【インタビュー】バロック・プロジェクト「自分にとって予想外のものを作りたい」

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6月22日、バロック・プロジェクトが来日公演を開催した。

◆バロック・プロジェクト画像

2004年、キーボーディストのルカ・ザッビーニを中心にイタリアのボローニャで結成されたバロック・プロジェクトは、これまでに5枚のスタジオアルバムをリリースしているプログレ・バンドだ。最新アルバム『Detachment』は、いわゆるイタリアンプログレとは異なるむしろブリティッシュの要素が強いサウンドで、EL&Pやイエスなどよりもイット・バイツのようなニュアンスが感じられる。楽曲はどれもメロディックで哀愁と緊張感があり、果たしてどんなショウを観せてくれるのか、初めてライブを観る高揚感に胸が躍る。

単独公演ではなかったものの、北欧の若手シンフォニック楽団ムーン・サファリとのカップリング公演で、チケットは完全にソールドアウト。キース・エマーソン愛に溢れる「Overture」からのステージで幕を開けたが、ルカ・ザッビーニの存在感は抜群だ。変拍子満載の楽曲も演奏陣は確実で非常に安定感がある。「My Silent Sea」ではルカとアレックス・マリ(Vo)の2人がともにアコースティック・ギターとボーカルをとり、聴き応えもたっぷり。もともとロックシンガーであるアレックスは表情も豊かであり、ルカの歌にも歌心がある。緊張感が連続するクラシカルな「Fool's Epilogue」ではバロック音楽とロックの融合が堪能でき、ドラマティックな「Broken」では会場が感動で包まれた。各所でのキーボードとギターのユニゾンを響かせ、スリリングなルカのソロも圧巻だ。細身で美しいルックスも、そのスター性を一層引き立てる。

曲の終盤で観客からのフライング拍手に「まだだよ」と合図をし「OK」と締めの拍手を求める場面は、圧倒され続けた中で会場が和んだ笑顔のひとときとなった。中盤にはハイライトとなる楽曲が軒を連ね、ラストは「The Longest Sigh」でしっとりと締めくくられた。

この日、ライブを前に、ルカにインタビューを敢行することができた。お相手はYUHKIだ。日本にも多くの優れたキーボーディストが存在するが、ヘヴィ・メタルからプログメタルで優れたセンスを持つGalneryus / ALHAMBRAのキーボーディストYUHKIは、ルカ・ザッビーニと同様、キース・エマーソンに多大なる影響を受けたプレイヤーである。

──YUHKIは、キース・エマーソンやエディ・ジョブソンに影響受けているキーボードプレイヤーなんですよ。

YUHKI:でも演っているバンドはヘヴィ・メタルです(笑)。僕の事は知らないですよね?

ルカ:ビデオを観ましたよ。ストリングスで始まる教会の。

YUHKI:本当ですか?あの曲は「Angel of Sal vation」、チャイコフスキーがモチーフです。

ルカ:チャイコフスキーのピアノコンチェルトは大好きだよ。

YUHKI:いいですよね。

──バロック・プロジェクトはモダンで洗練されたサウンドですが、アイディアはどんなところから?

ルカ:インスピレーションは色々なところへ行って得るけれど、必ずしも世界中を旅して周った事だけでなくて、例えば近くの田舎を自転車でまわったりする時でも湧くよ。『Detachment』は、過去のアルバムと比べると自分のやりたい事に一番近い、自分の心に一番近いものになった。僕にとってはとても重要な位置を占めているアルバムだよ。

YUHKI:初めて聴いた作品がこの最新作『Detachment』だったんですが、バラエティに富んでいて素晴らしいと思う。僕はピアノと歌だけの「Alone」が凄く好き。キース・エマーソンだけでなく、クイーンやザ・ビートルズの影響も感じられる音楽をこんな若い方がやっている事に驚きましたね。

ルカ:え?若い?33歳だよ(笑)。

YUHKI:若い若い。

ルカ:好きなバンドを聞かれると、EL&P、ジェルロ・タル、ザ・ビートルズと答えるんだけど、ポリスやコールド・プレイも好きなんだ。今は音楽の幅が広がって色々なものを聴いている。僕の好きな音楽は、ジャンルを問わず“正直な音楽”だよ。心からの音楽であればどんなジャンルでも好きさ。特に、今回の『Detachment』にはそれが出ていて、「Rescue Me」はポリス、「Old Ghost」だとコールド・プレイとかの影響がわかると思う。僕は10歳の頃からプログレ、EL&Pやイエスをずっと聴いてきたからプログレの王道から外れたところのものをやってみたいと思うようになったんだ。以前のアルバムはもっとクラシック色が強くて、バッハやベートーヴェンの影響も感じられるけど、ニューアルバムでは違った事がやりたくて、よりモダンなバンドの影響を受けている。モダンで洗練されたサウンドって言うのは、まさに言い得ていると思うよ。

YUHKI:補足すると、僕にとって「Alone」が意外過ぎて印象に残ったんですよ。

ルカ:これはね、凄く落ち込んだ失恋の曲なんだよ。

YUHKI:「Broken」も(笑)?

ルカ:そうだよ。「Happy to See You」や「One Day」もたぶん(笑)。

YUHKI:日本で紹介されるプログレバンドって、EL&Pやイエスとかジェネシスとかのフォロワー…焼き直しみたいなものが多いと思うんです。だけどバロック・プロジェクトは、全く新しいサウンドで世界中で聴かれるロックだと思うんですよね。このへんはルカはどう感じてますか?

ルカ:1stアルバムは悲惨だよ。耐えられない。

YUHKI:はは(爆笑)、僕も初めてアルバムを作った時は同じく悲惨だった(笑)。

ルカ:最初の頃はやたらとキース・エマーソンと言われてね、やっと今はバロック・プロジェクトとしてのアイデンティティができたんだ。

──意図的に新たなサウンドに向かっていったんですね。

ルカ:そうだよ。あらゆる音楽が好きだから、ミックスして新しい音楽が生まれることを心掛けているんだ。アルゼンチンタンゴとかもね。日本の音楽はまだよく知らないけど、知ればそれもありかな。そうやってひとつの箱に詰め込んで行くのが好きなんだ。

YUHKI:おこがましいけど、僕も同じ考えなので凄く共感できます。

──もっとポップな曲には興味ありますか?

ルカ:若い人たちにも聴いてもらいたいから、「Rescue Me」や「Happy to See You」のラジオエディットも作りたいんだけど、プログレの曲を短くするのはなかなか簡単な事ではないからね。できればそういう事もやって、幅広く人々に聴いてもらいたいと思うけど。

YUHKI:最近お気に入りの機材は何ですか?

ルカ:KORGのM1が大好きなんだ。1990年からずっと使っている。RolandのJUNO α1も1985年から使っている。あとRD700、アコースティックギターやヘフナーもね。僕はポール・マッカートニーの大ファンだから。

YUHKI:M-Audioのコントローラーで、プラグインにパソコンの音源を使っていると思うんですけど、あれはどんな音を出しているんですか?

ルカ:MIDIコントローラーだよ。ライブでコンピューターを使うのはやめたんだ。ステージで不安になってしまうんだよ「クラッシュしたらどうしよう」とか、あれこれ心配事が増えちゃう。マザーキーボードとしてサウンドモチーフやサンプラーのハモンドオルガンやミニムーグはUSBで入れて、あとはMIDIで繋げて全部他に送っているよ。

YUHKI:サンプラーを使ってるんですね、パソコンは使っていないんだ…。

ルカ:これでやっと安心して弾けるようになったよ。

YUHKI:それは凄くわかります。

──2人とも自身でミックスやマスタリングも行ないますが、困難なところは?

ルカ:他のメンバーがやりたくないから僕がやるしかないんだ(笑)。キーボードプレイヤージョブ…とても残念だよ(笑)。

YUHKI:激しく同感(笑)。

ルカ:大変ではあるけど好きな作業でもあるよ。イコライザーやコンプレッサーかけたり、ミュージシャンとはまた別世界だしそれはそれで魅力もある。

YUHKI:僕自身も最終的なアウトプットを人任せにできなくて、それでやむを得ず5年前くらいからやり始めて今やっと自分の音が作れるようになった感じですよ。自分の思った音は自分にしかわからないし、自分の音を言葉では決して伝えられない。

ルカ:全く同じだよ。ある日、「君のベースサウンドはオレンジみたいだよ」って言われて、何だよそれ?って(笑)。

YUHKI:プログレッシブな言い回しですね(笑)。

ルカ:ジョン・レノン的な発想だよ(笑)。

YUHKI:オレンジってアンプの事じゃなくて?

ルカ:果物のオレンジさ(笑)。

YUHKI:天才。

──近年、プログレ界の大物たちが次々と他界してしまいましたが、彼らを受け継ぎたいとは思いませんか?

ルカ:プログレッシブという言葉の本来の意味は前進するという意味だから、過去を全く否定するのではなくて過去に目を向けつつも前には進まなきゃいけない。それはプログレ界の大物たちが1960〜1970年代に実際にやっていたし、あの時代にヨーロッパの伝統的な音楽や色々なものをミックスさせてプログレッシブなものを作っていたよね。僕は今、それと全く同じ事をしているんだ。

YUHKI:もの凄く共感できる。それをその若さでやる君が凄いよ。僕が君くらいの頃は、速く弾く事しか考えてなかったもん(笑)。それにイケメンだし、ベースもギターも弾くでしょう?多才だよね、只者じゃないよね、ちょっとジェラシーだよ(笑)。

ルカ:いやいや、そんなこと考えないで(笑)。

YUHKI:『Detachment』で自分のスタイルを確立したと思うんですけど、ソロでやってみたい事は?

ルカ:ルカ・ザッビーニ名義では作りたくないんだ、だからソロアルバムはない。バロック・プロジェクトの中でまた新しい事をやりたいね。意外性が凄く大事で、自分で自分を驚かせる事ができなかったら音楽をやめるくらいの気持ちでいるよ。自分にとって予想外のものを作りたい、それがチャレンジだよ。

YUHKI:僕も曲ができた時が一番嬉しいんですよ、「俺は天才じゃないか」と思う(笑)。その驚きがないと…自分自身が楽しくないと続けられないのは全く同じですね。

ルカ:まさしく。

YUHKI:バンドを凄く大事にしてるんだと思うんだけど、各メンバーの良さを上手く引き出すプロデュース的な能力も凄いと思うよ。

ルカ:バンドをやっている以上、各メンバーの良さを引き出すのは自分の使命だと思うし、自分のやっている事を考えるとプロデューサーかなとも思うけどね。とにかくバンドをやって行きたいよ。

──では、日本のファンへメッセージを。

ルカ:素晴らしいパフォーマンスを絶対に観せるよ。みんなが気に入って楽しんでくれるといいな。

取材・文:Sweeet Rock / Aki
編集:BARKS編集部
写真:Emili Muraki

<Barock Project 〜Symphonic Night Vol.1 〜>
2017年6月22日@Shibuya O-East
1.Overture
2.Gold
3.My Silent Sea
4.Fool's Epilogue
5.Broken
6.Skyline
〜Encore〜
7.The Longest Sigh