By ddaa

スタンフォード大学の学生の3割が試した経験を持つというドラッグ「MDMA」は、ほとんどの国で違法薬物として法律で取り締まられています。インペリアル・カレッジ・ロンドンでは、そんなMDMAをアルコール依存症患者向けのサイコセラピーの治療薬として投薬する世界初の臨床試験が行われようとしています。

World's first trials of MDMA to treat alcohol addiction set to begin | Science | The Guardian

https://www.theguardian.com/science/2017/jun/30/world-first-trials-mdma-treat-alcohol-addiction-set-begin

MDMAは、人生でとても良い出来事が起きた時に放出される「セロトニン」を過剰放出させ、摂取すると3時間〜8時間にわたって幸せな気持ちが持続する作用を持っています。MDMAの成分にアンフェタミンなどを加えたものは「エクスタシー」として出回っていますが、どちらも違法薬物であり、服用後に気分の落ち込みや抑鬱感・異常な疲労感といったひどい副作用が発生します。詳しくMDMAについて知るには、以下の記事を読むとよくわかります。

パーティドラッグとして若者に人気のMDMAが脳に与える影響と副作用がよく分かるムービー - GIGAZINE



人体に悪影響があるからこそ法律で禁じられているMDMAですが、用法・用量を調節することでMDMAの主な効果をPTSDの治療に活用することを目指す研究も行われています。インペリアル・カレッジ・ロンドンはいくつかの薬物をサイコセラピーなどの精神療法と併用することで、中毒症状を克服するための従来の治療法より優れたものになるかどうかを研究しているとのこと。その研究の一環として、研究チームはMDMAを小規模試験に使用するための倫理審査による承認を受け、2カ月以内に世界初のMDMAを投与するアルコール依存症治療の臨床試験を実施する予定です。

インペリアル・カレッジ・ロンドンで臨床試験を主導する精神科医のベン・セッサ氏は、「私が受け持つアルコール依存症患者の多くは過去に得た何らかのトラウマを心に抱えており、トラウマが中毒を生み出しています。MDMAはトラウマを抱えている人にうまく作用し、共感を持つ手助けをしてくれるのです」と説明しています。

今回の臨床試験に参加するのは、プログラムに応募してきた20人のアルコール依存症患者。いずれの患者も1日にワインボトル5本分に相当するアルコールを摂取してしまう重度のアルコール依存症を患っており、ほかの従来の治療を試すも繰り返しアルコール依存症を再発しているとのこと。臨床試験は体内のアルコールなどを抜くデトックス後に、薬物なしで通常のセラピーセッションが2回行われます。続いてカプセル型の高容量MDMAを投与するセラピーセッションが終日行われ、セッション中の患者はセラピストと話しをしたり、アイマスクをして静かに瞑想したりして過ごす予定です。



By Sean Stephens

セッサ氏によると、MDMAは患者とセラピストの関係性を強化するために使用されるため、長期的な精神疾患を引き起こす可能性は限りなく低くコントロールされているとのこと。「このままでは現代の精神医学の治療法は100年たっても本当に貧弱なままです。これまでアルコール依存症の治療にMDMAが使われた例はありませんが、アルコール依存症患者の3年後の再発率は90%と非常に高いのです」と、セッサ氏はMDMAの必要性をカンファレンスで訴えています。

なお、近年では違法な幻覚剤を医学に用いるという関心は高まりつつあり、2016年にはマジックマッシュルームの有効成分である「シロシビン」が重度のうつ病に有効であることを、インペリアル・カレッジ・ロンドンが臨床試験で証明しています。アメリカでもMDMAが退役軍人のPTSD治療に非常に有効であるとして、フェーズ3の臨床試験を実施するための承認を受けているとのこと。

しかし一部ではMDMAを用いた治療に懐疑的な医者も存在し、キングス・カレッジ・ロンドンのエド・デイ医師もそのひとり。デイ氏はMDMAがPTSDやうつ病の治療に有効であることは認めながらも、アルコール依存症治療に用いることに対しては反対の姿勢を見せており、「最先端の薬物・アルコール依存症防止プログラムに対する資金提供を再開するべき」と主張しています。