『動機づけのマネジメント』(プレジデント社刊・横田雅俊著)

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マネジメントの手法には流行がある。「結果管理」「プロセス管理」「顧客関係性強化」……。本当に結果の出るやり方はどれなのか。それは「動機づけ」だ。いま営業の世界で最も注目を集める「動機づけのマネジメント」について、経営コンサルタントの横田雅俊氏が解説する――。

■なぜ「行動管理」では結果が出ないのか

営業の世界にはマネジメント手法の流行があります。みなさんの会社では、いまどのような手法でマネジメントが行われているでしょうか。

いまの上司世代が若手のころ、営業組織は「結果管理」でマネジメントをしていました。結果とは、売り上げのこと。上司は月末や期末の目標予算をにらみながら、「今月は○万円足りない。なんとしても契約を取ってこい」と部下にはっぱをかけていました。

しかし、同じノルマを目標にしながら、きちんと達成できる部下とそうでない部下がいます。両者の違いは、結果を出すための行動にあるのではないか。そのような発想から生まれ、一気に広がったのが「行動管理」です。 例えば新規顧客を取るには、訪問先を増やす必要があります。訪問先を増やすには、アポを取るために電話をかける件数を増やさなければなりません。そこで管理指標を、売り上げという結果から、訪問件数やアポ件数という行動量にシフトさせたわけです。

さらに近年は、行動量だけでなく、契約を取るために必要な工程をきちんと踏んでいるかという「プロセス管理」にマネジメント対象がシフトしつつあります。単に訪問したというだけではなく、初回訪問でヒアリングをして、何回目かの訪問でキーマンへの提案をするというように、行動の中身を管理するのです。 また、既存顧客のロイヤリティを高めるという観点から、「顧客関係性マネジメント」も実施されています。人口減少時代においては、市場の需要そのものの拡大が望めません。新規開拓や成長をするためには既存客のロイヤリティを高めることも重要です。顧客との関係性に影響する指標を中心に管理しようというのが、ロイヤルカスタマー化の動きです。

営業組織は結果管理から行動管理へ、さらにプロセスマネジメントや顧客関係性マネジメントというように、管理手法を変遷させてきました。最終的に求められるのは結果ですが、その結果につなげるために、行動、プロセス、顧客関係性を指標として管理するように変化してきたわけです。

ただ、新しい管理手法にも限界はあります。例えば訪問件数などの行動量が増えれば売り上げが増えることもありますが、営業担当一人あたりの行動量には上限があります。生産性を高めて訪問件数を1.5倍にすることは可能かもしれませんが、さすがに三倍にするのは物理的に困難でしょう。

また、プロセス管理も、形式的になる傾向があります。やるべき行動が決まっているせいか、それをこなすことが目的化して、「決められたことはきちんとやりました」という浅い営業活動が目立つようになってきたのです。

■強い動機ならダイエットも成功する

行動量やプロセスといった外形的なものだけを管理しても、望む結果は得られない。その現実を目の当たりにして、最近注目されているのが「動機」です。同じ量、同じプロセスで行動しても、浅い動機で動いている人と、深い動機で動いている人では成果が違います。もしそうであれば、社員に深い動機づけができることが、良いマネジャーの条件なのではないか……。組織のマネジメントには、このような観点が必要なのです。

動機づけのマネジメントは、動機が強いと成果もあがるという前提に基づいています。では、なぜ動機が強いと、結果に結びつくのでしょうか。

ダイエットを例に説明しましょう。お気に入りの服がキツくなってきたからダイエットする人がいたとしましょう。サイズの合う服を買い直すこともできるので、動機としては弱い動機と言えます。一方、医者にメタボと診断され、実際に生活習慣病にかかってしまった人もいます。ダイエットしなければ命にかかわりますから、これは強い動機と言えます。

両者がダイエットを始めたとき、まず差が出るのは質です。どちらも食事の量を減らすかもしれませんが、動機が弱い人は、「少しくらいなら」と甘いものに手を出しがちです。それに対して動機が強い人は命がかかっているので、真剣に取り組みます。同じダイエットという行動をとっていても、行動の質が違うのです。

■結果を出すのは動機の強い人

継続性も差がつくポイントです。動機の弱い人は目標体重を達成する前に、ダイエットを中断しがちです。先ほど言ったように、似合う服を着たければサイズの合うものを新たに購入してもいい。ダイエット以外にも逃げ道があるので、諦める自分を正当化しやすい。しかし、生活習慣病の人は、「どうせ手術するからダイエットしなくてもいい」とは考えません。他に逃げ道はなく、やるしかない。動機が強ければ、長続きするのです。

このように、動機の強さは行動の「質」と「継続性」に影響を与えます。行動の質を高めて、さらにそれを継続的に行えば、当然、成果は出やすくなります。だから強い動機づけが重要なのです。

営業活動も同じです。プロセス管理で生じがちな表面的な営業活動も、動機が強ければ一歩踏み込んだものになるでしょう。また、週に20件の訪問が必要だとして、動機の強い人はそれを毎週続けられるに違いありません。継続的に実践できれば、そうでない人と比べて成果を出しやすいことは明白です。

もちろん営業以外の他の仕事でも、動機は肝心です。事務仕事はルーティン的なものが多く、日々、仕事量が変動することも少ないはずです。量が変わらないなら、なおのこと質の高いアウトプットを安定的に出し続けることを求められます。それができるのは、動機の強い人です。「毎日同じ仕事の繰り返しだから」と愚痴って嫌々やっている人と、「裏方の仕事だが、みんなの役に立ちたい」と前向きにとらえてやっている人では、後者のほうがいい仕事をするのです。

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カーナープロダクト代表取締役 横田雅俊(よこた・まさとし)
長野県生まれ。 工学部にて設計を専攻。設計士として活躍。その後、外資系ISO審査機関にて営業職を経験。「最年少」「最短」「最高」記録を更新し、世界8カ国2300人のトップセールスとなる。東京本社マネジャーに就任し、三年で同機関を日本有数のISO審査登録機関(単年登録件数日本No.1)へと急成長させる原動力として活躍。その後、営業に特化したコンサルティングファーム、株式会社カーナープロダクトを設立し、代表取締役に就任。主な著書に『営業は感情移入』『諦めない営業』など。近著に『動機づけのマネジメント』(プレジデント社)がある。

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(カーナープロダクト代表取締役 横田 雅俊)