Photo: 山田ちとら


ありふれたものにこそ、大発見が隠されているんです。

たとえば、上の写真。スーパーで買ってきたふつうの卵です。左右対称で上下非対称、一方は丸くなっているけどもう一方はとがっている一般的な「卵のかたち」です。

ただのタマゴか〜と思いきや、よくよく見てみると、それぞれ個性的でどれひとつ同じかたち・大きさではないことに気づきます。写真では、丸い順に左上から並べてみました。右下の卵は、左上と比べるとかなりとんがっていますね。

実は「卵のかたち」ってひとくくりには言えないくらいバリエーションが豊富なんです。鳥はみんな卵から生まれてくるんですが、鳥の種類の数だけ卵のかたち、色、大きさもさまざま。鳥の図鑑などで調べると、卵のかたちは大きく分けて4種類あるそうです。ひとつは、冒頭の写真のようないわゆる「卵形」。


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Image: Monticola / Shutterstock.com
先端がとがったウミガラスの卵


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Image: yhelfman / Shutterstock.com
ウミガラスはこんな岩場で卵を産みます


ふたつめは「洋梨形」。先端がとがって円錐形に近いことから、卵が巣から落ちても遠くまで転がらず、弧を描いて元の場所に戻ってくる習性があります。崖に巣をつくる海鳥の仲間の多くがこの形の卵を産むんだそうです。


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Image: Vishnevskiy Vasily / Shutterstock.com
トラフズクの卵。特に手前のものは円形に近い


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Image: Martin Prochazkacz / Shutterstock.com
フクロウの仲間、トラフズク


みっつめは「円形」。代表的なものはフクロウの卵でしょうか。完全な円、とはいきませんが、普段目にするニワトリの卵よりも、かなりまるいですよね。


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Image: ledokolua / Shutterstock.com
ダチョウの卵


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Image: SABPICS / Shutterstock.com
ダチョウのつがい


そしてよっつめは「楕円形」。楕円形の最たるものは、こちらのダチョウの卵。両端がほぼ同じようなとがり具合ですね。

これだけバリエーション豊富な卵のかたちは、いったいどうやって決まるんでしょうか。これまでは一度に産まれる卵の数や、巣の大きさ、住む環境などが卵の形状に影響すると考えられてはいたものの、具体的な因果関係は解明されていませんでした。研究対象が広すぎて難しい分野でもあったんですが、その卵をとりまく謎の殻を破ってみせたのがプリンストン大学のMary Stoddard(メアリー・ストッダード)助教授率いる研究チーム。権威あるScience誌の最新号にも大きく取り上げられ、卵の研究を一気に最新式にして学会に風穴を開けたんだそうです。たかが卵、されど卵ですね!


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Image: Mary Stoddard via Gizmodo US
プリンストン大学のストッダード助教授


ストッダード助教授のチームは、卵のかたちや大きさの違いがどのように発生して、どのように進化してきたかを調べるために、1,400種類ものの鳥の卵を調べました。その数、ざっと5万個! それらを分析することで、飛翔能力が高い鳥ほど細長くてとんがった卵を産む傾向が強いと結論づけました。

大いに科学者を驚かせたこの結論は、長年の努力の賜物でした。ストッダード助教授のチームはまずカリフォルニア大学バークレー校に保管されている膨大な数の鳥の卵を調べて、左右非対称性(asymmetry)と楕円性(ellipticity)の度合いをそれぞれX軸とY軸に沿ってマッピングしました。

さらに、その分布図をフクロウ目、アマツバメ目、カツオドリ目、スズメ目、チドリ目とに色分けしてみたところ、似たような環境を好み、似たような生態を持つ鳥同士でも、異なるかたちの卵を産んでいることがわかったのです。

では、卵を形作る要因が環境でも生態でもないのであれば、いったいなんなのか? その答えをつきとめるために、ストッダード助教授はコンピュータープログラムを作成し、遺伝子データが存在する1,400種類の鳥たちの特徴をデータ化して相関関係を表しました(プログラムは「卵」にちなんでEggxtractorと名づけられたそうです、笑)。

その中の要因のひとつである鳥の飛翔能力は、研究チーム独自のやり方で数値化されました。一般的に翼の先端がとんがっているほど飛翔能力が高いと判断されるそうです。フクロウのようによく飛ぶ鳥でも、滑降する飛翔スタイルだと全体的には飛翔能力が劣っていると見なされるのだとか。実際、フクロウの卵は丸いかたちですしね。そのように丹念に調べた結果、最終的に飛翔能力の有無が卵のかたちを予測するとわかったそうです。

飛ぶ能力をつかさどる鳥の体内構造が卵のかたちに影響する、とも言えます。でも、今回の発見はあくまで関連性が明らかになっただけで、必ずしも因果関係を結んでいるわけではないとストッダード助教授は自らの研究の限界についても語っています。さらに、このような広範囲の研究にはあてはまらない個々の種もある可能性を、エール大学のRichard Prum(リチャード・プルム)教授が指摘しています。

とはいえ、プルム教授は決してこの研究の成果を否定しているわけではないそうで、むしろ今後の研究にも大きな期待を寄せていると米ギズに熱く語ってくれました。「ストッダード助教授たち研究チームの最大の功績は、新しい研究分野を切り拓いたことだ。いままでマイナーな科学雑誌にしか取り沙汰されてこなかった卵の研究をはるかに上回る成果だ。今後は卵の色についても研究してほしい」との期待も。

ボン大学のMartin Sander(マーティン・サンダー)教授は、この発見が将来恐竜の研究にも役立つかもしれないと米ギズに語りました。「恐竜がどのように歩行や飛翔能力を進化させていったかを知る手がかりが、卵にあるのではないか? だとしたら、この研究に足りないものがあるとすれば恐竜の卵の化石だ」と話し、ストッダード助教授本人も恐竜の研究に対して意欲的だそうです。


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Photo: 山田ちとら


さて、ここまで読んでくださった読者のあなたも、卵のかたちに興味をお持ちなのではないでしょうか?

せっかくなので、オススメの卵研究スポットもご紹介しておきますね。夏休みの自由研究に役立つかもしれません。東京都武蔵野市にある井の頭自然文化園では、水生生物園(分園)に住んでいる鳥たちの卵も一緒に展示しています。


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Photo: 山田ちとら


様々な鳥の卵が展示され、大きさや形を比較できる「たまごハウス」をはじめタンチョウ、ゴイサギ、カリガネ、オシドリなど、いろいろな鳥の卵を間近に見ることができます。

ぜひ、あなたも卵博士になってみてくださいね。


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Photo: 山田ちとら
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Source: Science
Reference: バイオメカニズム学会, 大阪経済大学, 井の頭自然文化園, 日本卵業協会, Wikipedia 1, 2, 3, 4

Ryan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文]
(山田ちとら)