2017年東京都議会選挙 「都民ファースト」が圧勝(写真=つのだよしお/アフロ)

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小池百合子・東京都知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」が、7月2日の都議選に圧勝した。今後の焦点は、小池氏が新党を結党し、自ら首相に就くことを目指すかどうか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏が、各紙の報道からその可能性を探る――。

■「安倍1強」のゆがみを示す出来事

小池百合子・東京都知事が率いる地域政党「都民ファーストの会」が、7月2日に投開票された都議選に圧勝した。その結果、今後の最大の焦点は小池氏が新党を結党し、自ら首相に就くことを目指すかどうかに移る。

仮にそうなれば、初の女性都知事が初の女性首相となるわけだ。しかし、選挙翌日の3日付の新聞各紙の社説をいくら読んでもそのことに触れている社説はなかった。残念である。

3日付の朝日新聞の社説は大ききな1本作りで「都議選、自民大敗」「政権のおごりへの審判だ」との見出しを掲げ、次のように書き出す。

「東京都議選は自民党の歴史的な大敗に終わった」「小池百合子都知事への期待が大きな風を巻き起こしたことは間違いない。ただ自民党の敗北はそれだけでは説明できない。安倍政権のおごりと慢心に『NO』を告げる、有権者の審判と見るほかない」「『安倍1強』のゆがみを示す出来事は枚挙にいとまがない」

■「こんな人たちには負けられない」

朝日得意の安倍政権批判である。社説の文中、朝日社説はこうも批判する。

「次々にあらわになる『1強』のひずみに、報道各社の世論調査で内閣支持率が急落すると、首相は記者会見などで『反省』を口にした。しかしその後も、指摘された問題について正面から答えようとはしない」「首相と民意のズレを象徴したのは、都議選最終日のJR秋葉原駅前での首相の演説だ」「聴衆から首相への『辞めろ』コールがわき上がると、首相は『こんな人たちに負けるわけにはいかない』と声を張り上げた。首相にすれば、ごく一部の批判派による妨害だと考えたのだろう。だが都議選の結果は、首相の政権運営に対する『NO』の声は、決して一部にとどまらない現実を物語る」

もし安倍首相がこの社説の痛烈な文言を読んだら、顔が一瞬にして青ざめていくだろう。

さらに朝日社説は「これまで衆参両院の選挙に勝ち続けてきたことが、首相の力の源になってきた。地方選とはいえ、首都である都議選での大敗は、今後の首相の政権運営に影を落とすのは間違いない」

「来年9月の党総裁選、同年12月に任期満了を迎える衆院議員の選挙、さらには首相が旗を振る憲法改正への影響は避けられないだろう」と書く。

この後、「小池新党」に触れるのかと思いきや、違った。

「自民党都連を『敵』に見立て、政治的なエネルギーを高めていく手法はここまでだ。『挑戦者』として振る舞える期間は名実ともに終わった。首都を預かるトップとして、山積する課題を着実に解決していかなければならない」と小池都政への注文で終わってしまう。

■読売社説も安倍政権の「慢心」に注文

次に読売新聞の社説(3日付)。これも「都議選自民大敗」「『安倍1強』の慢心を反省せよ」「小池氏支持勢力の責任は大きい」といった見出しで、安倍政権の驕りと緩みに反省を求めている。

正論ではあるが、読売自体もこれまでの「安倍政権擁護、御用新聞」といった過ちについて反省すべきではないか。

読売社説は「安倍首相は、今回の敗北を重く受け止め、政治姿勢を真剣に反省しなければなるまい。国民の信頼回復には、政権全体の態勢を本格的立て直す必要がある」「言葉で『低姿勢』を強調するだけでは済まされない。思惑や疑問には丁寧に説明し、重要政策で着実に結果を出すべきだ」と主張する。

国会で「読売新聞の記事を参考に読んでほしい」という趣旨の答弁までした安倍首相。朝日社説だけではなく、この読売社説にも感じるところが大きいだろう。

■毎日、東京、日経、産経も似たり寄ったり

他の新聞の社説も見ていこう。まず毎日新聞は半本で、その見出しは「都議選で自民が歴史的惨敗」「おごりの代償と自覚せよ」だ。

社説の文中では「『加計学園』問題や『共謀罪』法の強引な裁決などで安倍政権への批判が強まる中、『小池都政』への評価以上に政権の今後を占う選挙として注目された」とわずかではあるが、今後の国政への影響に触れてはいる。

東京新聞は2本をひとつにまとめた社説だ。見出しは「大敗の自民」「『安倍政治』への怒りだ」と、「都民ファースト」「風で終わらせぬよう」である。割と分かりやすい社説だが、裏を返せば単純だともいえる。

日経新聞の社説も「安倍自民は歴史的惨敗の意味を考えよ」の見出し。産経新聞の社説も「小池勢力圧勝 都政改革の期待に応えよ」で、ともに半本の短い社説だった。

都議選がらみの記事でこの沙鴎一歩(筆者)が興味をもったのが、都議選当日の7月2日付の朝日新聞朝刊の「日曜に想う」である。この記事には「編集委員 曽我 豪」と書き手の名前がある。

「今日は東京都議選の投開票日だ」と書き出し、「この選挙には宿命がある。一自治体の議会選挙にもかかわらず、首都決戦だからと過度の注目にさらされる。無党派が風を起こす都市型選挙の典型でもある」「その結果、幸か不幸か、中央政界の変動を先取りして指し示す象徴選挙として運命づけられる。しかも風向きひとつで勝者と敗者は残酷なまでに入れ替わる」と続く。

■都議選の背負う「宿命」

「宿命」……。なるほどその通りだと思う。

記事はこれまでの都議選を振り返りながらそれぞれの都議選が中央政権に与えた影響に言及する。リクルート事件、消費税導入、宇野宗佑首相の女性スキャンダルと単語を挙げ、「平成元年の89年、参院選より一足早く都選で山が動いた。大逆風の結果、『自民惨敗 20議席減 社党は大躍進、3倍増』」と書く。

さらに「次の93年は主役が交代する。『日本新党が大躍進 社党惨敗、第4党に』。政治改革の爆発的な風に乗り、細川護熙代表率いる日本新党が政局のど真ん中に躍り出た」「続く衆院選を経て野党は日本新党を引き込んで細川非自民政権の樹立へ進み、自民党の長期一党支配に終止符を打つ。都議選はその号砲だった」

「2009年は、衆院選で政権交代をめざす民主にとって仕上げの前哨戦だった。『民主圧勝 第1党 自公、過半数割れ』」「13年は政権に返り咲いた安倍晋三首相が参院選で『1強』を完成させる直前だった。『自公完勝、過半数 民主第4党 共産下回る』」

ざっとこんな感じである。

■大勝利したからこそ、首相を目指す

なるほど都議選は昔から国政を左右していたのである。そうすると、今回の小池都知事の大勝利はどう国政に影響を与えるのか。

筆者はかつて小池氏にインタビューを行い、ちょっとした連載記事をある新聞に書いたことがある。

インタビューを通じて、小池氏は常に「国のリーダーはどうあるべきか」を考えて行動している政治家である、と感じた。

さて小池氏は新党を立ち上げ、国政に転じるかどうか。選挙後、小池氏本人は都政に全力を尽くすというようなことを言っているが、本心は国政、そして「初の女性首相」にあると思う。

小池氏は、細川、小泉ら元首相の信頼を得て、政権での地位を固め、不動のものにしてきた。そのことは何を意味するのか。「頂点を目指している」と考えても過言ではないだろう。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=つのだよしお/アフロ)