近い将来、地球に接近して衝突する可能性が存在する小惑星に人工物を衝突させ、地球接近軌道から外してしまうという宇宙実験の計画が承認され、NASAは2022年の実施に向けた計画策定の段階に入ったことを発表しました。

NASA’S First Asteroid Deflection Mission Enters Next Design Phase | NASA

https://www.nasa.gov/feature/nasa-s-first-asteroid-deflection-mission-enters-next-design-phase

NASA unveils plan to test asteroid defense technique

https://www.click2houston.com/news/national/nasa-unveils-plan-to-test-asteroid-defense-technique

この計画は、NASAがジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所と共同で進めている「DARTミッション」(Double Asteroid Redirection Test:二重惑星の行き先変更試験)と呼ばれるもので、ギリシャ語で「双子」の意味を持つ二重小惑星「ディディモス」を対象にしたもの。ディディモスは「ディディモスA」と呼ばれる直径780メートルの天体のまわりを「ディディモスB」と呼ばれる直径160メートルの天体が周回するペアとなっており、ディディモスBは別名「ディディムーン」(ディディモス+ムーン)とも呼ばれます。

NASAの計画では、地球からロケットで打ち上げられた、冷蔵庫ほどの大きさの宇宙機をディディモスに向かわせ、秒速6kmという高速でディディモスBに衝突させることで軌道を変化させます。そしてその後、軌道に狂いが生じたディディモスBはディディモスAに接近・衝突することで、両者の軌道そのものを変化させます。



なお、今回の実験に用いられるディディモスは地球に衝突する危険性はない惑星とのこと。宇宙機を衝突させた際には、赤外線カメラなどの装置を用いて地表温度の変化や飛散する粉塵やガスの様子を観測し、小惑星の組成や密度などを調査する予定になっています。

Dart Moon Collision - YouTube

この手法は「キネティック・インパクター・テクニック」と呼ばれており、複数考えられている天体軌道変更技術の1つ。宇宙機の衝突が与えるエネルギーは小さいものの、その後長い時間をかけて地球に接近する間にズレが大きくなり、衝突の危険を回避させられるものとして考案されてきたものです。

NASAで小惑星の危険に対する防衛を担当するリンゼイ・ジョンソン氏は「DARTは、将来の惑星衝突を回避することを狙ったキネティック・インパクター・テクニックを実施する初めてのミッションです。今回の承認により、地球に衝突する危険を持たない惑星を使った歴史的な実験の実施に向けた新しい一歩が踏み出されます」と語っています。

NASAなどの宇宙開発機関は、地球に接近する可能性のある天体を観測してその危険度を調査していますが、実際に把握されているのは10%ほどでしかないということも明らかになっています。文字どおり「星の数ほど」もある天体で、しかも自ら光を放たないものを見つけるのは非常に困難であるといえ、2013年にロシアに隕石が落下したチェリャビンスク州の隕石落下は事前の検知が全く行われていなかったことからもその難しさがわかります。

地球に衝突しそうな小惑星はまだ10%しか発見できていない - GIGAZINE



なお、DARTミッションはESA(欧州宇宙機関)らと共同で進めるAIDA(Asteroid Impact and Deflection Assessment:小惑星への衝突と偏位に関する調査)ミッションの一部として実施されるもの。まず、ESAが宇宙観測機「Asteroid Impact Monitor」(AIM:小惑星衝突観測機)を打ち上げてディディモスに到達させ、事前に観測を実施します。そしてDARTがAIMに4カ月遅れてディディモスに到達し、実際に衝突させて軌道の変化を確認するという壮大な計画となっています。

Asteroid Impact Mission - YouTube