宮市を襲った前十字靭帯断裂の悪夢 再発リスクが高まる“二つの条件”とは

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中村俊輔の専属トレーナーが、サッカー選手のキャリアを左右する負傷を解説

 ドイツ2部ザンクトパウリのFW宮市亮は、6月28日の練習中に右膝前十字靭帯断裂の重傷を負い長期離脱を余儀なくされた。

 2015年7月に左膝前十字靭帯断裂というキャリアを左右する大怪我から立ち直ったばかりだった。サッカーの世界ではこれまで、“ファンタジスタ”として有名な元イタリア代表のロベルト・バッジョ氏、FC東京MF米本拓司ら両膝の靭帯を痛めてしまう選手もいた。宮市もまた、左右両膝で大怪我に見舞われる一人となったが、再発する可能性が高い「二つの条件」に不運にも当てはまっていたという。

「前十字靱帯断裂は種目にもよりますが、接触なしの受傷が多くなります。cuttingと呼ばれる方向転換動作、landingと呼ばれる着地動作、stoppingと呼ばれる減速動作をする際に受傷するケースが多くなります」

 こう説明してくれたのは、ジュビロ磐田の元日本代表MF中村俊輔の専属トレーナーである、新浦安しんもり整骨院入船院の新盛淳司院長だった。

 キャリアを左右する重傷に見舞われる主な要因は、相手選手との接触プレーではなく、自らの動作を変える瞬間に起きるケースが大半だという。そして前述の三つの動作に加えて、ある条件が重なると靭帯が負荷に耐えきれなくなると、新盛院長は説明する。 

再発の多い「術後2年以内」と「25歳以下」

「この三つの動作の際に、膝が軽く曲がる軽度屈曲、足首が膝より外側に反るという外反、すねの骨がねじれる下腿回旋、そして重心がやや後方の際に靭帯を損傷することが多くなると言われています。前十字靭帯断裂を避けるには、そのような姿勢にならないようにしないといけません」

 そして宮市は左膝を痛めた2年後に、右膝に重傷を負ってしまった。前十字靭帯断裂は再発率が高い怪我だという。

「膝の前十字靭帯断裂手術後の再発については、いろいろな研究がありますが、再発率は20%と言われています。その半分の10%は逆の膝で、前十字靭帯断裂が起きています。一方で、日本国内に限りますと再発率自体が10パーセント程度というデータもあります」

 新盛院長はこう説明した。宮市のように、もう一方の膝で再発するケースは10%だが、元日本代表アタッカーは不運にも、その可能性が高まる二つの条件に当てはまるという。

「術後2年以内に再発するケースが多くなります。そして25歳以下の若年者は、再発率が高くなるという報告があります。術後2年は、特に気をつけなければいけません」

「2年以内」「25歳以下」という二つの条件に当てはまってしまった宮市。激しいボディコンタクトを伴うサッカーにおいて、負傷の危険は常に隣り合わせだが、前十字靭帯断裂の再発に関してはどのようにすれば、そのリスクを軽減できるのだろうか。新盛院長は予防策について、次のように解説している。

予防策にウェイトトレーニングを推奨

「予防としては、ウェイトトレーニングを重点的に勧めています。方向転換、着地、減速という3つの動作を改善する狙いがあります。これらの動作では『エキセントリック収縮』という筋肉の使い方が大事になります。伸張性収縮と呼ばれる、筋肉が伸びながらパワーを発揮する状態のことを言います。特に、減速をする際に必要になります。筋肉が一旦伸ばされた後に、収縮される時の筋肉の使い方を改善することができると思います」

 そして新盛院長は、「日本のサッカー選手は、ウェイトトレーニングにあまり取り組んでいません。若い年代から長期的に取り組むことが、予防策とパフォーマンスアップに向けて必要だと考えます」と、日本サッカー界に対してウェイトトレーニングの積極的な導入を提言していた。

[PROFILE]

新盛淳司

新浦安しんもり整骨院入船院代表

柔道整復師、鍼灸師

新浦安しんもり整骨院入船院、新浦安しんもり整骨院今川院、クローバー鍼灸整骨院代表。柔道整復師、鍼灸師の資格を持ち、関節ニュートラル整体普及協会会員。サッカー元日本代表MF中村俊輔をセルティック時代から支える。JFLブリオベッカ浦安のチーフトレーナーも務めている。

【了】

フットボールゾーンウェブ編集部●文 text by Football ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images