのLA滞在中、万が一のパスポート紛失など困ったことがあれば日本領事館に相談できるので覚えておくと便利だ。場所は、下記の地図をご参照あれ。

※この周辺での日没後の移動は、徒歩ではなくタクシーやUberを使う方が無難である

周辺の地図

筆者はSIGGGRAPH 2017期間中、現地にて視察&取材予定である。海外VFX就職のご質問やご相談、海外のVFX業界の最新動向についてお話を聴いてみたい個人or企業の方を対象にアポイントメント・ベースでのセッションを、空きスケジュールを利用してお受けする予定である。ご希望の方は、nabejuntaro@hotmail.comまで。それでは皆さん、SIGGRAPHで!