日本人の恋愛離れ、発達しすぎた疑似恋愛市場が一因? 海外が驚く独創性

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 日本人のセックス離れが海外で報じられることがある。男性の「草食化」や、カップル間のセックスレスなど、その内容は様々だ。だからといって日本人が性的な関心を失っていると結論づけることはできない。

 インターネット上には日々、膨大な数のセクシー動画がアップされ、様々なサービスが手招きをしている。また、繁華街では今日もあらゆる色のネオンが光っているし、電車の中吊り広告には、セックスを連想させる単語が並んでいる。英国の大衆紙サンのデジタル版では、こういった日本の性産業の多様化に着目し、若者のセックスや恋愛離れと関連付けている。

◆海外メディアが「最もクリエイティブ」と評する日本の疑似恋愛市場
 同紙の記事中でとくに強調されているのが、日本の“疑似恋愛市場”におけるサービス内容の多様化だ。例えば、キャバクラやホストクラブでは、時間あたりの定められた料金を支払って、恋愛のような駆け引きを楽しみながらおもてなしを受ける。もう少し従順な話し相手が欲しければ、メイドのいるマッサージ店や喫茶店がある。

 生身の人間と向き合うのが面倒ならば、女性の質感や香りを再現したアダルトグッズは無数にあるし、健気に「主人」の帰りを待ってくれる大きな瞳のバーチャルキャラクターもいる。さらに、金銭と引き換えに性欲を満たせる場所はいたるところに存在する。

 こうした文化について、サン紙の記者は、「日本の性産業は世界で最もクリエイティブだ」と皮肉をこめて述べ、日本人の恋愛観に影響を与えているのでは、と考察している。

◆精巧で美しい「ラブドール」に海外メディアが注目
「クリエイティブ」と評される日本の性産業や疑似恋愛市場の中で、海外のメディアが注目しているのがメイド・イン・ジャパンの「ラブドール」だ。ラブドールとは、本物の女性と見紛うほどの精巧さと、物憂げな表情、そして、やわらかな質感と性器をもつシリコーン製の人形だ。

 先日、ラブドールの代表的なメーカー、オリエント工業の創業40周年記念展の模様がサン紙で報じられたほか、デイリーメール紙やワシントンポスト紙でも、ラブドールを本物の恋人のように扱う日本人男性たちの姿が紹介され、大きな反響を呼んでいる。

 6月30日付のデイリーメールの記事に対しては、海外の読者から人形の精巧さに驚くコメントが寄せられるとともに、「『彼女たち』は、お金もかからないし、怒鳴ったりしないからね」といった共感の声、「言葉もでない」という驚嘆の声、「本当に孤独だ」と憐れむ声など、公開後わずか数日で500件を超えるコメントが書き込まれている。

◆面倒くさい?お金がない?恋愛離れに対する海外の分析
 日本人がリアルな恋愛から離れ出した背景として、サン紙はマンチェスター大学で日本研究をしているシャロン・キンセラ教授にインタビュー。疑似恋愛市場の活況化の背景として、長く続く日本の不景気を理由に挙げている。日本の若者に恋愛をして家族を持つ余裕がなくなりつつある、というのだ。

 一方で、デイリーメールでは日本の出生率が低下するなか、「草食系」と呼ばれる男性が増加し、恋愛や伝統的な男性像に背を向け、穏やかで競争のない生活を望んでいると分析している。また、「将来、ドールとの関係を選択する男性はさらに増加するでしょうね」といったラブドールを愛好する男性の声も紹介している。

 心理学者の河合隼雄氏は、1980年の時点で、未婚者の中には家族のしがらみで個性や自由が殺される不安を抱いている男女がいることを指摘しつつ、現代の家族制度の限界を考察している(講談社現代新書『家族関係を考える』参照)。同時に、家族なしの孤独が個性を破壊する作用を持つとも述べている。

 結婚や恋愛は「手間とお金がかかるもの」であることは確かだし、家族関係や男女の役割がきっちりと固定されてきた両親の後姿に息苦しさを感じてきた若者は少なくないだろう。結婚により息苦しい人間関係に巻き込まれるより、お金とときめきを交換する場所を選択することで孤独から身を守るのは、自然な流れと言えるのかもしれない。とはいえ、河合氏の「自分のエネルギーを節約しようとし、かえって節約疲れになっているようにも思われる」という言葉は示唆に富んでいる。

 芥川賞作家の村田沙耶香さんの著書『消滅世界』の中では、生殖と快楽が切り離された社会で、夫婦や恋人間のセックスがほぼ消滅し、男女がお気に入りの「キャラ」で自慰行為するシーンが登場する。これが近未来の日本のカップルの日常となるのか、もしくは、恋愛離れが「家族を持つことが当然であり、最上の幸せ」とされた息苦しい風潮からの反動にすぎないのか、今の段階では答えを出すのはまだ難易だといえる。