マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督【写真:Getty Images】

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1年目は想定外の失態。2年目こそリベンジを

 昨夏、ジョゼップ・グアルディオラを新監督に任命し、大きな期待とともにシーズン開幕を迎えたマンチェスター・シティ。だがその期待とは裏腹に、16/17シーズンは無冠に終わった。2季目となる17/18シーズン、稀代の名将が率いるチームはどのような姿を見せるのだろうか。(取材・文:Kozo Matsuzawa / 松澤浩三【イングランド】)

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 2年目のシーズンを迎えるマンチェスター・シティで、ペップ・グアルディオラ監督の周辺は慌ただしく動いている。

 イングランドでのデビューシーズンは無冠。欧州のトップクラブの監督になってからの計8年間で、国内リーグ戦3位以下で終えたのが最初のことであれば、チャンピオンズリーグで準々決勝に進まなかったのも初めての経験だった(バルセロナとバイエルン・ミュンヘン時代は優勝2回、セミファイナル進出5回)。

 現役時代は優秀な選手だったが、指導者としてはそのさらに上をいく抜群の経歴を持つだけに、FAカップとリーグカップという国内カップ戦のタイトルさえ逃す失態はアンシンカブル、つまりまるで想定外の展開だった。

 グアルディオラ監督就任はシティ関係者の誰もが望んだアポイントメントだったが、群雄割拠のプレミアリーグとはいえ、2年連続の失態は決して許されない。またそうなった際には、プライドの高い本人も辞意を固める可能性もある。

 それだけに、彼を連れてきたフロントも必死だ。少しでも新シーズンの成功の確度を高めようと、クラブは早い段階から移籍市場で精力的に立ち回っており、シティの最終戦終了後のわずか6日後、5月27日にモナコからプレーメーカーのベルナルド・シルバの獲得を発表。その数日後にはベンフィカの気鋭ゴールキーパー、エデルソンの移籍もまとめあげている。

 ともにまだ22歳、23歳と若く、特に前者はインサイドハーフと2列目ならどこでもこなせる攻撃的MFで、昨季のCLでシティと対戦した際には、過去3シーズンの同僚であり今夏の移籍市場を賑わしているキリアン・ムバッペ以上の輝きを放っていたほどだ。

補強が急務となっているサイドバック

 もともとシティの2列目にはケビン・デブルイネ、レロイ・サネ、ラヒーム・スターリングという有能なアタッカーが揃うが、ベルナルドと同姓のダビドが同列、もしくはインサイドハーフに入っていない場合は攻撃が大幅にトーンダウンする場面も見られた。

 グアルディオラ監督は、ファイナルサードでオフェンスのスイッチを押し切れないチームにフラストレーションを溜めたこともあったが、ポルトガル代表の加入は新たなダイメンションをもたらすことが期待される。

 一方のエデルソンの獲得には、昨季に多くの人が懐疑的な目を向けて、最終的に失笑を買うことになる「ジョー・ハート放出→クラウディオ・ブラーボ獲得→失敗」という、監督、さらにクラブ自体の汚名返上が懸かっている。

 GKに必要な体躯を持ち、フィジカルも強い。瞬時のスピードもあるだけに、エデルソンの前に入るディフェンスラインには小柄なブラーボにはない安心感が生まれるはずだ。ペップ好みのGKに欠かせない足もとの技術、さらに時に局面を打開するために必要なロングキックもある。

 昨今のトランスファー・マーケットは、プレミアを中心に史上空前のインフレーションが進んでいるとはいえ、この両者には4300万ポンドと3500万ポンドの巨額資金が投下された。どちらも7月1日から正式にシティの一員となり、チームの中心になることが期待されている。

 ほかのポジションに目を向けると、パブロ・サバレタ、バカリ・サーニャ、そしてガエル・クリシが抜けたサイドバックの補強はマストだ。レギュラークラスで唯一残ったのは契約を1年残しているアレックス・コラロフのみ。このコラロフさえも放出の可能性が残されている。

 ファンが期待するのは将来が嘱望されるパブロ・マッフェオ(右)とアンジェリーノ(左)というユース出身の2人の登用。

 しかしながら右SBには、まずバックアッパーとして、ユベントスとの契約を打ち切ったダニ・アウベスがバルサ時代の恩師のもとへやって来ることが予想され、そしてレギュラーには、トットナムからイングランド代表でスタメンを張るカイル・ウォーカーを5000万ポンド近い移籍金で強奪するというのが、シティの描く青写真だ。

ヤヤ・トゥーレが契約延長。アンカー補強の可能性は低い

 ちなみに、ウォーカーがトットナムを退団した場合、その後釜を務めると考えられているのが、皮肉にも9歳から21歳までの12年間をシティアカデミーで過ごしたキーラン・トリッピア。2年前に350万ポンドの安値でスパーズへ移籍し、現在はイングランド代表に選出されるまでに成長している。

 左サイドには、今夏ビッグクラブにとって格好の草刈り場になりつつあるモナコのベンジャミン・メンディの獲得が有力視される一方、対抗馬としてはサウサンプトンのバートランドの名前が挙がる。

 両者を獲得する可能性もあるが、どちらも4000万ポンドの値札がつけられているだけに、2者択一になることが想定される。またバートランドについては、ここにきて、ケレチ・イヘナチョとの交換トレード(+金銭)のプランも報道されている。両クラブにとってお互いの弱点を埋める効果的な補強になるだけに、これが叶えば理想的な結果といえるだろう。

 アンカーの補強の話も聞かれるが、先日ヤヤ・トゥーレとの契約延長も決まり、さらにペップは20歳のアレックス・ガルシアを高く買っている。2015年にビシャレアルからやってきたこの小柄なMFは、戦術眼に優れ、指揮官好みの選手である。昨季は前大会を通じて8試合の出場機会が与えられ、新シーズンにはより多くの試合数をこなすとみるのが妥当だ。

 一方で、前述のアンジェリーノやマッフェオとともに、このガルシアも昨季ラ・リーガに昇格を決めたジローナへ送り武者修行をさせると報道も出ている。それでも、イルカイ・ギュンドアンとフェルナンジーニョ、さらにフェルナンドもいるポジションなだけに、補強の可能性は少ないだろう。

最大の目玉は、アレクシス・サンチェスか

 今後の最大の目玉は、アーセナルのアレクシス・サンチェスの動向だろう。本人は、現在参戦中のコンフェデレーションズ・カップの記者会見で、「決意は固まっている。すべては大会後に話す」と説明したが、移籍を選ぶことが予想される。そしてその場合には、移籍先の最有力候補がシティとされている。

 ガナーズは強硬な姿勢で反発することが予想される一方で、残された契約年数は1年のため、今夏に売却しなければ来夏にはフリートランスファーとなってしまう。

 セルヒオ・アグエロとのトレードであれば考慮するとも言われるが、トップレベルの選手のトレードはほぼ皆無のために可能性は極少だろう。ただもしサンチェスを獲得することになれば、タイプは違うとはいえ、アグエロの去就にも影響を与えるのは確実だ。

 5月には、カルドゥーン・アル・ムバラク会長が「あり得ないこと」とし、グアルディオラ監督も「セルヒオは来季もここにいる」と話していたものの、すでに1月に加入したガブリエル・ジェズスは「次代のエース」とされ、そこにサンチェスまで加わるとなれば、元々ペップのスタイルには最適ではない“純CFタイプ”のアグエロの立場はさらに厳しくなることは間違いない。

 果たして、8月12日のブライトン戦ではどのようなメンバーで新シーズンを迎えるのか。

 また同31日午後11時にトランスファーウィンドウが閉まる際には、アグエロの名前はスカッドにあるのか。それともサンチェスがシティの10番に成り代わるのか。シーズン前哨戦ともいえる、7月を迎えて正式に移籍市場が再開し、クローズシーズンの戦いも熱を帯びてきている。

(取材・文:Kozo Matsuzawa / 松澤浩三【イングランド】)

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三