ホンダ・シビックType R(写真: American Honda Motor)

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 オートックワンは、2015年10月20日付け記事で「米メディアが絶賛! ホンダが本格的にHVから小排気量ターボ路線へ」と伝えている。

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 この記事で、「ホンダはHVを捨て、ダウンサイジングターボに本格的に乗り出した」とする見解は間違いだ。海外メーカーはHVに乗り遅れているので、ダウンサイジングターボの技術に頼っているとの見方もできる。海外メーカーが必ずしも先行していないこともあり、「外国かぶれ」は慎まなければならない。

 その証としては新しい燃費規制で北アメリカもEUもHVを飛ばしてEVに移行してしまおうとしている。そのEUの動きは、「トヨタ方式のHV」の効率の良さに対抗できるシステムがないためと考えられるのだ。電動とエンジンとのトルクミックス(THS)のかなめの、「電気式CVT」とトヨタが呼ぶ「トヨタ式THSシステム」で、ホンダもトヨタ式THSを超えることが出来ないでいるのだ。

 排気ガス規制は本格的になってきている。この記事の当時(2015/10/20)でもすでにカリフォルニア州の次の燃費規制は知られていたはずで、どれほどホンダ・新型シビックの燃費が良くても「HVからダウンサイジングターボへの本格的移行をホンダが行っている」など、この記事の主張は技術的・販売戦略として、あり得ないことは分るはずだ。

■EV普及を促すカリフォルニア州の燃費規制・EUの新規性ZEV

 ZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)とは、走行することによるCO2排出量ゼロを目指すことである。BEV(電動)やFCEV(燃料電池)しか実現できていないことで、現在のところ日産・リーフ、トヨタ・MIRAI、ホンダ・クラリティ―などごく少数である。ホンダ・新型シビックなどは将来、消え去る運命なのだ。

 ZEVの普及を目指す規制が2018年から始まろうとしている中、この冒頭で取り上げた「オートックワン」の記事で、ダウンサイジングターボ技術についての位置付けが間違っている。ホンダが本格的にHVを捨てるのではなく、よりZEVに近い技術にシフトする方向性の中でのダウンサイジングである。つまり発電用エンジンとして、また本格的EVに移行するまでの過渡的技術に留まる可能性が考えられるのだ。

 燃費をよくするのに排気量を少なくすればよいことは明白だった。足りない馬力をターボチャージャーすれば確保できることも分っていた。しかし、ターボチャージャーに頼れば燃費が下がる矛盾を抱えていたのだ。そこで圧縮して高温となり膨張した空気を、冷やして圧縮したり、気筒内噴射(直接噴射)を採用してノッキングを防いだり、涙ぐましい熱効率の向上策が考えられてきた。

 EUの2021年規制も厳しさを増す中で、HVでは乗り越えられない規制値が設定されている現在、PHEVまたはPHV(プラグイン・ハイブリッド)以上のEVを目指す動きが世界的な流れだ。その中で発電用エンジンとしてガソリンエンジンはしばらくの間、生き残るものと理解されてきた。ダウンサイジングターボとて同じ運命と目されている。

■ガソリン・エンジンの熱効率はまもなく60%

 しかし、大事な検討が抜け落ちている。発電所も石油・石炭を使ってCO2を排出しているのだ。自然エネルギーに置き換えても、装置を作るときにはCO2を排出する。また送電ロスも大きい。その中でガソリンエンジンの熱効率が上がってきている。アトキンソンサイクル・ミラーサイクルなどの普及もあるのだが、41%のところまで来た。しかし、これ以上の伸びがないと、自然エネルギー発電に対抗できない。

 だが、新圧縮エンジンが登場した。ラジエーターを必要とせず、熱効率は60%に達すると言う。発電用エンジンとしてなら数年で実用化が可能であると見られ、この新しい圧縮システムは各自動車メーカーの注目を集めている。

知恵の輪サイト 「熱効率60%の内燃機関が可能か?」早稲田大学 内藤健教授研究室

 このように集中して配電するシステムが効率的なのか、個別に発電してバッテリーに充電、EV走行とするのか、はたまたエンジン直結のほうが結局は熱効率で優れているのかは、まだはっきりとはしない。技術的進歩は世界を変えるが、ダウンサイジングターボの世界は、まだまだ目の前の問題を捉えているだけなのだ。

 しかし「不都合な真実(地球温暖化)」は刻々と迫りつつあることだけは確かだ。